一緒に考えませんか?
サッパカマのこと、地域文化とビジネスのこと。
今回、違和感がぬぐい切れない出来事があり、会津の地域文化を愛する方はもちろん、地域文化ビジネスやデザインに関わる皆さんにもぜひ一緒に考えて欲しいと思って投稿します。
(なかなか長文です。)
もし、サッパカマを作っている個人の作家さんや、個人的に愛用している方をご存知でしたら、ぜひ伝えて頂きたいです。
<はじめに>
(故意に特定企業を批判したいわけではないため、該当企業名は控えさせて頂きます。特に現場で働く方々にはなんの非もございません。こんな事を書いて申し訳ない気持ちです。しかし、きちんと自分の考えを言わないといけない時もあるのだと今回は思い、書かせて頂きます。)
<サッパカマに関する商標登録の問題について>
会津の伝統農作業着「サッパカマ」について、岩手県の事業者が出したローマ字表記「SAPPAKAMA(サッパカマ)」での商標申請が出されていることがわかりました。
審査が通った場合、ローマ字だけでなく類似の権利としてカタカナ平仮名も含めて、これまで会津で当たり前にサッパカマに関わってきた人たちが、その名称を商品に使えなくなるかもしれない状況です。
(後述の通り、あくまで申請は自社ブランドの権利を守るためとのことで、敵対的な意図ではなく、審査が通った場合も他地域の事業者に使用の制限はしないとのこと。しかし、申請を取りやめることはしないとのこと。)
<何が問題か>
大事なことなのでしっかり書きますが、申請事業者に他地域での商標使用の制限を強要する意思はないというのは、何度も聞いています。
あくまで海外企業や敵対的な第三者に商標を取ることで自社ブランドの権利が失われないようにという意図で進めているとのこと。
もちろんビジネスとして間違っていないやり方だと思います。
(ですが、同様の理由で私たちは困っているわけでもあります。)
今回、問題を難しくしているのが、ブランド名が「サッパカマ」をそのままローマ字にした「SAPPAKAMA(サッパカマ)」であることです。
読みはそのままであり、商標登録されると元々の名称の片仮名平仮名のサッパカマにまで権利が及びます。
つまり、ブランド名(ローマ字)で申請して、元ネタの地域文化の名称も独占することになる申請です。
さすがに審査通らないだろうとは思いますが、何かの間違いで通ってしまったら恐ろしいこと極まりない申請内容です。
(改めて、申請に悪意はないとのことですので、結果的にこうなってしまっているだけなのだと思います。)
おそらく通らないだろうという見解ですが、サッパカマは全国的な認知度が高いわけではないのが怖いとこところです。
何かの間違いで通ってしまった場合には、元々作っていた各事業者も、昔から個人で作って販売していたような方も、権利を持った企業の配慮の元なんとか作り続けられるような状態になります。
権利を行使しないなら、申請をしなければとも個人的には思いますが、そうはお考えではないようです。
という事で、私たちは念には念を入れて、今できる対策をすることにしました。
ブランディングの際に、サッパカマの事を調べたら会津のことも出てくるであろうし、また、付けてしまった名前を守りたいのはわかりますが、申請することコンセプトの元ネタの地域文化の自由を奪うような形になる前に、誰か違和感を感じる方は周りにいなかったのだろうかと残念に思います。
何年か進めてきた自社ブランドの権利を守りたいという気持ちがありながら、元ネタの地域で何百年と続いてきたものが気づいたら使えない?という状況になることに違和感を覚えなかったのでしょうか?
(ちなみに会津でのサッパカマの歴史は書物に記載のある最も古いもので約200年です。)
申請会社の社長の方には、2017年に岩手県の事業者組合の視察で、会津に来て頂いているご縁で面識があります。
その際に、弊社にもお越し頂き、会津木綿と、展示されているサッパカマ(写真は当時のもの)などもご覧いただいています。
視察に来て会津にもサッパカマ文化があるという事をご存じではあったので、サッパカマ商品化の際や、せめて商標申請の際には連絡頂けたらもう少し理解ができたかもしれません。
(もう善意で視察受け入れするのはやめます。)
会津にサッパカマありと知っているのですから、せめて商標申請する際には、地域で影響のある可能性はありませんか?と一報頂きたかったというのが正直な感想でした。
今回、商標申請を見つけたのは、なんとなく嫌な予感がして調べたからなんです。
サッパカマの名称を使って、を売り出しているのは知っていたのですが、さすがにそこまではしないよな〜と検索したら5月末に公開になった申請中のSAPPAKAMA(サッパカマ)がありました。
特許庁に、通った場合の影響を確認して、サッパカマもさっぱかまもダメになるとのことで、なんじゃそりゃと。
偶然気づいたから良いものの、誰にも気づかれずに商標取ろうという意図なのか?と正直最初は疑りました。
しかし、これはおおよそ私の誤解であったようで安心しました。
というのも、直接確認した際に、社長もSAPPAKAMA商標申請について把握していなかったのです。
社長の指示ではなく、担当スタッフが勝手に進めていたということだったので、先に書いた商標とる前に相談もらえれば、、、と社長に思っていた残念な気持ちは僕の思い違いでした。
視察でご紹介した手前、それで会津のみんなに迷惑をかけては申し訳ない、、という責任も勝手に感じていましたが、会社は同じでもSAPPAKAMAは社長とは別の動きのようでしたので、そこは関係ない様でした。
