TV録画していた映画「ムッシュ・アンリと私の秘密」(2015年 イヴァン・カルベラック監督 ・原作98分)を見る。
「お前の魅力でワシの息子を誘惑して離婚させたら下宿代を6カ月タダにしてやる」というムッシュ・アンリ(クロード・ブラッスール)の申し出を女子大生(ノエミー・シュミット)は受け入れてその息子を誘惑する。
モリエールあたりのフランス古典喜劇やバルザックあたりに原案がありそうだが、会計事務所を開いて成功した偏屈吝嗇オヤジ(日本と違い会計士らしからぬ実直なイメージ)とちょっとオツムの足りない美人女子大生のやりとりが楽しい。
ありそうな展開ばかりだが、随所にフランス的なエスプリが感じられる。
飽き始めた頃あいでちゃんと幕(98分)。人生の喜びも悲しみも厳しさもちゃんと盛り込みましたということか。
とにかく女子大生役のノエミー・シュミット(当時24歳)の輝かんばかりの魅力で見せる映画だ。
日本映画の新人美人女優と違うのは、やはり演技力。
女子大生は、試験の合否に関して2度嘘を言うが、最初の父親についた嘘は簡単にバレるが、2度目の嘘は偏屈吝嗇オヤジを幸せにした嘘だった。
言ってみれば、この映画のストーリー自体が嘘をテーマにしているわけだが、嘘も方便ということか。
とにかくこういう伝統がフランスの演劇や映画にはあるわけだ。
死と悲劇ばかりがフランス映画ではないということを改めて感じさせた良作であった。
字幕を見ると、偏屈吝嗇オヤジはヒドイ地方ナマリを話しているようだ。
名優ピエール・ブラッスールの息子のやはり名優クロード・ブラッスールにそういう役をやらせる楽屋オチのようだ。
女子大生もオルレアンの野菜売りの娘だがら、そういう2人がパリで繰り広げる茶番劇という面白さもあるのだろうが、日本人の私には推測するにとどまる。
(2020.3.6「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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