「windblue」 by MIDIBOX


スザンナ・マルッキ指揮東京交響楽団(コンサートマスター:影山昌太郎)のベートーヴェン交響曲「田園」とストラヴィンスキーの「春の祭典」をサントリーホールで聞いた(10月11日19時)。

 翌12日(ミューザ川崎14時)、翌々13日(上田市文化会館15時)には同プログラムで演奏会を行うスケジュールだ。

 アマチュア・オーケストラを聞き続けているので、プロのオーケストラは8月8日に沼尻竜典指揮神奈川フィル(トゥランガリラ交響曲)以来だ。当たり前だが、やはりプロのオーケストラは上手い(笑)。

 このスザンナ・マルッキは、いま世界のオーケストラ界を席巻しているフィンランド人指揮者の一人。1969年3月13日生まれの56歳。

 チェロ奏者としてもエーテボリ響の首席を務めたほどだが指揮者に転向。パヌラやセーゲルスタムなどに師事した後、アンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督(2006~2013)や現代作曲家のオペラの初演などをスカラ座、METなどで手掛けている。現代音楽に強い指揮者という定評だ。

 一方フィンランドのナンバーワンオケのヘルシンキ・フィルの首席指揮者(2016~2023)を務め(現在名誉指揮者)、さらにロサンゼルス・フィルの首席客演指揮者(2017~2022)も同時期に務めた。この他ベルリン・フィルなどの名門オーケストラの指揮者として招聘されている。

 ドゥダメルに決まったが、ニューヨーク・フィルの首席指揮者の有力候補でもあったという。56歳の大物指揮者である。これからビッグポスト就任もありそうだ。

 

 日本では、2013年のラ・フォル・ジュルネにアンサンブル・アンテルコンタンタンポランと来日している。さらにおよそ四半世紀前には東響も指揮しているという。

 とにかくこれほどの大物が私の調べでは10年以上も来日していないのはちょっと不思議。何かあったのだろうか。東響のプログラムにも前回の共演のことなどが全く触れられていないが、ちょっと不自然だ。

  それはともかく最初の「田園」からその音楽性の素晴らしさは歴然。古楽器的なノン・ヴィブラート奏法がベースだが、それにこだわりはなく、必要ならば十分に歌う。

 第1楽章、第2楽章は淡々とした流れの中に、東響の弦、管のコンビネーションが美しい。第3楽章から音楽は動き出し、第4楽章の「嵐」のド迫力にはちょっとのけぞるほど。そして第5楽章の「感謝と祈り」も感動的。現代のベートーヴェンの交響曲の規範のような正攻法な演奏。

 

 休憩後は「春の祭典」。冒頭のファゴットにはキューがなかったような気がする。金管に2回ばかりミスがあったが東京の演奏能力の高さには今回も感心。低音がどっしりした落ち着いた演奏で感服。

 ただ今年聞いた沖澤のどか指揮都響のスリリングな「ハルサイ」のような「危うさ」がなく、ちょっともの足りなかった。ないものねだりだが。それに打楽器の銅鑼はあんなにおとなしかったっけ。ギロももうちょっと激しく演奏してもよかったかな。

  しかし、なかなかの大物実力派指揮者の充実した演奏会を聞けたので大満足。来年7月17、18日にはヘルシンキ・フィルとの録音もありベルリン・フィルでも演奏したバルトーク「青ひげ公の城」を都響と演奏するという。毎年東京で聞きたい大物指揮者だ。

(2025.10.24「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽

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