こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
この悲しみに言葉はいらない!
これは松本清張原作、野村芳太郎監督『鬼畜』(1978年)のキャッチコピー。
今週の当番は、カリスマ彰氏です。
貧困ゆえの虐待や子殺しをテーマとする「胸糞」ストーリー。
そして、鬼畜のような本妻の指示に抗いながらも、最後には自ら継子殺しに手を染める気弱な夫を演じたのが、まさかの緒形拳。
カリスマ彰が、この陰惨な物語に涙してしまったのは何故か?

◆『鬼畜』(1978年 野村芳太郎監督 1時間50分)
弟は、きっと星になったんだ
妹は、きっとお金持ちに拾われたんだ
でも僕だけは、父ちゃんから離れない
カリスマ彰 不覚にも涙が出てしまった。TV録画して見た松本清張原作の映画「鬼畜」(1978年 野村芳太郎監督 1時間50分)である。
継子の虐待、継子殺しはもちろん実子虐待、実子殺しはもう現代では「またか」レベルになっているが、これは1978年あたりの時代設定で日本がまだ経済成長中の話なのだが、生活苦からこういう事態になったケースを酷薄・過酷に描いている。
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緒方拳は本当に上手いが、岩下志麻、小川真由美も美人過ぎるのが難点だが上手い。
川越の零細印刷所のオッカアに岩下志麻みたいな美人がいるわけはないと思うが、映画だから仕方ない。

よく考えるとこの印刷所は活版印刷で、オフセットへの移行ができていないのだ。いずれ廃業だろう。それがこの窮乏の背景にある。
どうでもいいことだが小川真由美が3人の子供と住む東武東上線沿いの川越から電車で小一時間ほどの男衾(おぶすま)は難読漢字の上位に入る。男衾という地名が妙なリアリティを与えている。
あらすじは以下の通り(Wikipediaによる)。
◆『鬼畜』(1978年)のあらすじ(Wikipediaによる)
舞台は埼玉県・川越市。印刷屋を営む宗吉(緒形拳)は、妻・お梅(岩下志麻)に隠れ、料理屋の女中・菊代(小川真由美)を妾として囲い、7年の間に3人の子供を産ませていた。しかし宗吉の印刷屋は火事で設備の大半を失い、再建しようにも得意先の大半を大手の印刷会社に奪われ、融資の都合もつかず火の車。菊代に月々の生活費も渡せなくなっていた。生活に窮し業を煮やした菊代は3人の子を連れ、印刷屋に乗り込んできた。

愛人と隠し子の存在を知ったお梅は激怒し、子供たちの前で菊代と宗吉を攻め立てる。そして翌朝、菊代は印刷屋に子供たちを置き去りにして姿を消した。父として、なんとか子供たちを家に置いてやりたいと思う宗吉だったが、はなから「他人様の子供」など育てる気の無いお梅は、子供たちに鬼のようにつらく当たるのだった。まさに虐待そのものだったが、気弱な宗吉は子供たちに「おばちゃんの傍に行ったらだめだぞ」といい含めるのみだった。
ついに末子である次男・庄二が、お梅による育児放棄の末、衰弱死する。お梅は残りの子供も処分することを宗吉にせまる.....。 |
主役は、緒形拳でも岩下志麻でもない長男の利一(岩瀬浩規)だろう。セリフが棒読みだとか言われてるが、この目線がポイントなのだ。現在はホテルマンをしているという。

日本映画はたまにしか見ないが、これはちょっとビックリした傑作だ。
ひとつだけ不満がある。女性警官役で最後の方に登場する大竹しのぶだ。あきらかに目立ち過ぎ。もっと田舎の女性警官役にふさわしい地味な女優がいただろうに。

そう言えば、松本清張(1909~1992)原作で野村芳太郎監督(1919~2005)の「砂の器」も傑作だったな。
この2作品を含め野村の出世作になった「張り込み」〈1958年)から清張の8作品を野村芳太郎は映画化している。機会があれば全作見てみたい。
/// end of the “cinemaアラカルト503「野村芳太郎監督映画「鬼畜」に涙してしまう」”///

(追伸)
岸波
なるほど・・キャッチコピー(二つ目)だけでもストーリーが想像できてグッとくるなぁ。父と子の物語ということから「砂の器」を彷彿させる。
現代ではむしろこういった事件が頻発している気がする。虐待された少女が「生まれて来てごめんなさい」と泣いて謝りながら殺された事件など、本当に心が痛む。
だけどこういうタイプの「胸糞」映画は「救い」が無いんだよね。(たとえ子供が奇跡的に生き残ったにせよ)
もう、こういう映画はいいよ。人生、残り少ないんだし。人生の晩年は美しい事だけ覚えていればいいと思う。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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