こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
青春を体感。
これは細田守監督による2006年のアニメ映画『時をかける少女』のキャッチコピー。
本来であれば今日は「新・僕たちのラーメン道」の掲載日。なんでっ!?
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時をかける少女
(C)「時をかける少女」製作委員会2006 |
だって、先週採り上げた『ショウタイムセブン』がグダグダの内容だったので、あまりにも悔しいじゃないですか?
そう考えて、Amaプラを見まくった結果、この『時かけ』ともう一本(こちらは来期)、やたら感涙した作品に巡り合ったのです。
青春の切ないラブストーリー・・やっぱり、いいなぁこういうの。心震えました。
さて、その内容は?

待ってられない
未来がある。
映画の冒頭、街中の野球練習場でキャッチボールをしている三人の高校二年生、紺野真琴と津田功介、春に転校してきた間宮千昭。
ボールを投げようとした真琴は、「あれ?」という顔で周囲を見回す。
「ねえ、今、何か聞こえなかった?」
「何もきこえねぇよ、早く投げろ!」
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時をかける少女
(C)「時をかける少女」製作委員会2006
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この後のあらすじと概要は以下の通り。
◆『時をかける少女』のあらすじと概要(映画.comによる)
過去にもテレビドラマや映画で映像化されてきた筒井康隆の名作小説を、初めてアニメ化。ひょんなことから過去へ飛べる「タイムリープ」の力を手にした女子高生・真琴が、過去を何度もやり直すうちに、人生のかけがえのない時間の尊さに気づく姿を描く青春SFドラマ。
高校2年生の紺野真琴は、学校の理科実験室に落ちていたクルミをうっかり割ってしまったことをきっかけに、時間を飛び越えて過去に戻る「タイムリープ」の力を手に入れる。その力を使って、男友達の間宮千昭や津田功介とカラオケを好きなだけ歌ったり、野球で好プレイを連発したりと、何気ない日常を思う存分満喫する真琴。何かあっても時を戻り、何度でもリセットできる。そんな楽しい毎日が続くはずだったが……。

