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「いつまでも心の中に」(Remair)
by 岸波(葉羽)【配信2022.4.30】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 いつもならココに映画のキャッチコピーが入るのですが、今回取り上げるアッバス・キアロスタミ監督の『ジグザグ三部作』はいずれも”キャッチコピー無し”の珍しい映画。

 いやいやいや、そんなことよりも先にお断りしなくてはならない事がありました。それはっ!!?

オリーブの林をぬけて

(C)1994 Ciby 2000 - Abbas Kiarostami

 今回は僕の当番でしたが、見事に”オチ”ました。(すみません:汗)

 実はこの週末、シロヒゲヒロシ君とGINさんご夫妻が相次いで福島にやって来たので、出ずっぱりだったのであります。

 ということで、カリスマ彰に助けを求めたところ、送られてきたのがこの『ジグザグ三部作』という訳です。

 元々のレビュータイトルは以下。

『キアロスタミ監督のイラン映画「ジグザグ三部作」には心が洗われる』

 では、カリスマ彰、二週連続でお願いします。

岸波さま こんなのしかないなあ。キアロスタミ監督のイラン映画「ジグザグ三部作」には心が洗われる。

 

 イランの映画監督アッバス・キアロスタミ(1940〜2016)の「ジグザグ3部作」(いずれの作品もイランのコケールという村が舞台なので「コケール・トリロジー」とも呼ばれる)という連作映画がある。

「友だちのうちはどこ?」(1987年 1時間23分)、 「そして人生はつづく」(1992年 1時間35分)、 「オリーブの林をぬけて」(1994年 1時間43分)からなる。

友だちのうちはどこ?

(C)1987 KANOON

◆第1作映画『友だちのうちはどこ?』

 ノートを間違って持って帰りその友だちの家を探すストーリー 第1作は昨年2月に見ていたが、最近第2作、第3作が立て続けにTV放映(「ザ・シネマ」)されたので録画して見た。

 なんというのか、ありきたりに言えば心が洗われるような映画である。

◆『友だちのうちはどこ?』allcinema ONLINEの解説から引用

 授業が終わり、教室で隣の席の子が駆け出して転んだ。その手当をしてやった(優しさ溢れるいいシーンだ)主人公の少年は、自分のとよく似た彼のノートも一緒に持って帰ってきてしまう。その日も遅刻して、おまけに宿題を忘れて、先生にキツく叱られたばかりの隣の席の子に同情し、少年は自分とはまるで反対の方角に住む彼にノートを届けに、うるさい母の目を盗んで出かけるのだが、住所もはっきりとは知らず、当てにしていた手がかりや人物にはぐらかされた挙句、彼が父親と一緒に自分の移住区までやってきたと知り、引き返したりもするが、結局は会えずじまい。さて、翌日の教室で、どのような解決が待ち受けるか……。

 これだけの話なのに、神業にも近いキアロスタミの演出は映画をみる喜びにどっぷり浸らせてくれる。象徴的に設けられた“ジグザグ道”を少年が行き来するごとに、極めて新しい映画体験を観客は認めるだろう。一見して感じる素朴さは実に巧緻に仕組まれたものなのだ。その“ジグザグ道三部作”の始まりであり到達点の作品。


◆第2作映画『そして人生はつづく』

 イラン大地震(1990年6月、死者最大推定5万人)のあと「友だちのうちはどこ?」で主演した子どもを探す映画監督のストーリーだ。

そして人生はつづく

(C)1991 KANOON

 第2作と第3作は繋がっている。

 映画制作がストーリーの骨格になっているが、どこまでが映画のストーリーで、どこからが現実なのかはいつの間にか分からなくなってしまう。そしてどうでもよくなってくる。

◆『そして人生はつづく』allcinema ONLINEの解説から引用

「友だちのうちはどこ?」に始まり、「オリーブの林をぬけて」で完結するアッバス・キアロスタミの“ジグザグ三部作”の二作目。

 イラン北部を襲った大地震により崩壊した村を舞台に、「友だちのうちはどこ?」の出演者兄弟を、キアロスタミ監督とその息子が捜すという設定の中、村の人々の姿をドキュメンタリー・タッチで映し出していく。本作で新婚となった二人の男女を軸に「オリーブの林をぬけて」を構成するなど、巧妙に絡み合う三部作のディテール。瓦礫に埋もれた村で生きる人々の小さなドラマの連続は人生の起点ともいうべきノスタルジーに包まれ、観る者の心に温かな何かを与えてくれる。


第3作映画『オリーブの林をぬけて』

 そして、第3作では映画史に残るラストシーンに導かれるのだ。↓

オリーブの林をぬけて

(C)1994 Ciby 2000 - Abbas Kiarostami

 古くは、1950年代のインド映画のサタジット・レイや1980年代の中国映画など発展途上国の映画には、迷路にはまった先進国の映画にはない人間の素晴らしさを再認識させる映画がたまに現れるのだが、この3部作にはそんな「映画の根元的な力」を感じることができるのだ。

 また第2作のラストにはヴィヴァルディの「2台の狩猟ホルンのための協奏曲」、第3作のラストにはチマローザのオーボエ協奏曲が使われているのだが、クラシック音楽好きの私にはいずれも素晴らしい選曲に思われた。

 2016年に76歳で没したキアロスタミ監督は、この三部作で有名になったが、その代表作は「桜桃の味」(1997)、「風に吹くまま」(1999年)、「トスカーナの贋作」(2010年)ということになるらしい。

 是非機会があれば見てみたいものだ。

◆『オリーブの林をぬけて』allcinema ONLINEの解説から引用

「友だちのうちはどこ?」「そして人生はつづく」と続いた“ジグザグ道三部作”最終篇。「そして人生はつづく」の中に、大地震の翌日に式を挙げたという新婚夫婦の挿話があったが、それがきっかけとなり生まれた作品だ。実際の二人は夫役の青年が妻役の娘に求婚しても断られた関係。前作撮影中にこの事実を知った監督キアロスタミは、その僅か4分に満たないシーンから、一途で感動的な青春ラブ・ストーリーを練り上げた。大地震に見舞われ、瓦礫と化したイラン北部の村。映画の撮影を手伝っていた地元の青年ホセインは、この夫役に抜擢され、文盲だという理由でフラれた現実と役柄を混同して、更なるアタックに励む。出番が終われば妻を演じる初恋の少女タヘレは通う学校のある町に去ってしまい、もう逢えない。彼女を乗せたトラックが往く。ホセインはそれを追ってひた走る。オリーブの林を抜け、草原のジグザグ道を通って…。

 映画の監督キアロスタミの自由な語り口が堪能できる、全ての物語が微妙な入れ子構造になっているこの連作だが、とりわけ虚実ないまぜの本作は、映画に生きる願望を観る者に誘い込む稀有の作品として、同じ年に公開されたカネフスキーの「動くな、死ね、甦れ!」と共に永遠に記憶されるべき傑作である。

 

/// end of the “cinemaアラカルト302「ジグザグ三部作」”///

 

(追伸)

岸波

 キアロスタミ監督の映画では、真魚さんが『桜桃の味』(Ta'm e guilass 1997年)を取り上げている。

※真魚詩集#02『「桜桃の味」より忘れじの台詞』>>

 そちらのポエム・レビューでもとても感動したことを覚えている。

 ここをお読みになった方は、是非上記リンクの方もご覧になってください。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !

そして人生はつづく

(C)1991 KANOON

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト303” coming soon!

 

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