もちろん私たちは、本などの資料やいろんな人のお話を聞いてサッパカマは会津に特に多く残る地域特有の文化と認識しています。
もちろん完全に会津だけというわけではない。
今日もお世話になっているサッパカマも研究されている民俗学の先生に、サッパカマについて改めて教えてもらいました。
お話によると、会津以外にも新潟や西の方にも少しあったらしい。しかし会津以北にはサッパカマはなく、山袴や股引だったとのこと。ただ詳しいことはその地域ごとの研究者に聞くのが良いとのことで、岩手県なら岩手県の民俗に詳しい方にもお話を伺ってみたいです。
(岩手の民俗はまた、素敵なものがたくさんありそうですね。本当に好きなので、一度行っていろいろ見てみたい。)
また、私のバイブルとも言うべき、会津坂下町史(山口弥一郎監修 )にも「会津特有の野良ばかま」と紹介されている。
(祖父が会津の文化を愛していて、地域の本をたくさん遺してくれました。感謝。)
しかし、申請した社長によると、事前調査では、サッパカマは岩手県一関にもあり、会津以外の場所の各地にもあるもので、東北の野良着として打ち出しているとのことでした。
(研究ではなく、あくまでビジネスなので、それぞれの会社が証拠をそれぞれ持っていれば、いろんな打ち出しがあって良いと個人的には思います。)
もし、東北中にサッパカマそうだとしたら、会津だけでなく一関や他の地域でサッパカマに関わっている方たちも含めて、関わっている人たちは気持ちよく受け入れてくれるのでしょうか。
以上の状況から、下記のような問題意識を持ち、対応にのぞみました。
地域文化を元にした自社ブランドの権利を守るために、元ネタの地域文化の名称利用まで影響が出てしまうような商標申請はいかがなものか?
もちろんビジネス的に取れるものは取っておくという姿勢は正しいと思います。しかし、文化を大切にしようする気持ちがある会社が、地域文化が根付いた地域の人たちが気づかない間にそれを進めるというのどうなのでしょうか?
現に地域文化の現地で、商標にならないように対応をせざるを得ない状況になっています。
<具体的な対応>
6月14日(月)会津の地域文化である「サッパカマ」の文化的健全性を守るため、K社の商標登録申請「SAPPAKAMA(サッパカマ)」に抗議の連絡をすると共に、特許庁に商標に該当しないものに当たる情報提供を行いました。
<想い>
貴社が拠点とする岩手県にも、特有の文化があるかと思います。同じように、会津や他の東北の地域にも、それぞれの地域文化があります。
貴社のビジネスを守るために、その文化の健全さが失われるような方法を取ることは正しいのでしょうか。
そこには実際に、サッパカマを愛し続けてきた地域文化があり、現代も企業から個人に至るまで関わり続けている人がいます。先人たちが、汗を流してそれを作り、また相当な調査により歴史的資料も残されてきました。
ご存知の通り、「SAPPAKAMA(サッパカマ)」が登録された場合には、「サッパカマ」も「さっぱかま」も類似の権利の対象になってしまいます。
貴社の「SAPPAKAMA(サッパカマ)」での商標登録申請には、貴社と同じように他の地域でも長い歴史をかけて育まれてきた文化があることへの配慮が欠けているのではないでしょうか。
もちろん、お話を伺って、権利を独占したいわけではないことは存じています。ただ、それでもこれまで他の地域で続いてきた健全な文化の状態ではなくなると思います。
それぞれの地域で、他の地域にも敬意を払いながら、それぞれの地域文化を発展させていくことは、違う方法でも可能だったのではないでしょうか。
改めて共に東北各地で、それぞれの地域にも敬意を払いながら、それぞれの地域文化を発展させていく。
そういったことが一緒にできればと考えています。
地域文化を愛する一人として
また、地域文化に関わるビジネスさせて頂いている一人として
<終わりに>
言い方は良くないかもしれませんが、私は「文化は先人たちの屍の山」だと思っています。文明もまた然りです。
私たちは先人たちが汗水血肉を使い発展させてきた文化を、勝手ながら使わせて頂いて生きています。地域文化ビジネスは特にそうです。
だからこそ、その文化の、その言葉の背景にあるもの、人を想像しながらビジネスを”させて頂く”ことが大事なのだと思います。
今日も会津の幼稚園跡の工場では、スタッフが油まみれになりながら古い古い部品を磨き、近くの駄菓子屋さんのおばあちゃんに昔の暮らしの話を聞き、民俗学の先生にわからないことを教えてもらい、本当に少しずつですが、一歩ずつ事業を進めています。
今回の申請会社の現場でも、汗水かいて染色をしている方がいることでしょう。
自分の目の前にいる自社の社員と同じように、汗水かきながら地域文化を仕事にしている人たちが他の地域にもいます。
ビジネスなので、他社を出し抜くようなことも当然のことだと思います。しかし、地域文化を出し抜く(ような構図に意図に関わらず結果的になっている)のは違うのではないでしょうか。
しかも、今回はブランド名の商標で、元の地域文化の名称もみな含んでしまう、文化の親殺しのような奇妙な構図になっているのが、より違和感を感じています。
(意図していないの承知しています。)
もちろんこれは、自分自身の肝にも銘じてではありますが、この件にかかわらず地域文化とデザイン、ブランディングなどに関わる人には、“文化に食わせてもらっている”という意識を持って欲しい。
←長文ですが、大切な事だと思うので全文引用しました。葉羽
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