私は、山田風太郎の忍法帖シリーズなどの歴史小説、伝奇小説などを読んだことはないが、この「あと千回の晩飯」「人間臨終図鑑」「人間魔界図巻」は愛読していた。
一見偏屈老人風だが、よく読めばもっともなリアリティとユーモアがある。このギャップが実に面白いのだ。
「あと千回の晩飯」は、山田風太郎が72歳から74歳までに書いたエッセイで、食事、飲酒、喫煙、闘病(糖尿病、白内障、パーキンソン病)、人生回想、人生観、世界観、宇宙観などを淡々としかし鋭くそして面白く綴っているのである。
「俺はあと何回、(ウイスキーの水割りを毎回半本飲みながら)この晩飯を食べれるだろう。せいぜい千回かな」と72歳で始めた日記エッセイだが、74歳で筆をおいた。そして79歳で肺炎で亡くなっている。
私にとっては、永井荷風の「断腸亭日乗」とともに、65歳過ぎの座右の書ということになる。御同輩にお薦めしたい。