【花語り…第1話 牡丹】
私が東京で学生生活を始めて間もない頃、慣れない暮らしを心配してのことであろう、実家の母が よく宅急便を送ってくれたものだった。 中身は 自宅付近のヨモギを摘んで搗き込んだ大きな蓬餅だったり、粽だったり温泉卵だったり、様々だった。
大方は食べ物だったが、ある時意外なものが送られて来たことがあった。 それは、一輪の大きな牡丹の花だった。 段ボール箱にぎっしり詰められた送り物の一番上に、薄紙に包まれた紫紅色の芳しい牡丹の花が乗せられていたのである!
いわゆる牡丹色の、フリルのような花弁が幾重にも重なった見事な花…。箱を開けた瞬間にいっぱいに広がった甘くかぐわしい香りとその美しさに 私は心を打たれた。
(それよりも、そんな粋なことをする母に感動したのかもしれないが…)
実家の庭の真ん中に植えられた、母の自慢の牡丹。見事に咲いたその花を、本当は娘と一緒にリビングのガラス越しに眺めたかったのかもしれない。
先週あたりから、フェイスブックのつくば牡丹園の公式ページにも「今朝は○○株開花しました」と、毎日 美しい写真と共に投稿があって、そわそわウズウズしている。
『花王』の別名を持つほどの風格と気品を備えた 香り高く美しい花。 母の想い出と共に、この時期私を酔わせる花なのです。

←ええ話や。うっうっ・・。 葉羽
|