◆鍵盤の貴公子ポリーニはなんでこんなに酷い歳のとり方をしてしまったのだろうか?(2020-06-01)
NHK BSのプレミアムシアターで2019年9月27日のヘラクレス・ザール(ミュンヘン)におけるマウリツィオ・ポリーニ(1942年1月5日生まれ 78歳)のピアノ・リサイタルを視聴した。曲は、ベートーヴェンの最後の3曲のピアノ・ソナタ30番、31番、32番。3曲を休憩なしで弾いたようだ。
しかし、演奏は感心できるものではなかった。なんでこんなに弾き急ぐのだろうか。早く終わって帰りたいというのがアリアリと見える。ミスタッチはほとんどないのだが、速いテンポで一本調子、時折無意味なフォルテッシモが空虚に響く。味気ないこと夥しい。
1970年代末期から80年代前半に気に入って繰り返し聞いていたポリーニのベートーヴェンピアノ・ソナタ後期3大ピアノ・ソナタはこんな感じだったっけ?そんなはずはない。
ポリーニは1975年に30番、31番でベートーヴェンピアノ・ソナタ全集の録音を始め、1977年に32番を録音し後期3大ピアノ・ソナタをリリース(上の写真がそのジャケット)。
全集は39年をかけて2014年に完成している。さらに後期3大ピアノ・ソナタについては、2019年6月、9月にミュンヘンで再録音している。今回のコンサートは、その再録音の直後ということになる。
それにしてもポリーニは、見るたびに老け込んでいく。
なにか、身体に悪いところがあるのだろうか。もうやめさせてもいいのではないか。もう引退させてあげて欲しい。 かつて鍵盤の貴公子と言われたポリーニ(上掲写真は1974年録音のショパン24の前奏曲のジャケット)の、こんな老いさらばえた姿を私は見たくない。
ポリーニは、なんでこんなに酷い歳のとり方をしてしまったのだろうか。重い病を患ったか人生に絶望する何かがあったとしか思えない。 |