今回は、現在、全国公開されているイギリス映画「オールド・オーク」(ケン・ローチ監督)を紹介しましょう。この映画は、社会問題・国際問題をあつかっています。社会問題に関心があって映画も好きな人にお薦めです。この映画を鑑賞する際、シリア(注)難民がどうして起きたのか、現在のシリア情勢はどうなっているかを事前に知ると深い理解ができます。ネットなどでシリア問題を調べてみてください。
高齢の主人公は、小さな街で細々とパブを長年営んでいます。一人息子にも無視され、妻からも離縁され、一人で生活しています。この小さな街は、かつては活気ある炭鉱町として栄えていましたが、今では閉鉱になり、高齢の貧しい人たちがこっそりと静かに暮らしています。そこへシリア難民たちがやってきます。
主人公のように難民を気毒におもい、受け入れようとする人たちもいますが、多くの貧しい人たちは、「余計者がきた」「国に帰れ」「迷惑な人たちだ」と難民をいじめ、ヘイトをまき散らします。そんな中で、主人公はカメラマン志望の難民ヤラに出会います。
イギリスは、大ざっぱにいうと階級社会で、貴族階級と労働者階級に分かれます。ケン・ローチ(1936年~)監督は一貫して労働者階級の人間模様をリアルに描いており、この映画もドキュメンタリー映画ではないかと思われるほど、生きいきと民衆が描かれています。私は、日本で公開されたケン・ローチ作品をほとんど観ていますが、なかでもこの映画は最も優れた作品ではないかとおもいます。監督は今年90歳を迎えます。この年齢で、このように優れた作品を監督するなんて、「すごい!」としか言いようがありません。
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(注)シリア・アラブ共和国:トルコ・レバノン・イスラエルなどに囲まれた人口約2000万人の中東の国。パレスチナ問題などの陰に隠れて、日本ではほとんど報道されていませんが長期にわたり内戦が続いて膨大な難民を出しています。中東の不安定はイラン・イスラエル問題だけではないのです。シリアの宗教は、主にイスラムスンナ派。

←90歳の監督作品ですか。僕らも負けてられませんね。 葉羽
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