こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
全宇宙から命を狙われる
ひとりの青年に、
未来は託されたーーー。
10月15日(金)から全国公開された新作『DUNE デューン 砂の惑星』を18日の月曜日に観てまいりました。
メガホンを取ったのは『ブレードランナー 2049』(2017年)のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。
はっきり言って"凄い衝撃"を受けました。それは文字通りの意味なのですが、その理由は後ほどに。
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DUNE デューン 砂の惑星
(C)2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
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原作はアメリカのSF作家フランク・ハーバートの全六作品から構成される壮大な宇宙叙事詩「デューン・シリーズ」の第一作『デューン 砂の惑星』(1965年)。
もちろん、cinemaアラカルトその269『デューン/砂の惑星』(1984年)で紹介したデビッド・リンチ監督の作品と同じもの。
そして、今回の新作が公開されるや否や世界中から絶賛の嵐。いつも辛口な映画.com編集長が「圧倒的な今年のナンバーワン作品」とため息をもらしたとされるほど、全てにおいて完璧。
さて、何がどう変わり、どの辺りが素晴らしいのか、さっそく本編の内容です。
映画の冒頭で、その舞台が西暦10,900年の宇宙であることが告げられ、早速、宇宙皇帝シャッダム4世からレト・アトレイデス公爵に惑星アラキスを統治するよう命令が下ります。
設定とあらすじについて振り返りますと、この時代、人類は銀河全域に版図を広げ、宇宙皇帝の下で一つの惑星を一つの貴族家が統治する社会が形成されており、日本の江戸時代のように『領地替え』を命じられれば従うほかなし。
アトレイデス家が移封される惑星アラキスは、全宇宙でただ一つ"不老長寿の香料メランジ"を産出する稀有な存在。しかし、別名「砂の惑星」呼ばれるほど荒れた砂漠に覆われ、凶暴な巨大砂虫(サンドワーム)が跋扈する危険地帯。
サンド・ワーム
しかも、これまではアトレイデス家とライバル関係にあるハルコネン家がアラキスを統治しており、何故、宝の山であるアラキスの統治権を手放すのか謎。
実はこの命令は、宇宙で最も精強な軍を擁して人望も厚いレト・アトレイデスを抹殺するために宇宙皇帝とハルコネン家が仕組んだ罠。
宇宙皇帝らの大軍が移住間もないアトレイデス家に夜襲をかけ、当主レトは死亡。ホウホウの体で逃げ出した嫡子ポール・アトレイデスとその母でレトの妾であった修道女レディ・ジェシカの二人は、やがて砂漠の民フレメンの庇護を受け、復讐を誓うという流れになります。
細かい部分は、その269『デューン/砂の惑星』のレビューをご覧ください。
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DUNE デューン 砂の惑星
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で、冒頭から驚いたのは、その高精細な映像とBGMの巨大音量。
重低音を駆使した不思議なメロディの環境音楽・・あるいは”効果音”と呼んだ方がいいだろうか・・が爆音のような音量で空間を満たし、僕らの座っている座席(IMAXではない)がビリビリ共鳴するのです。
これが全編続くので、映画が終わってから劇場スタッフを捕まえて「このスクリーンは特別な仕様になっているのか?」と質したくらい。
スタッフいわく「いいえ、作品が指定する仕様で音を流すので、どのスクリーンで見ても同じようになります」とのこと。
それはまさしく、別の時代の別の惑星で生まれた音楽。実際、効果音を担当した二人の映画音楽の巨匠マーク・マンジーニとテオ・グリーンは、砂漠の中で終日を過ごし、風と砂の織りなす”音”を研究しました。
そして、通常は水中で用いるマイク「ハイドロフォン」を砂漠に深く埋め、砂の表面を叩くことで”砂漠の声”を捉えたと言う。
マーク・マンジーニ
そのマンジーニの言葉。「ハイドロフォンで全く新しい音を捉えることができた。それは殆どの人が気づかない、地下からの唸るような音だった。大量の砂そのものが、一年のうちのある時期、適切な湿度と温度下で美しいクジラの鳴き声のような音を出すんだ。」
彼らはデューンの音楽のために全く新しい楽器も創造し、そして用いた。こうして、誰も聞いたことのない異次元の音楽が出来上がった。
ある時は歯車の軋みのような(実際、そうしたのかもしれない)、またある時は砂漠の民イスラムの祈りのような・・。
映画を構成する映像と音響・・「DUNE」がその音響に革新をもたらしたのは言うまでもありません。
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DUNE デューン 砂の惑星
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一方、映像の高精細さは、飛び散る砂の粒子一粒ずつも逃がさないIMAX認証のデジタルカメラを使用して撮影されているとのこと。
こうした音響と映像の魔術により、観る者の映画への没入感は凄く、その世界に取り込まれたような気分にさせられるのです。
