数寄屋通りに面しているビルの地下にあり、わざと人目に付かないように営業しているのではとさえ見える。
カウンターとテーブル席、完全個室からなる小さな店で、料理人とホール係の2人で切り盛りしている。
魚の鮮度には自信を持っているようで、夜は土佐コース(6000円、税込)、四万十コース(7700円)、黒尊コース(9900円)、極みコース(13200円)などがある。
夜に余った魚で、ランチ営業しているようだ。私を除いて他の7、8人の客はすべて女性である。カウンター内の料理人のファンなのか。
ランチでは最高値の1500円(税込)の「北海丼」というのを注文してみる。上に載っているのは、カニ、イクラ、鮭、鯛、ウニというラインナップだ。
最近の海鮮丼というのはマグロが載っていないケースが多い。そんな馬鹿なと思うが、マグロなしで「平然」としている。酢飯はほとんど酢を感じない。
「ご飯の大盛りは無料、具の大盛りは200円、お味噌汁のお替わりは100円頂きます」とメニューに書いてある。わさびは巧妙な混ぜワサビである。
ご飯は普通盛りのままで、しじみの味噌汁をお替わりした。これが実に旨かった。カウンターの中の料理人がプロなのが分かった。
野菜サラダが付いて、丼の上に生姜と沢庵が載っている。それにゴマのパンナコッタのデザートが付いて来た。肝心の魚の鮮度だが悪くはなかった。
私は海鮮丼にはマグロが必ず載ってほしいし、酢飯の酢はもっと効かせてほしい。
実は、今年の4月に西麻布3丁目から銀座8丁目にオフィスが移転したのだが、西麻布時代にヒイキにしていた寿司屋がランチに供した海鮮丼が未だに忘れられないのだ。
今回の「黒尊」の海鮮丼は、その抜けた大きな穴を埋めるには至らなかった。採点は5点満点(3.5点が合格点)で3.3点。