TV録画していた読響プレミアを視聴。2月10日にサントリーホールで行われた読売日本交響楽団の特別演奏会を収録したもので指揮は井上道義。
曲目は、服部百音(はっとりもね)を独奏者にしたショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番全曲とショスタコーヴィチ交響曲第5番の第4楽章の抜萃(こんな無残なことをあの井上がよく許したなというような酷いカット)。
特に凄かったのは、ヴァイオリン協奏曲第1番。
実演ではブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番(1月21日N響)を聞いている服部百音(1999年9月14日生まれ22歳)だが、それを数段上回るような鬼気迫る演奏で彼女の真価を見せつけた演奏だ。
刺さるような、抉るような弓使いや暗い情念を秘めた歌い口がショスタコーヴィチの本質を明らかにしていた(楽器は日本ヴァイオリンより特別貸与のグァルネリ・デル・ジェス)。
22歳の新進の演奏にはとても思えない。指揮者の井上道義のサポートも単なる伴奏を超えたもので、色々アドバイスもあったかもしれない。
TVにも映っていたが、この演奏会ではちょっとした事故があった。
服部が第3楽章のカデンツァを弾き終えて第4楽章に入るときに、汗を布で拭っていると肩当てが落下。
しかし、この肩当てを冷静に拾って付けて服部は弾き始めた。音を3つほど弾けなかっと本人。
番組のゲストで登場した服部はそのときのことを撫然と振り返る。彼女の左鎖骨付近の赤アザに注意して欲しい。激しい練習のためについた赤アザである。それにメイクが個性的というか強烈だ。
この服部百音は、作曲家服部隆之&ヴァイオリニスト服部エリの娘、つまり作曲家服部克久の孫、作曲家服部良一の曾孫である。
政治家の2世、3世にはロクなのがいないが、音楽家の2世、3世は歓迎だ。
母親に手ほどきされた後、辰巳明子、数々の俊英ヴァイオリニストを輩出した名教師ザハール・ブロンに師事している。
次から次に凄い新進ヴァイオリニストが誕生している日本だが、その中でもちょっと頭ひとつ抜けているかもしれないと思う。
実はこの演奏会に行こうとしていたのだが、降雪を理由に行かなかった自分が本当に情け無い。服部百音の演奏会は今後要注意である。
(2022.4.8「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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