こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
密林の果てに
地獄を見た---。
これは2013年にデジタル・リマスター版で再公開されたウィリアム・フリードキン監督の『恐怖の報酬』のキャッチコピー。
1977年の初公開時には北米以外で95分にカットして公開され、興行的に失敗したものをフリードキン監督が自ら再編集して再評価された作品です。
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恐怖の報酬(完全版)
(C)MCMLXXVII by FILM PROPERTIES INTERNATIONAL N.V. All rights reserved.
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今週のご紹介はフリードキン監督に関連する二本。そのブログ・タイトルは以下の通り。
1 フリードキン監督が最高傑作と自負する映画「恐怖の報酬(完全版)」はやっぱり凄い!
2 フリードキンが大いに語るドキュメンタリー映画「フリードキン・アンカット」
ではカリスマ彰、よろしくお願いします。
岸波さま 次回のシネマアラカルト原稿です。「恐怖の報酬(完全版)」とその監督の「フリードキン・アンカット」の2本です。
1 「恐怖の報酬(完全版)」(2013年 ウィリアム・フリードキン監督 2時間1分)
絶望と緊迫、
魂の121分、
日本初公開
TV(ムービープラス)録画していた映画「恐怖の報酬」を見た。
フリードキンが「フリードキン・アンカット」(2018年)で、「私のキャリアにおける最高傑作だ」と話していたのがこの映画。
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恐怖の報酬(完全版)
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いうまでもなく1953年アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の「恐怖の報酬」のリメイクだが、かなり作り直している。
さらに1977年公開時は1時間35分にカットされていた。
これに怒ったフリードキン監督が2013年に自ら4Kデジタルリマスター編集してディレクターズカットのオリジナル完全版として公開した。
日本では2018年公開。今回TV放映されたのもこの完全版だ。
とにかく、すぐ飽きてしまう私が珍しく一気に見てしまうほど、緊迫感あるシーンの連続だ。
芸術性など薬にしたくもないフリードキンのプロフェッショナル映画監督としてのエンタテイナー魂が横溢している。
結果として凄まじい人間ドラマとしての厚みも獲得している。
この主人公には、候補に挙がっていたスティーブ・マックイーンがまさにピッタリだと思うが、ロイ・シャイダーも悪くはない。
上の写真は、こちらを向いている三人のうち左から、パリからここ南米まで逃げてきた破綻投資家、組織に追われアメリカから逃げてきたアイリッシュ・マフィア(ロイ・シャイダー)、エルサレムから逃げて来たテロリスト。
交通規制なしでスタントマンにあの「フレンチ・コネクション」(1971年)の未だに語り継がれる世紀のカーチェイスをやらせ、「エクソシスト」(1973年)では、リンダ・ブレアの首を360度回転させたCGなしのあのフリードキンの映画魂が炸裂しているのである。これは一見の価値ありだ。
なお英語のタイトルは、「SORCERER(ソーサラー)」(魔術師)である。マイルス・デイヴィスの1967年録音のアルバム・タイトルが由来という(下掲ジャケット写真)。
アルバムにはこんな曲名の曲は入っていなくて、メンバーのハービー・ハンコック(ピアノ)が、マイルスのことを呼んでいたニックネームだ。
フリードキン監督もスタッフからそう呼ばれていたのか?
