…と言ったのは誰だったかしら、ダディ?
そいつは、江戸川乱歩がミッキー・スピレインの「大いなる殺人」の添え書きに贈った言葉だね。
ハードボイルドと言えば、ハメット、チャンドラー、ロス・マクドナルドというのが正統派の系譜ね。
そして、70年代からネオ・ハードボイルドのクライムリィ、90年代はペレケーノスだろうな。
ブリティッシュ・ミステリに代表される本格物は、事件と謎解きがメインだったけど、ハードボイルド・・・特に巨匠チャンドラー以降は「事件」が隅っこに追いやられて、探偵の私生活や取り巻きの人間模様が中心になってくるでしょう?
だから「長いお別れ」でも、謎解きよりも男の友情がテーマになっているのさ。
「さあ、謎解きごっこ始めましょうね。ヒントはこれよ。さあさあ、おりこうさんは答えを言ってごらんなさい」…そういうミステリがいまだにあるけれども、そこにはセクシーな大人の男は出てこない。
だから、この言葉はハードボイルドをじょうずに表現していると思うわ。
でもハードボイルドには、もう一つ共通の特徴があるように思うの。
もう一度、マーロウのケースで言うと、彼は成熟した女、それも十分に言葉で渡り合えるようなしたたかな女しか愛さない。
例えば、次の「かわいい女」…