いつ大音響が来て、椅子がドーンと動くのか分からないので、緊張しっぱなしということもあった気がする(笑)
普通の映画館でこうなのですから、IMAXシアターで観ていたらとんでもないことになりそうです。
次に”造形”の話。
「DUNE」の世界が形成される人類1万年の歴史の中で、一度、人類が滅びかけた時期があります。
それは、AIやロボットとの戦争。自我を持った機械が人類に対抗する話は『ターミネーター』などでも御馴染みのストーリーですが、原作者フランク・ハーバートは既に1965年の時点でそうした未来を予測していたわけです。
最終的に人類は機械文明に打ち克つのですが、その教訓からコンピュータを禁止し人工知能に頼らない文明へ向かいます。
なので「DUNE」に登場するガジェットはどれも重厚長大。その中で記憶に残ったのが”オーニソプター”と名付けられたトンボ型の航空機。
このオーニソプターは、何と6枚の羽根を羽ばたかせて空を飛ぶのです。こんな飛行法は誰も思い付かなかった。
オーニソプター
でも、実際にトンボは4枚の羽根を1秒間に20~30回も羽ばたかせて自由に空を飛び、あるいは空中に静止することができるのですから、物理的に不可能ではないはず。
そんな多くの”見たこともない”ローテク機械が数多く登場しています。
一方、「DUNE」には、精神世界を極めようとする秘密結社が登場します。それがポールの母レディ・ジェシカも所属している女子修道会べネ・ゲセリット。
それはAIに対抗するために生まれた精神肉体訓練組織から発祥しました。
彼女らは人類の新たな能力を開花させる香料メランジの力を借りながら、人間の精神を操る力を会得しています。
修道会べネ・ゲセリット
そして、修道会のトップである教母は、世界を一変させる究極の超能力者「クイサッツ・ハデラック」を誕生させることを目的にしています。
それがどのような能力なのかは語られていませんが、主人公ポール・アトレイデスに萌芽した「未来を予知する能力」あるいは「サンドワームを操る能力」・・もしかするとその両方かもしれません。
実際、主人公ポール・アトレイデスは、教母が「男子には絶対不可能」とした”能力を覚醒させるための試練”に打ち克ち、これらの能力を会得して帝国軍に叛旗を翻し、宇宙を二分する大戦争となるのですが、それはまた後の話。
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DUNE デューン 砂の惑星
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さて、今回の「DUNE」新作に登場する俳優たちにも触れなければなりますまい。
まずは、主人公ポール・アトレイデスを演じたティモシー・シャラメ。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はこう語っています。
「ティモシー・シャラメを選ぶ経緯はとてもシンプルだった。と言うより考慮の余地はなく、ティモシー以外は考えていなかった。代案も用意していなかった。」
ティモシー・シャラメ
それほどまでに惚れこまれたティモシー・シャラメは1995年ニューヨーク州出身の26歳。(出演時は22~23歳)
2017年の『君の名前で僕を呼んで』で第90回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたほか、インディペンデント・スピリット賞最優秀主演男優賞やニューヨーク映画批評家協会主演男優賞など数々の賞を総なめにした演技派で、プリンス・オブ・ハリウッドと称された注目株。
まだ若いけれども目力が強く、これから全宇宙を率いる宗教的指導者に成長していくポールの役柄にピッタリ。
レベッカ・ファーガソン
ポールの母、べネ・ゲセリットの修道女レディ・ジェシカ役は旧作のフランチェスカ・アニスも中々の好演でしたが、今回は『ミッション・インポッシブル』シリーズでMI6のイルサ・ファウストを演じているレベッカ・ファーガソン。
得意のマーシャル・アーツの能力が「DUNE」でも活かされています。
オスカー・アイザック
ポールの父レト・アトレイデスは『スター・ウォーズ』シリーズ新三部作でポー・ダメロンを演じたグアテマラ出身のオスカー・アイザック。
ハルコネン家の策謀に嵌って全裸でテーブルに晒されるのですが、その全身の筋肉に刮目。「脱ぐと凄いんです」と言うのはこういう人を指すのでしょう・・あ、もちろん演技もね(笑)
そして外せないのが、レト・アトレイデス家の剣士でポールの兄貴分であるダンカン・アイダホを演じたジェイソン・モモア。
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ダンカン・アイダホ(ジェイソン・モモア)
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彼は『ゲーム・オブ・スローンズ』でドラスク族の王を演じ、その後主演した『アクアマン』で不動の人気を獲得した男優ですが、今回の「DUNE」第一作の中では存在感が際立っています。
切り込み隊長として、帝国の暗殺集団に単身立ち向かう演技は、まさに真・三國無双の呂布か。とにかくカッコいい。
ジェイソン・モモア
すわ・・『スター・ウォーズ』のハン・ソロの役回りになるのかと思いきや、ポールとジェシカを守って凄絶な討ち死にをする。
ココは「えええ~!」ですよ。使い方が勿体なさ過ぎる!!