変なタイトルのおかげでだいぶ損をしていると思うが。
プログレッシブ・ロックのタンジェリン・ドリームの音楽が素晴らしく、映画を盛り上げているのも特筆される。
◆allcinema ONLINEの解説から引用
「フレンチ・コネクション」「エクソシスト」のウィリアム・フリードキン監督が、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督による1953年の傑作フランス映画をハリウッドでリメイクした1977年製作のサスペンス超大作。
当時としては破格の製作費と2年を超える製作期間を費やしてようやく完成した野心作ながら、全米での公開は興行的な失敗に終わり、日本を含む北米以外ではフリードキン監督に無断でカットされた約30分短い92分の【短縮版】で公開されてしまう。以後、91年にオリジナル版がビデオで発売されたものの、長らく幻の作品と言われてきた。
しかし2013年にはフリードキン監督の尽力によって複雑な権利関係がクリアされ、晴れて121分の【オリジナル完全版】が同年のヴェネチア国際映画祭でお披露目された。その後、各地で上映されると再評価の機運が一気に高まっていった。そして日本でも2018年11月に、ついに【オリジナル完全版】の劇場公開が実現した。 |
2 「フリードキン・アンカット」(2018年 フランチェスコ・ジッペル監督 1時間46分)
TV録画しておいたドキュメンタリー映画「フリードキン・アンカット」を興味深く視聴。
ウィリアム・フリードキン(1935.8.29〜)監督作品と言えば、「エクソシスト」(1973年)と「フレンチコネクション」(1971年)の2作品が飛び抜けて名高いが、そのほかにもいろいろと問題作を監督している。
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またこの映画で初めて知ったが、「ヴォツェック」(指揮メータ)、「アイーダ」(指揮ノセダ)などのオペラ演出も手掛けている。
インタビューがメインで、そこに盟友のコッポラやカウフマン、ウォルター・ヒル、タランティーノなどがコメントしている。また過去の映画の映像が流される。
映画中のフリードキンの語録で気になったものを以下に記しておく。
この人は高い知性もあるし度胸も胆力もある実力者だが、かなりのハッタリ屋でもあるようだ。敵も多そうだ。
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1.歴史上興味がある人物は2人だけ。キリストとヒトラーだ。
2.映画監督はアーティストじゃない。アーティストと言えるのはフェリーニ、たぶんそうなのはアントニオーニ、フリッツ・ラング、アンリ・ジョルジュ・クルーゾー、バスター・キートン、チャップリンかな。私はプロフェッショナルに徹して努力し、物語を作り続けることを続けてきただけだ。芸術家なんてちょっとでも思ったら、それはキャリアの終わりを意味するよ。
3.撮影は原則一回だけ。完璧を求めて何回も撮影するなんて馬鹿げている。映画に完璧を求めることがそもそも間違っている。
4.映画祭のコンペティションというのは愚かもののやることだな。映画は、陸上競技やテニスの試合じゃないんだよ。
5.キャスティングは重要だ。有名俳優がいいとは限らない。その俳優のバックグラウンドと役柄のシンクロが大切だ。
6.私は日本の浮世絵のコレクターだが、幕末から明治にかけて活躍した月岡芳年が最高の浮世絵師だと思っていて、そのコレクションをかなり集めている。
7.私のキャリアにおける最高傑作と考える映画は「恐怖の報酬」である。ただし私が4Kデジタル再編集して2013年のベネチア映画祭で公開したものだ。
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最後に夫人のシェリー・ランシング(パラマウントスタジオの女性初のCEO)をベタ褒めしていたのは余計じゃないかな(笑)。
しかし、美術コレクションや豪邸はフリードキンの稼ぎでは到底無理。
この妻あってこそだと思うのだが、どうだろう(笑)。
◆映画専門チャンネル"ムービープラス"の解説から引用
『フレンチ・コネクション』(71)でアカデミー賞5冠、『エクソシスト』(73)で全世界にオカルト・ブームを起こしたウィリアム・フリードキン。
本人のインタビューや監督作の出演俳優、盟友フランシス・フォード・コッポラらのコメントから、映画監督として、人間としての彼を浮き彫りにする。 |
/// end of the “cinemaアラカルト276「フリードキン監督が最高傑作と自負する映画「恐怖の報酬(完全版)」はやっぱり凄い!」”///
(追伸)
岸波
この完全版はミステリ&シネマ・パラダイスのPie造さんも激賞していたね。
まあ、彼は「オリジナルももう一度見たい」と言っていたけれど。
そう言えばデビッド・リンチの方の『デューン/砂の惑星』も、監督の意思に反して制作側がショート・カットして大失敗したっけ。
編集が入って良くなるケースもあるし、そうでない時もあるから難しい。
「岸波通信」でも、いつもそのことで悩んでいるよ(笑)
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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恐怖の報酬(完全版)
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