3月15日金曜日、上岡敏之指揮新日フィルのコンサートに出掛けた。本当は同じプログラムの土曜日のコンサートに行きたかったのだが、良席のチケットが取れそうになかったのでこちらにした。
このすみだトリフォニーホールも良席がないホールだ。なかなか音像のピントが結ばない。
それにどうも観客の質に問題がある。この日も左隣の席は空席だったが、その隣の客が頻繁に足を組み替えてうるさいこと夥しい。それに焼酎の匂いが漂ってきた。
前半はアンヌ・ケフェレックの独奏でベートーヴェンピアノ協奏曲第1番。76歳の彼女に完璧なテクニックの演奏を求めても仕方ないが、漂う「気品」に圧倒されてしまう。
そして実に「精神的」な演奏なのである。そこにはまさにベートーヴェンの音楽しかない。こういう抽象的な言い方しかできないが、寂しさに耐える心、美しさに憧れる心、躍動する心というのが伝わってくるのだ。
第2楽章の静謐など、音楽というのはここまで表現できるのだとじーんと来てしまう。
アンコールのヘンデルは技巧の制約がないだけさらにその境地を実感した。これはまさに音楽の化身そのもの。いやあ、凄いものを聞いた。
美人ピアニストとして鳴らしてた頃のアンヌ・ケフェレック
後半は、快速調のシューベルトの交響曲「ザ グレイト」。速いテンポの中に無限のニュアンスを浮かび上がらせるコンセプトの演奏。繰り返しはなし。
なるほどこれなら第3楽章が異形のスケルツォにはならない。ただしやるには勇気がいる。これがものの見事に決まった。
古楽器演奏をかなり取り入れたコンセプトではあるが、そればかりではない。聞き慣れた「ザ グレイト」が実に清新に聞こえる。
やはり上岡敏之である。一時に比べ体調も良くなっているように見える。
(※下はコンサート終了後のサイン会)↓