その時、僕は彼に自分の「結婚問題」のことを話した。親から「勘当」されたこと。その大元の原因は、生まれながらにして下半身不随でずっと施設で育ってきた「彼女の妹」の存在であったことも。
(僕の両親は、この結婚によって妹を一生面倒見て行く責務・・つまり僕を「養子」に取られることを危惧したのだ。)
ミヤシタは驚いたような眼をして言った・・「圧倒的だ!」と。
彼が感じた「圧倒的」の意味は未だに分からない。僕の境遇の事か、あるいは妹の人生の事か。
ただしその時、ミヤシタが大きなショックを受けていたのは分かった。
頭を抱える男(イメージ)
いま思うに、彼の「苦悩」はあくまでも何不自由なく生まれ育った「健常者」としての自分自身の「精神世界」のことであって、生きようとしても「普通に生きられない人々」に思いが至っていなかったのではないだろうか。
自分自身の「甘え」に気づいた・・そんな顔をしていた。
その後の彼に何が起こったのかは分からないが、荒川河口に浮かんだ彼は、警察によって「自死」と判定された。
葬儀(イメージ)
ミヤシタの葬儀には、彰と一緒に参列することになった。
その時のミヤシタの御母堂の苦しそうな顔が、今でも脳裏に焼き付いている。
子に先立たれた母の哀しみは、これほどに深いものか・・と思わずには居られなかった。