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「Blue Island」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2024.5.18】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 空飛ぶ映像トリップ!

 これは、Amazonプライムで再視聴した木梨憲武・佐藤健ダブル主演のSF映画『いぬやしき』のキャッチコピー。

 cinemaアラカルトでは初めての二回目レビューです。

いぬやしき

(C)2018「いぬやしき」製作委員会 (C)奥浩哉/講談社

 本当は、同じAmazonプライムで先日視聴した『ゾディアック』に感動し、その準備を進めていたのですが、今朝、たまたま「36時間以内にprime配信終了」のメッセージが付いた『いぬやしき』を見つけ、観てしまいました。

 すると、木梨憲武をはじめキャストの熱演に見入ってしまい、思うところもあったので、急遽、書き残すことにいたしました。

 ということで、『いぬやしき』再び。

 

 ジジィ vs 高校生

 今回は二度目のレビューなので、あらすじはprime videoから引用します。

 なお、より詳しい内容は一回目の記事『#206 いぬやしき』に記載しています。

◆『いぬやしき』Amazon prime videoの解説から引用

 定年を間近に迎える冴えないサラリーマン・犬屋敷壱郎(木梨憲武)は会社や家族から疎外された日々を送っていたが。ある日突然、医者から末期ガンによる余命宣告を受け、深い虚無感に襲われる。

 その晩、突如墜落事故に巻き込まれ機械の体に生まれ変わった彼は、人間を遥かに超越する力を手に入れることに。一方、同じ事故に遭遇した高校生・獅子神皓(佐藤健)は、手に入れた力を己の思うがままに行使し始めていた。

 自分の意思に背く人々をただただ傷つけていく獅子神と、獅子神によって傷つけられた人々を救い続ける犬屋敷。人間の本質は善なのか、それとも悪なのか…?強大な力を手に入れた2人が、いま、それぞれの想いで動き出す―。

 今回、改めて鑑賞して、映画としての完成度の高さに驚いた。prime videoの視聴者評価は3.9/5、かなりの高評価である。

 当初公開時、ビッグ・ヒットとはならなかったが、それは原作である奥浩哉のコミック『いぬやしき』の進行がが途中冗長になり、名作『GANTZ』ほどの評価を得られなかったところにも原因があるのではないか。

いぬやしき

(C)2018「いぬやしき」製作委員会 (C)奥浩哉/講談社

 しかし、映画版『いぬやしき』では不要なエピソードが省かれ、起承転結が分かりやすくなったこと、木梨憲武を初めとするキャストの熱演により一気にストーリーに惹き込まれる。

 アメリカでのコミックを原作とした映画は、押しなべて内容が子供・青年向けに留まっている感があるが、日本のコミックは最初から大人をターゲットとしており、その映画化作品も内容的に質の高いものが多いと思う。

  犬屋敷壱郎(木梨憲武)

 『いぬやしき』で言えば、主人公のサラリーマン・犬屋敷壱郎(木梨憲武)のキャラクター設定がそうだ。彼は決して無敵のヒーローでも何でもない。

 妻や娘、息子からは軽んじられ、会社では出世もできず"給料泥棒"と揶揄されている。そんな彼が検診で末期癌が発見され、余命三か月の宣告を家族に伝えようと電話するが誰も電話にさえ出てくれない。徹底的に孤独な初老の男なのである。

  獅子神皓(佐藤健)

 一方、”悪の主人公”となる高校生・獅子神皓(佐藤健)だが、彼も犬屋敷壱郎(木梨憲武)同様、異星人の技術によって機械の身体に転生した人物だ。

 自分の能力に目覚め、最初はイジメを受け引きこもりとなっていた幼馴染・安堂直行(本郷奏太)を学校復帰のため不良グループを成敗したりしていたが、やがて、能力で殺人を犯すところまで行ってしまう。

  皓と直行(本郷奏太)

 ところが、全国に指名手配を受けると、母子家庭である皓の母親(斉藤由貴)がマスコミや悪意あるSNS炎上によって追いつめられ、自殺してしまう。

 加えて、彼を匿った同級生しおん(二階堂ふみ)も、機動隊の急襲に巻き込まれて殺害され、絶望した獅子神皓(佐藤健)は無差別テロで社会に復讐を始めるのだ。

いぬやしき

(C)2018「いぬやしき」製作委員会 (C)奥浩哉/講談社

 ここの獅子神がダークサイドに落ちる経緯が、ネットに拡散する悪意ある投稿が引用され非常に説得力がある。(もちろん、復讐を肯定してはならないが。)

 この無責任な人間たちの醜さを見て、思わず永井豪の『デビルマン』を想起してしまった。

 「デビルマン」

 『デビルマン』は人間を守るために悪魔軍団と闘っていたが、その人間たちが次第に利己的な本性を明らかにし、敵意の無い悪魔まで残虐な方法で殺したり、挙句は人間同士で殺し合いを始める。・・デビルマンは人間に絶望するのだ。

 『いぬやしき』や『デビルマン』で描かれる”醜い人間”の姿は、まさに今ネット、あるいは視聴率欲しさのマスコミによって行われている社会的リンチと重なって見える。

 日頃目にしている厭な"現実"を突き付けられたようで、胸くそが悪くなる思いだ。

  原作での獅子神皓

 このように、映画版『いぬやしき』ではストーリーの背景に現代社会の病巣など重いテーマがしっかり描かれていると感じた。

 何にも増して、主演・木梨憲武の迫真の演技は、これを自身の代表作と呼ぶに相応しいものであると思う。

 

/// end of the “cinemaアラカルト416「いぬやしき/二度目のレビュー」”///

 

(追伸)

岸波

 同じ映画を二度レビューしたのは初めてだと思います。

 それというのも、先日の『ゴジラ×コング 新たなる帝国』のガッカリ感から日本のSF映画の質の高さを再認識したからでないかと。

 『ゴジラ×コング』

 アメリカ映画は、アクション、ミステリ、ロマンスから人間ドラマに至るまで卓越した作品を輩出していますが、ことSF分野になると名作と呼べるものは少なく、ことに近年はアベンジャーズを初め”お子様向けエンターテインメント”に舵を切っているのが残念至極。

 また、今回再鑑賞して、エンディング・クレジットの途中で破壊されたはずの獅子神皓(佐藤健)が人間に戻り、親友の直行(本郷奏太)の部屋を訪れるシーンが挿入されていることを再認識しました。

前の記事では書いていたので、忘れていただけでしょうが。

 もちろんそんなシーンは原作にはなく、それが直行の夢なのか現実なのか定かではありませんが、余韻を残す良いエンディングではなかったか、と思います。

 

 では、次回こそ『ゾディアック』で・・・See you again !

ゾディアック

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト417” coming soon!

 

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