「windblue」 by MIDIBOX


南青山のコム デ ギャルソン社へ出向き、2025-26秋冬メンズコレクション展示会を取材した(2月14日)。

「コム デ ギャルソン オム プリュス2025-26秋冬」。(※右背景画像)⇒

 以下の2点も。

 

 

 今回の「コム デ ギャルソン オム プリュス 2025-26AW」をyoutubeで予習してきたが、川久保玲らしくないので驚いた。

 最近の過激なアート志向は後退し、アモルフな感覚がなくてウエアラブルで、言ってみれば造詣が整い過ぎているのだ。

 ミリタリーテイストのテーラードが主流だとしても、川久保玲の本質である怒り、反抗といった感情は影を潜めている。そんなことあるのかな?

 それを確認に展示会にやってきたのだが、たしかに展示で見ても、あえて言えば「激しさ」「強さ(インテンシティ)」は薄まっていた。おとなし過ぎるのだ。

 そう広報部の方に言ったら、「そんなことを言うのはあなただけ」と一笑に付された。しかし私も40年以上、川久保玲を見続けているので(笑)。

 80歳を超えて(1942年10月11日生まれ)、何か心境や環境に変化があったのではないか?と思っているのだが。杞憂であればよいのだが。

 今回の「コム デ ギャルソン オム プリュス」のテーマは"To Hell With War"。

 広報部によると、アーミーのシンボルを壊すことで”戦争なんてうんざりだ” というメッセージを込めたコレクションだという。

 

 私は「貴様ら、戦争と一緒に地獄へ行け!」と思っていた。「貴様ら」とは誰?戦争で大儲けしているディープステートの連中だろうと勝手に考えていたのだが、そうではないようだ。ミリタリースタイルの解体と再構築がテーマだったのだ。

 いずれにしても威勢のいいテーマではあるが、このある意味美しいコレクションは本当にミリタリースタイルを解体しているのだろうか?

 個人的には疑問だが、この難しい時期に堂々と「ミリタリースタイル」をパリで発表するという度胸は凄い!

 メンズじゃ過去に物議を醸しているのに、頭が下がる。それにしてもロシアのウクライナ侵攻から早3年である。

 youtubeでは著作権の関係で実際のショーとまるで全然違うインストゥルメンタルの曲が流れていたのだが、実際のショーではニーナ・シモンのアルバム"Wild is  the  Wind"からの曲が使われている。

 

 このCDはビブラート駆使しながらその中に強い意志を感じさせるニーナ・シモンの代表盤。まさか川久保玲が選んだのではないだろうが、素晴らしい選曲だ。

 女性のジャズ・ボーカルと言えば、エラ・フィッツジェラルドとサラ・ヴォーン2人が抜きん出て人気を分け合っているが、この2人はエンターテイナーであり、悪く言えば芸人である。彼女たちが人生や世界の深淵を歌うということはあまりない。

 しかし、このニーナ・シモンやビリー・ホリデーは社会に対する反抗や怨嗟がその歌唱の核心にある。ちょっと古びて湿っぽいビリー・ホリデーよりはグルーヴ感に溢れたニーナ・シモンのヴォーカルが今回のちょっと激しさの後退した整い過ぎた川久保玲の世界には合っていた。

  しかし、ビリー・ホリデーの悲惨で壮絶な44年の短い人生はよく知られているが、公民権運動家、市民運動家としての活動もしながら離婚、双極性障害、乳癌などに悩まされながら歌い続けたニーナ・シモンの70年の人生もまた闘いの連続だった。

 そんなことをいろいろ思いめぐらせた今回の「オム プリュス」のコレクションではあった。

(2025.2.21「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽

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