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いやあ、大ショック!芥川賞作家(2011年に「苦役列車」で受賞)の西村賢太(1967.7.12〜2022.2.5)が2月4日の夜に乗車したタクシー内で意識を失い病院に搬送され、5日朝にそのまま死去。54歳だった。

 2月1日に89歳で逝去した石原慎太郎には、特に感慨も無かったが、西村賢太の急死は大ショックだ。

 そう言えば、西村は石原慎太郎の死について、2月2日付読売新聞に1500字の寄稿をしていた。2回落選していた西村の芥川賞受賞を後押しした選考委員だったからだ。

「石原氏の死で、私が好んだ存命作家は一人もいなくなってしまった」と書いていた。

 いわゆる「身体性」の作家としての共通点が2人にはあったのかもしれないが石原の死の4日後に西村が逝くとはなあ。

 先週の1月30日に図書館で「週刊読書人」1月14日号の第1面、第2面の新庄耕との対談を熟読したばかり。西村賢太は以下のようなことを言っていた。

・最近、高橋三千綱さんが昨年亡くなったことを知った。文芸誌は追悼特集なんか全然していないんだな。瀬戸内寂聴追悼ばっかり。瀬戸内さんはもちろん実績のある作家だけど、晩年満身創痍になりながら、本音を書き続けた高橋さんのことを少しは考えて欲しいもんだなあ。

・車谷長吉を私小説作家なんて言ってるけど、ありゃ身内の首つりのことを書いてるだけだよ。

・1日100本の煙草。中毒状態だが値上げで1箱600円になって、1日煙草代が3000円。1年で100万円だよね。

・毎月命日(29日)には没後弟子として石川県七尾市の藤澤清造(1889.10.28〜1932.1.29)の墓参りを欠かしたことがない。なんだかんだで、1回10万円かかる。もう20年は欠かしていない。これも1年で120万円だよ。藤澤清造の墓の隣にはもう俺が入る墓も建ててある。( 注:藤澤清造は大正期の作家・劇作家・演劇評論家。精神に異常をきたし失踪し東京芝公園内の六角堂内で凍死体で発見される。西村の尽力で代表作「根津権現裏」が新潮社から2011年復刊。)

・酒は飲めなかったけど、太宰治の弟子の無頼派田中英光に憧れて反吐吐きながら鍛えた。田中栄光には1日憧れたけど、彼はやっぱりエリートなんだよねえ。酒の方は、今は甲類焼酎の宝焼酎の「純」ばっかり。

・鶯谷駅前の大衆居酒屋「信濃路」のカウンターで、モツ煮込みやウインナーみたいなのを肴に飲むのが好き。夜中にカツ丼を食ったり、一人暮らしだから、体には悪いことばっかり。まあ、俺なんかやれるのはあと10年だろうなあ。

・今の文壇でキングオブキングは北方謙三。芥川賞取ったあと、挨拶に行ったら「あっち(純文学)に行っちゃダメ」とアドバイスされた。それにひきかえ伊集院静は「こっち(エンターテイメント)にきちゃダメだぞ」って警戒してたな(笑)。

・2011年に芥川賞をとる前年の年収は480万円ぐらい。それが翌年から年収は4800万円とかになっちゃって(笑)。芥川賞なんてたかが新人賞なのに(笑)。俺は芥川賞の恩恵を受けた作家ベスト3には入るな(笑)。10年経って、今なんとかやっていられるのも、芥川賞のおかげだよなあ。出版した本は、文庫も含め50、60冊にはなるかな。

・15歳の時に、家を出て以来母親にも3歳年上の姉にも会ってない。母がずーっと構わないでくれたことには感謝している。芥川賞取ったときに、母親からは、なんか連絡あったみたいだけど会ってはいないんだよ。

・なぜ結婚しないかって、結婚したらどんどん劣化する女の姿を見なきゃいけないからなあ。風俗ならそんなハンディキャップはないよ(笑)。( 注:芥川賞の受賞会見で「受賞の電話は、そろそろ風俗にでも出掛けようかと思っていた時だった」と話したのが話題になった。)

・俺は、暴力を振るったことで逮捕歴2回あるけど、俺が中学の時に不登校になったのは、すでに離婚していた自分の父親が強盗強姦罪で逮捕されたの知ったからだった。

 週刊SPA2021年6月12日号での山田ルイ53世(46歳)との対談。タイトルは「人生の日暮れに、生きる意味を知る」。

「50歳過ぎてから真剣に小説を書かなきゃダメだなと思い始めた」と西村は話しているが、今から思えばなんとなく老成という感じが珍しく写真から感じられる。

 西村賢太は、時代遅れの私小説作家だったが、こういう無頼派には、もう少し生きていて欲しかった。ある意味、痛風と腰痛に悩みながら、命懸けで本音を書いていた稀な作家だからだ。

 なんとも惜しまれる急死だった。

 それにしても54歳は若すぎるなあ。合掌。

(2022.2.11「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽

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