2月14日(金)にトリフォニーホールで角田鋼亮指揮東京フィルのコンサートを聞いた。
都民芸術フェスティバルの一環でチケットは最高ランクでも4000円と通常コンサートの半分以下。小池百合子もたまにはいいことをする。
平日の14時開演なので高齢者(60歳以上)が入場者の70~80%。アンコールとオープニングで有名なスラブ舞曲2曲、チェロ協奏曲、交響曲第8番というドヴォルザーク祭りだ。
腰を抜かしそうになるくらい驚いたのが、コンサート前半のチェロ協奏曲だ。この曲、無性に聞きたくなることがある。
中学生の時にロストロポーヴィチのチェロ独奏&カラヤン指揮ベルリンフィルのLPを擦り切れるほど聞いたものだ。
もしかしたら、その時以来の衝撃と言ってもよいかもしれないのが、この日の鳥羽咲音(とばさくら)のチェロだ。
まず。第1楽章の第一音!素晴らしい音だ!1階23列目の私の席にもビンビン届く。楽器は1840年製のジャン=バティスト・ヴィヨーム。何とアンネ=ゾフィー・ムター財団からの貸与だ。
鳥羽咲音はムターとの共演も多いという。数々のコンクールでの優勝・入賞歴のある鳥羽咲音だが、ムターから認められているというのが大器の最大の証だと思う。

この美音とほぼ完璧なテクニック、歌心溢れる歌い回し、凄い集中力!。加えて凄い美貌、そして19歳という若さ!天は二物も三物も与えるのだ。第1楽章の早いパッセージがちょっと雑だっただけで、終楽章は完璧だった。
オーケストラの総奏で曲が終わると盛大なブラヴォーが飛んだ。私も思わず声が出てしまった(笑)。と同時にウルッときた。この曲を聞いたブラームスが「チェロでこんな協奏曲ができるんだ。知っていたなら私が書いたのに」と悔しがったエピソードを思い出した。
アンコールはやはりドヴォルザークの4つの歌曲(OP.82)から「私に構わないで」のチェロへの編曲。協奏曲の第2楽章に用いられている。
しかし、ヴァイオリンの世界ではヴィジュアル系テクニックほぼ完璧ヴァイオリニストが雨後の竹の子状態だが、チェロではそこまでではないにせよ、何人がが大注目されている。その中でも間違いなく鳥羽咲音は群を抜いていると思う。
2021年9月にはKAJIMOTOとマネジメント契約を結んでいる。鳥羽の母親はピアニストの鳥羽泰子だ。父親はヴァイオリニストということは分かっているがKAJIMOTOが緘口令を敷いているのか、調べても判明しない。
たぶんウイーン・フィル団長のダニエル・フロシャウアーだと思うのだが、なぜ隠すのだろうか?親の七光りだと思われるのが嫌なのか。
この日のオーケストラである角田鋼亮指揮東京フィルのことを書き忘れていた。鳥羽咲音と張り合おうとしたのか、協奏曲の時からオーケストラだけの部分では凄い爆音でのけぞるほど。
後半の交響曲第8番でも同様で、この美しい交響曲第8番の繊細な味わいを台無しにしていた。角田鋼亮は堅実でなかなか良い指揮者だと評価していたのでちょっと残念だった。