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NHK朗読特集が年末年始にあって、取り上げられたのは山田風太郎(1922〜2001)の晩年のエッセイ集「あと千回の晩飯」(朗読者:中原丈雄)。これが1回15〜90分で6回あった(合計5時間30分!)。

 これを知らなかったので、ラジルラジル(NHKのアプリ)の「聞き逃し」にアップされているのを私は聞いたのだが、実に面白いので是非聞いて欲しい(2月28日まで無料聴取可能)。

 私は、山田風太郎の忍法帖シリーズなどの歴史小説、伝奇小説などを読んだことはないが、この「あと千回の晩飯」「人間臨終図鑑」「人間魔界図巻」は愛読していた。

 一見偏屈老人風だが、よく読めばもっともなリアリティとユーモアがある。このギャップが実に面白いのだ。

「あと千回の晩飯」は、山田風太郎が72歳から74歳までに書いたエッセイで、食事、飲酒、喫煙、闘病(糖尿病、白内障、パーキンソン病)、人生回想、人生観、世界観、宇宙観などを淡々としかし鋭くそして面白く綴っているのである。

「俺はあと何回、(ウイスキーの水割りを毎回半本飲みながら)この晩飯を食べれるだろう。せいぜい千回かな」と72歳で始めた日記エッセイだが、74歳で筆をおいた。そして79歳で肺炎で亡くなっている。

 私にとっては、永井荷風の「断腸亭日乗」とともに、65歳過ぎの座右の書ということになる。御同輩にお薦めしたい。

(2021.2.5「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽

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