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「Blue Island」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2018.7.31】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 空飛ぶ映像トリップ!

 前回に引き続き、2018年上半期の鑑賞作品について簡単にご紹介するシリーズ。

 今回のご紹介作品は「いぬやしき」。

いぬやしき

(C)2018「いぬやしき」製作委員会 (C)奥浩哉/講談社

 奥浩哉による人気SFコミックを木梨憲武と佐藤健、本郷奏多らで実写化した「いぬやしき」。

 では早速参りましょう。

 

◆『いぬやしき』
  福島イオンシネマ:4月22日(日)鑑賞

 いかにも変なタイトルですが、「いぬやしき」とは主人公である初老の男性(木梨憲武)の苗字なのです。

 この人物、お金も無ければ地位も無い、家族からも軽んじられているけれど、まじめなだけが取り柄と言う、どこにでもいる(笑)定年間近の爺さん。

 とにかく劇画の主人公を張るようなタイプのキャラでは全然ない。(きっぱり)

いぬやしき

(C)2018「いぬやしき」製作委員会 (C)奥浩哉/講談社

 定年間近にようやく念願の一戸建てを手に入れたのに、立地が豪邸の日陰ということもあり、家族からは感謝の言葉もない。

 しかも、健康診断の要精検で精密検査を受けてみたら、これが末期のガン。余命いくばくも無かったという悲しい運命。

 そのことを家族に打ち明けようとしたら、誰もそんなオヤジのカミングアウトなんかに興味が無いということで、電話もスルーされる始末。

 とにかく、全く報われない人生を送っているのですが、これもまた良くある話(大笑)

 いぬやしき

 そんなヒーローらしからぬ主人公が黒澤明の「生きる」の如く、公園のブランコに揺られていると、突如、上空から眩い光が降りてくる。

 よせばいいのに、フラフラとその方向へ歩みだすと、これが何と宇宙人の円盤で、その不時着に巻き込まれてアララ一巻の終わり。

 いやいや、これで終わってしまってはお話が始まらない。

 ふと目覚めると、圧死したはずの自分の身体は何ともなく元通り。「夢でも見たのか」と家に帰れば、何故か自分の肉体が機械に置き換わっていることに愕然。

 いぬやしき(木梨憲武)

 実は、不時着に人間を巻き込んでしまい、このままではマズイと考えた宇宙人たちが、自分たちのAI戦闘ユニットに記憶を移し替え、外見も元通りにして素知らぬ顔で去って行ったという次第。

 とろがっ!!

 巻き込まれた人間はもう一人いた、というのがストーリーのミソ。それが高校生の獅子神皓(佐藤健)で、自分の超常能力に気づいた彼は、愉快犯よろしく破壊活動をしまくる怪物になってしまう。

 我らがいぬやしきは(木梨憲武)と言えば、同等な能力を活用し、破壊神と化した獅子神皓(佐藤健)を止めるべく敢然と立ち向かう。

 しかし…というストーリーです。

いぬやしき

(C)2018「いぬやしき」製作委員会 (C)奥浩哉/講談社

 原作の奥浩哉は『GANTZ』の作者でもあり、非常に魅力的なストーリー導入を得意とする人物なのですが、『GANTZ』の時もそうだったように、話の終盤で収拾がつかなくなり”グダグダになる”という事でも有名な作家。

 僕はこの原作コミックを全て読んで知っていますので、完全に話が迷走する終盤のことも知っていたワケですが、佐藤健ファンのケイコに付き合って観に行くことになった次第。でも、それなりに楽しめました。

 いぬやしき

 やはり、主演のいぬやしきを演じる木梨憲武のキャラがハマりすぎで、話のテンポも良い。

 やがて、息子の罪に押しつぶされるように母親(斉藤由貴)が自殺。

 獅子神を守り彼を止めようとしている同級生のしおん(二階堂ふみ)とそのおばあちゃんが、特殊部隊の攻撃に巻き込まれてハチの巣にされてからの獅子神皓(佐藤健)の狂気は大迫力。

 獅子神皓(佐藤健)

 奥浩哉の描くストーリーには、自分だけ安全な場所から無責任に扇動してくる今時のネット民が登場してくることが多いのですが、そうした大衆の悪意が並行して描かれ、荒唐無稽な話にリアル感を与えています。

 獅子神の真実を知るもう一人の同級生安堂直行(本郷奏多)の好演を含め、キャスティングされた俳優たちが、しっかりといい仕事をしているところが、この映画をただのB級作品にしなかった功績でしょう。

 また、原作でグダグダになった終盤の展開をバッサリ省略し、いぬやしきと獅子神の一騎打ちに絞り切った点も好感。

いぬやしき

(C)2018「いぬやしき」製作委員会 (C)奥浩哉/講談社

 アメリカ映画にありがちな正義と悪の対決、正義が勝ちましたメデタシメデタシというおバカストーリーではなく、「悪」の側の哀しみやラストシーンに「救い」を加えた日本人ならではの感性が感じられます。

 興行的にはおそらく成功とは言えない結果でしょうが、俳優たちの熱演には見るべきところがあった佳作だと思います。

 うん、木梨の人間性いいよ。凄く。

 

/// end of the “cinemaアラカルト206「いぬやしき”///

 

(追伸)

岸波

 「いぬやしき」の木梨憲武さんの演技を見ますと、単にストーリーの中だけのキャラクターを越えて俳優本人の温かい人間性までにじみ出ているところに感服。

 こういういい味出してるベテランの俳優さんって、日本にはたくさん居ますよね。

 一方、若手俳優はどうかというと、こちらも綺羅星の如く新しい才能が次々と開花して嬉しい限り。

 しかし・・・ 彼ら彼女らの中で、将来「名優」と呼ばれるようになる人はどのくらい居るでしょうか。

 気になっているのは、そこからさらに10年以上キャリアを積んで映画やTVのシリーズものの主演を務めているクラス。

 小栗旬くんのようにコミカルな役も含めて積極的に幅を広げている俳優さん、今回の佐藤健くんのように敢えて「悪役」の凄みにチャレンジしている俳優さんも大勢いるのですが、一部には「どうなんだコイツは」と感じる人たちも何人か居るのです。(とりあえず男優で3人くらいは顔が浮かぶかなぁ…)

 そういう人たちの共通点は、ひたすらカッコいいヒーローしか演じていない事。しかも大抵、無口で無表情な気難しい主人公であること。

 当然コレじゃ、演技力を深めていくなんて出来はしません。

 そういう事になっているのは、本人より事務所の考え方が大きな影響力を持っているからかもしれませんが。(そういえば3人のうち2人はジャニーズ系か…)

 なので、俳優を預かる人たちには、本人の将来の事も本気で考え、しかるべき道筋を作って行って欲しいと、切に願うものです。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(※次回紹介!)

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト207” coming soon!

 

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