岸波通信その248「宿敵!小笠原②」

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Present by 葉羽
「SUMMER IN THE ISLAND」 by Music Material
 

岸波通信その248
「宿敵!小笠原②」

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◆「人生を振り返って」シリーズ#47「宿敵!小笠原②

 さて、身体は小さくてどこか「病弱」な感じもあった小笠原だが、いざ将棋盤を前にすれば無敵のヒーロー。

 その「無敗の王者」に対して、今まで放課後将棋大会に参加したこともないニューフェース(僕)が対戦を挑んだので、周囲には続々とギャラリーが集まって来た。

 「振り駒」によって僕が「先手」に決定。周囲は固唾をのんで初手に注目する。

振り駒

(将棋の先手・後手を決める)

 この時、試そうと思ったのは、最近将棋の本で読んだばかりの「筋違い角」という奇襲戦法。「先手」番でしか使えない「奇手」だ。

 序盤で早々に「角交換」し、通常の斜めの「角筋」から一マスずらした場所に打ち込んで、先制の「一歩得」を目指すのだ。

 角将を打ち込んだ場所を見て、周囲から「えっ!」と驚きの声が上がる。小笠原の表情にもかすかな動揺が浮かぶ。(やはり、この戦法を使う者は誰も居なかったらしい。)

 「筋違い角」戦法(※必ず先制で一歩得できる)

 筋違い角の盤面では、通常の「定跡」(←囲碁の場合は「定石」)は通用しない。

 角将が通常盤面であり得ない「異次元」の働きをするので、「筋違い角盤面の定跡」を知らないと対処できないのだ。

 ペースを狂わされた小笠原はの指し手は乱れだし、(途中経過は忘れたが)投了した小笠原は宙を睨んでしばらく口がきけなかった。よほどショックを受けたのだろう。

なにぃ~!(イメージ)

(第66期王位戦第1局にて/永瀬拓矢九段)

 思えば、自分が将棋を覚えたのはいつ頃だったか?

 おそらく幼稚園の頃、親父が教えてくれたのだと思う。最初は「将棋倒し」、次に「はさみ将棋」・・。

  将棋倒し(ドミノ倒しのようにやる)

 小学校低学年で「本将棋」を覚えた頃、クラスに将棋が分かる同級生は誰も居なかったので、対戦相手はもっぱら親父か親戚の叔父貴たちだった。

 そのまま「将棋道場」にでも入会していれば、凝り性の僕のこと、そのままプロ棋士を目指していたかもしれない。

  将棋道場

 でもそうはならなかった。興味が「映画」や「音楽」などに移っていったからだ。

(オードリー・ヘプバーンとの出会いが大きかったなぁ。)

オードリー・ヘプバーン

(『マイ・フェア・レディ』より)

 さて、小笠原戦の第二局が始まった。僕が先勝したので、今度は小笠原が「先手」番だ。

 すると、驚くべきことが起こった。何と「先手」番の小笠原が「筋違い角」を打ち込んできたのだ。(ええ~!)

 今度はこちらが動揺する番だ。「攻め筋」の変化は散々本を読んで勉強していたが、「受け」に回った時の対処法までは知らなかった。

  ←昔はこんなの無かった!

 今度は逆に翻弄され、力なく「投了」するしかなかった。(うむぅ・・)

 やはりこの小笠原は、ただ者ではなかった。一局打っただけで「筋違い角戦法」の極意を習得してしまったのだ。(くっ、くっそぉ・・)

 もうこうなっては後には引けない。通常、2局くらい指したところで「お開き」になるのだが、決勝戦を申し込むことになった。

 周囲の対局者たちは、自分の「盤」を片付け始めていたが誰も帰ろうとしない。皆が僕らの周りに集まって来た。

  黒山の人だかり(イメージ)

 この第3局は「筋違い角」の奇襲戦法ではなく、「相矢倉」の正攻法対決となったが、「途中経過」は覚えていない。

 それにも関わらず終盤の盤面を忘れていないのは、「相入玉」というトンデモナイ死闘となったからだ。

相入玉の死闘

(双方とも相手陣に)

 これは、昭和初期のプロ棋士「間宮純一六段」が指した『間宮久夢流』という理論が名高いが、ほとんどの将棋の駒が「前」に向かって進み「後ろ」を攻撃できないため、「一番安全なのは敵陣(敵側3段目以内)」なのだ。

 我らは「それを目指した」訳ではなく、中盤の激闘で互いに追い込まれ、敵陣に「入玉」するしかなくなったからではあるが。

 こうなると、互いに「鉄壁の安全地帯」に入った形となり、「詰める」ことはほぼ不可能。実際、攻めは膠着し、いたずらに時間だけが過ぎていった。

  時間だけが刻々と・・

「これ、アレじゃね?『持将棋』の局面だろ?」ギャラリーの誰かが言う。

 持将棋? 初めて聞く言葉だった。

「まあ、これじゃ勝負がつかないし、それでもいいや。で、どうすんの?引き分け?」

 ~と僕が言う。小笠原も異論はないようだ。

「じゃ、ここで『持将棋』な。俺が審判になるから、持ち駒の点を勘定するぞ」その男が言う。

 後でわかったが、「位」によって点数が違う持ち駒の「合計点」で勝敗を決するのだ。

  持ち駒

 その結果・・

 よぉし、この勝負、キシナミの勝ち!m9っ`Д´)

 ををを~! 歓声が上がる。ついに「世紀の死闘」に決着が付いたのだ。

終局

(イメージ)

 辺りはもう宵闇が迫る時刻。互いに「第4戦」を戦う気力は無いほどの疲労困憊。

 だが、小笠原はスクッと立ち上がり・・

「今日のトコはこれくらいで勘弁してやろう!」とクールに言い放つ。

「ぶわっはっはっは、それは僕の台詞だ。いつでも相手になってやる!」と僕。

 お互い負けん気が強いのだ。しかし、心の奥底ではどこか安堵している自分が居た。

 この日から、僕らは「宿命のライバル」となった。

 しかあしっ!!

 それからしばらくして、小笠原の身に「異変」が起きる!

(To be Continued⇒)

 

/// end of the “その248「宿敵!小笠原②」” ///

 

《追伸》

 今でも「筋違い角」や「相入玉」の件だけは鮮明に覚えています。それだけ何度も「脳内の回想シーン」で反芻していたのでしょうね。

 高校時代、小笠原以外には「全勝」とはいかないまでも、あまり「負け」の記憶がありません。誰か僕に勝った記憶ある?(ねぇカリスマ彰?)

 考えてみれば、小笠原の入院を契機として「居残り将棋」をすることが少なくなり、その代わり「生田流筝曲・宮城道夫派社中」に入門して、忙しい日々が訪れたからでしょうか。

 しかし、小笠原との縁はそれでも切れることはなく、やがて「大転換」が訪れるのでした。

 

 では、また次の通信で・・・See you again !

宿敵!小笠原

(後に「囲碁」で対決することに)

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To be continued⇒“249”coming soon!

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【岸波通信その248「宿敵!小笠原②」】
2025.12.31配信

 

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