誰にもでけへん仕事をしたいんです (山口伊太郎)
着物は将来どうなるんやろう。 残るんやろうか。
身近な存在として着物がなくなった今、当然のように帯は売れません。これではあきまへんな。
私らは、織物の技術を後世に伝えなければならんのです。何よりも織りが好きなんですわ。
そのためには、経済活動のための織りではなく、誰もが納得する美術品としての織物を作らなければあかんと思いました。
誰にもまねの出来ない、私だけの技術を駆使した新しい作品を残そうと思ったんです。
ただ、古いものを写すような仕事はしたくない。そんなこと誰にでもできる。
私は誰にもでけへん仕事をしたいんです。
その頃私は、西陣に発達してきた数々の高等技術が、今まさに滅びようとしていることを実感していました。
何とか残したい。
それは西陣に生まれ、西陣の織物に携わってきた者として課せられた使命ではないだろうかと考えていました。 |