「windblue」 by MIDIBOX


本日(1月19日)14時からNHKホールでトゥガン・ソヒエフ指揮N響(コンサートマスター:郷古廉)のコンサートを聞いた。

 曲はショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」。昨夜に続いて同じプログラムの2日目だ。私は3年連続でソヒエフ指揮N響のコンサートを1月に聞いている。今回が私のソヒエフ評価試験の最終回になった。

 ウィーン・フィルとの日本での共演まで聞いているが、ソヒエフ(1977年10月21日生まれ47歳)の真価には未だに疑問符。母国ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、2022年にボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル管の要職を辞した人物。

 その後は常任指揮者のポストにはつかずに、ベルリン・フィルやウィーン・フィルなどに客演している実力者だが、私はソヒエフの真価がまだ掴めていない。

 いやあ、これが実に素晴らしい出来だった。N響が世界トップクラスのオーケストラであることを実感した。各楽器のトップ奏者はもちろん、第2奏者、第3奏者に至るまで、積極的な姿勢とテクニックの高さを見せつけた。

 こんなことは初めてだ。あまりソヒエフの「色」は出ていなくて、「あれ?指揮者は誰だっけ?」と思うことが何度かあったぐらい。ソヒエフって、そういう指揮者なのだろう。それはそれで見事なことだ。

 第1楽章の例の「侵略のテーマ」は普通なのだがクレッシェンドして、ピークはとんでもない爆音になった。フォルテの爆音はやはりロシア人指揮者らしく凄い。一方弱音の繊細で悲しみに満ちた表現も素晴らしい。最終楽章のフィナーレに持っていく転調も実に自然で見事としか言いようがなかった。

 

 この曲は、正直なところ、ベートーヴェンの「戦争交響曲(ウェリントンの勝利、あるいはヴィットリアの戦い)」みたいなものだと思うが、こうした見事な演奏だと、とんでもない感動をもたらす。

 かつて、ピエール・ブーレーズが「20世紀の名曲」(記憶が定かでないが確かベスト100)を選ぶという企画があって、そこにショスタコーヴィチの曲が全く選ばれなかった。それを記者から質問されたブーレーズは一言「下品だから」と答えた。

 確かに、この第7番も「下品」なのかもしれないが、見事な演奏だと凄じい感動をもたらすことを実感した。音響の悪さでは悪名高きNHKホールだが、本日の演奏は全く関係なかったのだから、これはお見事としか言いようがない。

 
「クラシックな毎日」のブログより引用(2日間公演の初日の公演後)

 コンサート前の予習では、バーンスタイン指揮シカゴ交響楽団のCDの名演に嘆息していた。しかし、やはり実演の凄まじいド迫力にはこのバーンスタイン&シカゴ響のCDも敵わなかった。ソヒエフに脱帽である。もうその真価に疑いは無くなった。

(2025.1.31「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽


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