まだまだ述べるべき俳優が居ますが、ともかくも出演者はキラ星の如く。よくもこんなメンバーを集めたものだと嘆息しきりです。
デビッド・リンチ監督の旧作では、駆け足でストーリーを追うだけでキャラの掘り下げが全く不足していましたが、今回は数々のエピソードを交えて、登場人物の心象風景まで描いている。
いやいや、こんな風に進行していたら、155分の長尺とはいえ本当に最後まで描けるのか・・と心配していたら衝撃が!!
ポールとレディ・ジェシカが砂漠の民フレメンと出会い、行動を共にするところで強制終了! ええええ~!!!?
いや、コレって、『ロード・オブ・ザ・リング』の第一作でラストがブツンと切れた以来の衝撃でした。
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砂漠の民フレメン
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そう言えば、最初のタイトルバックに「Part One」とあったような?
僕は、その意味が、てっきり『DUNE』原作シリーズの第一巻を(旧作と同じように)描いた作品だと思い込んでいたのです。
いやぁ・・そう来たか。むべなるかな。
むしろ映画に没入させ、155分になるのに気づかせなかった方が凄いかも。
海外のメディアでも「SFだけではなく映画としての傑作」「一世一代の映画」と激賞。
「1968年に『2001年宇宙の旅』を観た当時の人々も、おそらくこう感じたはずだ」~と、この上ない賞賛が送られている本作品・・見ておかないと、きっと人生損しますよ!
/// end of the “cinemaアラカルト275「DUNE デューン 砂の惑星」”///
(追伸)
岸波
「ブレードランナー 2049」でスタイリッシュな映像を撮ったドゥニ・ビルヌーブ監督、今回の「DUNE」ではさらに磨きがかかり、今年のアカデミー賞を総なめにするのではないかとの憶測が広がっています。
正直、ここまで世界の評価がうなぎ上りになるとは思っていなかった。今回の大成功を踏まえて、早速「Part Two」の制作も公表されました。
「将来、間違いなく映画史に残るであろう記念碑的な第一作を絶対に見逃すな」との声も聞かれます。
かつて無かった映像と音、そして、この上ない芸達者たちの素晴らしい競演・・開始5分で、その世界に心捉われてしまう事、間違いありません。
とにかくぶっ飛びますよ・・普通の椅子がブルブル振るえるんですから(笑)
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(追加)2021.10.31
「ミステリ&シネマ・パラダイス」のPie造さんが、この「DUNE」について書いていたのを思い出したので、彼の感想も追加しておきます。
Pie造 ミステリ&シネマ・パラダイス#966
『DUNE/デューン 砂の惑星』(Dune. 別題: Dune: Part One)
2021年 アメリカ映画
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ
SF映画。
フランクハーバート のSF大河小説『デューン 』の映画化作品。
映像と音の使いかたが絶妙だな。
時代はSFだが話は中世。
その厳格さと暗さがあっても
全くだれることなく見せ切る力は凄い。
堪能しました👍
この進み具合で終わるのか?って思ったが、
なんと二部構成だったのか😅
それ、正解だな👍
未完成の伝説にならないように… .
リンチ版も好きなんだよね。
レベッカファーガソンの母役が良かった。
二部作の第1弾。 |
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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