監督は「デジモンアドベンチャー」や「ONE PIECE」の劇場版などを手がけ、本作以降「サマーウォーズ」「バケモノの子」「未来のミライ」などで日本を代表するアニメーション監督となる細田守。キャラクターデザインは「新世紀エヴァンゲリオン」の貞本義行、アニメーション制作はマッドハウス。主人公・真琴の声を仲里依紗が務め、真琴の叔母・芳山和子役で原沙知絵が声優初挑戦した。
2006年の公開時はわずか6館での上映ながら口コミで評判が広まり、8カ月を超えるロングランを記録。2021年には、細田監督の制作会社「スタジオ地図」設立10周年を記念するプロジェクトの一環として、体感型上映システム「4DX」で再上映された。
2006年製作/98分/日本
配給:スタジオ地図、ユナイテッド・シネマ
劇場公開日:2021年4月2日
※その他の公開日:2006年7月15日(日本初公開) |
この『時をかける少女』(2006年アニメ版)を観ようと思ったきっかけは、先般公開された細田守監督の新作アニメ『果てしなきスカーレット』が「爆死」したというニュースを見たからです。
『果てしなきスカーレット』
観客から酷評された理由として挙げられていたのが「脚本」のまずさ。
前作の『竜とそばかすの姫』も細田守監督による脚本でしたが、終盤の主人公の行動が「ご都合主義」とされ賛否両論がありました。(僕自身はそれほど悪くない作品と思った。)
逆に誰もが「一番面白い」と評するのが2009年の『サマーウォーズ』、そしてこの『時をかける少女』。
『サマーウォーズ』
そして、この初期二作に共通するのが「脚本が細田氏自身ではなかった」こと。(あらららら・・)
『サマーウォーズ』は大好きな作品で何度も観なおしていますが、細田監督の「時かけ」は未見だったので、是非、その内容を確認したいと思った次第。
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時をかける少女
(C)「時をかける少女」製作委員会2006
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それにしてもこの筒井康隆原作の「時かけ」は、過去9回にもわたって映像化されている作品なんですね。
僕は同時代で原作小説を読んで「筒井康隆らしくない」正統派少年少女向けのストーリーに大いにハマったものでした。
未来人との「決して成就されることのない恋」・・そんな話、見たことも聞いたこともないテーマでしたから。
筒井康隆は、制作されるたび何度も原作料が入るので『銭をかせぐ少女』と呼んでいるとか(笑)
今回、細田監督のアニメ『時をかける少女』で驚いたのは、本来の「時かけ少女」芳山和子が「新たな主人公の叔母」として登場していたこと。(ええ~!)
初代「時かけ少女」の叔母
つまり、「時かけ」のリメイクではなく「正当な続編」だったのです。(※原作者の筒井も本作品を「本当の意味での二代目」とコメント。)
ただし、最初のタイムリープが理科実験室で起きることや主人公が密かな思いを寄せる同級生が「未来人」であることなど、原作をオマージュしています。
告白されるシーン
そして、細田版「時かけ」を見た感想ですが、実によくできた作品と感じました。
原作とは異なるシチュエーションの中で、友人らに起こる「事件」を未然に防ごうと頑張る主人公のひたむきさ、決して成就することがないと分かっているのにあきらめ切れない恋心。
仲間との関係に一喜一憂する純情な高校生の瑞々しい感性、それらが胸を締め付けるのです。
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時をかける少女
(C)「時をかける少女」製作委員会2006
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これらを裏打ちするのは、やはり「脚本の力」。「言葉の力」。
脚本は岩手県出身の脚本家奥寺佐渡子氏の手によるものですが、まさにこの時代の高校生ならこんなふうに感じ、そして行動するであろうリアリティに富んだものでした。
元祖「時かけ少女」芳山和子がタイムリープについて語る場面も、語り過ぎない絶妙なバランス。
また、主人公の高校生紺野真琴の「声」を担当したのが当時16歳の仲里依紗ですが、これまた素晴らしいはまり役。
脚本の意図を的確に掴んだアテレコ・・と言うより、天真爛漫で勢いのあるセリフが主人公を生き生きとさせています。
やはり「作ったモノ」でなく「同年代の感性」が良かったのでしょう。
本音が言えない二人
そして、映画終盤の手に汗握るサスペンス。
タイムリープしたせいで仲の良い同級生が真琴の身代わりで列車事故に巻き込まれてしまうことになり、既に真琴はタイムリープの「既定回数」を使い切って絶体絶命の危機・・さあどうなる!
この後のどんでん返しはお見事。そしてラストはとても切ない・・けれど「希望」に溢れている。ジンとします。(うっうっ・・)
友達が絶体絶命の危機に
結末までは書きませんが、青春時代の甘酸っぱい初恋と失恋の痛み、懐かしく思い出させてくれる名画でした。
ということは、やはり細田氏は「脚本」を誰かに任せた方が良かったのかな?
う~むぅ・・。
/// end of the “cinemaアラカルト502「時をかける少女」”///

(追伸)
岸波
大ヒットした『サマーウォーズ』も今回紹介した『時をかける少女』で辣腕を発揮した奥寺佐渡子の脚本ですが、原作は細田氏自身。
もう一つ大好きな『おおかみこどもの雨と雪』も、やはり原作は細田氏で、脚本は奥寺佐渡子との共著になっています。
そして、賛否両論・酷評となった近作の『竜とそばかすの姫』、『果てしなきスカーレット』が細田氏自身の脚本。
この流れを見ると、やはり、細田氏が原作を書くとしても脚本は奥寺佐渡子氏と組んだ方が「成功方程式」になりそうな気がします。
特に奥寺氏は「少女の感性」を的確に言葉にする才能がありますから。
あと、もう一つアドバイスするなら「哲学的なテーマを入れすぎると話が重くなる」・「観る者の感動やカタルシスを大切に」ということでしょうか。
ということで、次回は「もう一本の感動作」についてレビューします。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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時をかける少女
(C)「時をかける少女」製作委員会2006
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