「windblue」 by MIDIBOX


昨夜(9月6日金曜日19時)東京オペラシティコンサートホールで高関健指揮東京シティフィルの演奏会を聞いた。

 曲目はブルックナー交響曲第8番ハ短調の第1稿ホークショー校訂版のただ1曲のみ。今年はアントン・ブルックナー(1824.9.24〜1896.10.11)の生誕200年の記念年にあたりやたら彼の交響曲が演奏されている。

 交響曲第8番は演奏時間は80〜90分ほどだが最高傑作だろう。席は1階24列目のほぼ中央。一応S席だ。60歳以上は25%割引で4500円だった。

 このホールはちょっと容積が足りず、ブルックナーやマーラーの交響曲をやると、1階S席でも音が飽和してしまって響かない。2階の最前列中央がベストなのだが、なかなか買えない。

 さて、よく考えたらブルックナーの交響曲第8番の第1稿はCDでも演奏会でも聞いたことがなかった。晩年の交響曲だし書き直した第2稿とそんなに大きな違いはないだろうとタカをくくっていたのだが、これが大間違いだった。

 特に第1楽章と第2楽章はまるで違う曲だった。同じ素材でこんなに違うものなのか。楽想が突如変化する極めてユニークな構成になっていた。

 演奏は、最近の東京シティフィルの充実を感じさせるものだった。さすがに第3、第4楽章は疲れからかホルンがヨタヨタしていたが、最後の音による音の大伽藍が見事に築かれたのだった。

 しかし、本音を言うと、第1稿ではなく聞き慣れた第2稿をこの東京シティフィルの充実した熱演で聞いてみたかった。これが、もう人生も黄昏に差し掛かりつつある初老人の偽らざる感想だ。

 演奏前の指揮者の高関健によるプレ・トークでは、第2稿については、「実はブルックナー本人はほとんど関わっていないという説もある」と話していた。

 第2稿への改訂を手伝った弟子のシャルク兄弟は改竄の大悪人だという定評が定着しつつあるが、第8番の第2稿については決してそんなことはなくて、シャルク兄弟は、ちょっととっつきずらい第1稿をなかなか聞きやすくしてくれたのだなと私などは初めて再評価してしまった。

 9月14、15日に首席指揮者ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団でこのブルックナー交響曲第8番がまたまた演奏される。行く気満々だったが、予告プログラムを見ると、なんと第1稿だった。残念!ですが行きません。

 このブルックナーの交響曲第8番は我が最愛の曲である。もう第1稿は聞かないことにしたが、第2稿は死ぬまであと何回聞けるだろうか。

(2024.9.13「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽

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