岸波通信その246「赤いハイヒールの女(完)」

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Present by 葉羽
「SUMMER IN THE ISLAND」 by Music Material
 

岸波通信その246「赤いハイヒールの女(完)」

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◆「人生を振り返って」シリーズ#45赤いハイヒールの女(完)

 二年間、アパートの隣に住んでいながら顔も見たことが無い「赤いハイヒールの女」。前回は、ある夜突然に「男」が訪れ、玄関先で「出て来~い!」と騒ぎを始めたところまで。

 いくらドアを叩いても開けてもらえない男は号泣しだし、ついには「俺と一緒に死んでくれ!」の禁止ワードが。あらららら・・。

一緒に死んでくれ~!

(イメージ)

 いやいや、さすがにコレは不味い。ケーサツに通報? いや、さすがに10分もこれをやってるので、そろそろあきらめて帰るかも?

 とりあえず今、壁一枚向こうで大変なことが起きそうな状況を誰かに分かってもらわなければならないと考え、再び福島のケイ子に電話することに。

(当時はケータイが世の中に登場前なので、プッシュホン)

  当時はプッシュホン

「ケイ子、いま大変なんだよ!」

「いったい、どうなったの?」

「隣の・・ホラ、さっきの『赤いハイヒール』のトコに来た男が、まだ『出て来~い!』って大騒ぎしてる・・聞こえる?」

「うん、遠いけど聞こえるよ。なんか怒鳴ってるわね」

「やっぱ出てって『アパートに赤ちゃんも居るんで静かにしてください』くらい注意した方がいいかな?」

「なんかアブなそう・・やっぱ関わんない方がいいんじゃない?」

  触らぬ神に・・

 たしかにそうかもしれないが『一緒に死んでくれ~』まで言ってるし、事が起きる前になんかした方がいいのではないか・・と懊悩する。

 男はというと、一向にあきらめて帰る様子もなく、ドアを叩いたりケリを入れたりエスカレートしている。それらを逐次、ケイ子に電話で実況中継だ。

エスカレートしそうな雲行き・・

(イメージ)

 このままでは、ドアは頑丈だとしてもその横のキッチンのガラス窓とか浴室の窓とか破壊するかもしれない。

 もしこれ以上のことが始まったら、さすがに捨て置けないと思い、僕はいつでも飛び出せるようパジャマからジャージーに着替える。

  ジャージーの腹には雑誌を・・

 待てよ「死んでくれ~」だから、刃物とか隠し持ってるかもしれない。慌ててて僕は、ジャージーの腹に古い雑誌とかを挟み込む。(既に「臨戦態勢」!)

 まてまて、こちらも何か武器とかあった方がいいか? 今、身近にあるもの・・

 あ、鼻毛切り!m9( ゚ω゚)  ←(かなり動転している)

  ←どないすんねん!

 刃物に刃物で対抗すると、むしろ大ゴトになりかねない。

 最終的には、本棚から大きめの分厚い本『男の料理 私もつくる』(なんでだよ!)を取り出して手に持った。

  ←「盾」になるのか!?(笑)

 しかしなんだな、男もあきらめが悪いというか、そもそもどの程度の関係なんだろ・・とか考えてしまう。

 また「赤いハイヒール」の方も、これだけ騒ぎになってるのに何も対応しないのが不思議だ。

赤いハイヒールの女

(イメージ)

 すると、男が大声で泣き叫びながら、ひときわ高くドアをけり上げた。

「まずい、出番だ。ケイ子、僕は靴履いて準備すっからな!」

「やめなよ・・ほっときなさい!」

 いやいや、介入できるのは今ここに僕しかいない。既に「決死の覚悟」だ。

「ケイ子、愛してるよ、僕に何かあったら子供たちをよろしく!」(あらららら・・)

  強く生きるのだよ(うっうっ・・)

 必至の形相で受話器をわきに置き、『男の料理』を握りしめて玄関へと向かう。

 その時だった。バーンと隣の部屋のドアが開かれる音がし「ハイヒール」が出てきた!

  出てきた!(という「音」が聞こえる)

「やめなさいよ、近所迷惑でしょ!」

(初めて「声」聞いた!)

「ありがとー開けてくれて! オレは君だけが・・」

 ~と言いかけた時、ハイヒールの口から『衝撃の事実』が告げられる。

「なに言ってんの、アンタが会社の女の子に『6人も手を付けてる』のは知ってるのよ!いい加減にして!」

 えええ~!Σ( ̄口 ̄∥)

ネタはあがってんのよ!

(たぶんこんな感じ:イメージ)

 あわわわわ・・なにこの男、「スケコマシ」って奴? そんなにモテるヤツなの? ・・玄関のノブにかけた手を放し、僕は部屋に戻って耳を澄ます。

 男は勢いが無くなり、さめざめと泣きだしたようだ。その一部始終を、ケイ子に電話でコソコソ伝える。すると・・『さらに衝撃の展開』が。

「中へ入んなさい・・」

 ええええ~!この流れで今晩泊めんのかい!( ̄[] ̄;)

 ハイヒールの部屋のドアがバタンと締まり、二人で部屋の奥に入ってく気配・・・すっかり脱力した。

 ケイ子は・・「ほらね~ あんな喧嘩は犬も喰わないのよ」と。

 いやいやいや、そもそも「夫婦」じゃないし、同じ会社の7人目」だし・・。

 かくして、すっかり脱力した僕らは電話を切って眠ることにし、以後「赤いハイヒール」については全く関心が無くなった。

 しかし何だよ、あの二人の関係? 関わらなくてホントに良かった・・そんな一夜の大事件でありました。

(このシリーズ完)

 

/// end of the “その246「赤いハイヒールの女(完)」” ///

 

《追伸》

 世の中、いろいろな男女の関係があるものです。この件で、他人の男女関係に軽々しく立ち入ってはいけないという事を学びました。(コッチは迷惑だったんだけどね~)

 だけど不思議なのは、あの男がだらしないヤツだと社内では広まってるはずなのに、それでも引っ掛かる女性が次々と出て来ること。

 まるで会津の西門慶(@「金瓶梅」)か、ドン・ファン(スペインの伝説上の放蕩男)か。

 彼らとの縁はこれで切れましたが、あの後、さらなる「伝説」が積み上がっているかもしれないな・・そんな事を思わせる事件でした。

 

 では、また次の通信で・・・See you again !

赤いハイヒールの女

(その正体は「7人目の女」?)

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To be continued⇒“247”coming soon!

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【岸波通信その246「赤いハイヒールの女(完)」】
2025.11.19配信

 

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