岸波夫妻が9月にウィーンに行くという。
少なくとも夫君の岸波氏はオペラやクラシック・コンサートにはあまり興味が無いと思っていたが、如何なる理由なのか。
それはともかく、ちょっと早いが、餞別代わりにウィーンを舞台にした映画を紹介しておこう。
まず「たそがれの維納(ウィーン)」(1934年)は私も見たことがないが、有名な映画「未完成交響楽」(1933年)を監督デビューで撮ったヴィリ・フォルスト監督による映画。
(※右の背景画像「たそがれの維納(ウィーン)」)⇒
シューベルトの伝記映画である未完成交響楽」ももちろん舞台はウィーンである。
「我が恋が成らざるがごとく、この曲もまた未完なり」という名文句の映画だ。この2本はちょっと古い。
新しいとは言えないが、「愛の嵐」(1974年 リリアナ・カヴァーニ監督)は、ナチものと言っていい映画。
シャーロット・ランプリングがヌードになって一気に有名になった。
ユダヤ人の少女だったランプリングを収容所で弄んだナチの将校役として共演のダーク・ボガードがいやらしかったなあ(笑)。
これにもウィーンの街の風景がふんだんに現れる。
そして、最近NHKの4K放送で紹介されたばかりの 「第三の男」(1949年キャロル・リード)。ウィーンもの映画の大本命だ。
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上掲の写真はウィーンのプラター公演にある遊園地の大観覧車の前で親友のハリー・ライムを待つ主人公のホウリィ・マーティンズ役のジョゼフ・コットン。
大観覧車の中でハリー・ライム役のオーソン・ウェルズがジョセフ・コットンに話す長台詞。
凄い台詞。悪のニヒリズム。これはグレアム・グリーンの原作にちゃんと書いてあるが、次の台詞はいくら探してもなかった。
「ボルジア家が支配した殺戮の50年間にイタリアはルネッサンスを生んだ。しかし500年間民主主義と平和を貪ったスイスが残したものは、鳩時計だけだった」。
だれが書いた台詞?原作者のグリーンは脚本も担当したが?監督のキャロル・リードも脚本担当にクレジットされているが?
実はもう一人脚本担当にクレジットされている第三の男がいた!オーソン・ウェルズである!
まさにこの「鳩時計の台詞」はオーソン・ウェルズが自ら考えた出した名台詞なのだ。
ウィーンに行ったら、必ず私のようにプラター公園へ行って遊園地の大観覧車に乗って、下を見てこの「鳩時計の台詞」を呟いてほしい。
オーソン・ウェルズの登場時間はトータル10分。主役ではジョセフ・コットンだが、完全にこの映画はオーソン・ウェルズの映画にしてしまった。
この他にこの「第三の男」にも登場するウィーンの名所としては、中央墓地がある。
下の写真は映画のシーンで、中央はハリー・ライムの恋人役のアリダ・ヴァリ。
なおこの中央墓地に埋葬されているのはベートーヴェン(今年生誕250周年)、シューベルト、ブラームス、ヨハン・シュトラウスⅠ世、II世など。
ただしモーツァルトは遺体が行方不明で墓碑のみ。是非訪れてほしい。
上の二枚は「第三の男」からだが、こんな感じの街並みはまだ残っている。私的にはこのウィーンという街は若干カビ臭いのだ。華やぎがないのだ。
オペラ好きならニューヨーク、パリ、ロンドンと並ぶ世界4大歌劇場のウィーン国立歌劇場は覗くべきだが、9月は夏休み中でオペラはやっていないのではないかな。
まあ、街中でなんらかのコンサートをやっているからなんか聞いてほしい。
私は新婚旅行でウィーンに38年前行ったのだが、愚妻はその時、ホテルのルーム係の女性にカーディガンを盗まれたと未だに話している。
たしかにウィーンという街にはそういうところがあるのである。くれぐれもお気を付けて。
葉羽:(岸波)
どうもありがとう。
(2020.3.13「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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