昨日(11月26日火曜日14時)、新国立劇場でロッシーニ作曲のオペラ「ウィリアム・テル」を鑑賞した。
キャスト&スタッフは以下の通り。
◆「歌劇ウィリアム・テル」キャスト&スタッフ
ウィリアム・テル=ゲジム・ミシュケタ、アルノルド・メルクタール=ルネ・バルベラ、アルノルドの恋人である皇女マティルド=オルガ・ペレチャッコ、テルの同志ヴァルテル・フュルスト=須藤慎吾、アルノルドの父メルクタール=田中大揮、ジェミ(テルの息子)=安井陽子、スイスの民衆を弾圧する総督ジェスレル=妻屋秀和、ロドルフ(ジェスレルの腹心)=村上敏明、漁師リュオディ=山本康寛、テルに助けられる羊飼いルートルド=成田博之、テルの妻エドヴィージュ=齊藤純子、狩人=佐藤勝司、管弦楽=東京フィル、合唱=新国立劇場合唱団、指揮=大野和士、演出・美術・衣裳=ヤニス・コッコス |
4時間35分(2回の休憩込み)の長丁場だったが、全然長いと感じなかった。こう書くとワーグナー・ファンから叱られるかもしれないが、ワーグナーの5時間クラスの楽劇を鑑賞するのに比べると、全くシンドくないのである。
これは原作(シラー)&台本(ジュイ、ビス、マラ、クレミューの4人に加えてロッシーニ)が素晴らしく書けていること、そしてやはりオペラを知り抜いたロッシーニの音楽が理由だろう。
実は11月18日(月)のゲネプロも鑑賞しているのだが、2週続けて見ても飽きることがなかったのだから相当な傑作だと思う。
それに喜劇は別にして「正義は勝つ」的なハッピーエンドのオペラっていうのがあまりにも少ないので、溜飲が下がる爽快感があるのかもしれない。
この日は火曜日の14時開演なのだが、玄人好みの演目だというのにほぼ満員。平日のマチネだから高齢者が多いのは当然にしても、大野和士新国立劇場オペラ部門芸術監督が念願にしていた上演とはいえ、興行的にどうかなと思っていたが、盛況なのは「ウィリアム・テル」という看板のヒキなのか。
この日の上演はオーケストラ、合唱、歌手ともに非常に高い水準だったが、とくに大野和士指揮東京フィルは相変わらず最高の水準を維持しているし、合唱も同様だった。
ウィリアム・テルを得意役にして各地で歌っているアルバニア出身のミシュケタのテルがやはり素晴らしい。
第4幕の感動的フィナーレには、バックにウクライナと思える瓦礫のCG映像が突如浮かび上がって「侵略者に屈するな」のメッセージを感じた。よく見るとテルのミシュケタがウクライナのゼレンスキー大統領に似ているではないか(笑)。
ウィリアム・テル役のゲジム・ミシュケタ
(新国立劇場のホームページより)
さらに実質的な主役ともいうべきアルノルド役のバルベラが素晴らしい高音を聞かせてくれた。
ヒロインのマティルド役のオルガ・ペレチャッコは美人で演技も歌も上手くて存在感抜群だったが、この新国立劇場で「ルチア」の主役を聞いているが、こんなに声のサイズが小さかったか?不調だったのかな。
気になったのはテルの息子ジェミ役の安井陽子。クリクリした目とコロコロした丸みの体型にキャスケット帽をかぶって、ちょこまかと舞台を動き回っていた。笑顔を中心に表情もかなり豊か。喜劇的要素を盛りこむつもりだったのだろう。
予習として、私は3本ほどyoutubeで「ウィリアム・テル」を見たが、全てジェミはもっとシリアスに演出されていたので、ちょっと浮いているように感じた。