「あれ?お隣の夫婦は居たし、ハイヒールの彼女も部屋にいるはず。誰だ?3階の住人か?」
~と思ったが、足音は僕の部屋の前を通り過ぎる。この先には「ハイヒール」の部屋しか無い。
その「足取り」は男性のようであるし、勢いが付き過ぎているので酔っているのかもしれない。もしかして(今までそんなことは無かったが)、「ハイヒール」の彼氏なのか?
しかし次の瞬間、猛烈な勢いで「ハイヒール」の部屋のドアを叩き始める。まるで映画「卒業」のダスティン・ホフマンが結婚式場に乱入して二階から「エレ~ン!」(両手でガンガンガン)とやるような勢いだ。
エレ~ン!(ガンガンガン)@「卒業」
ちょ、ちょっと待て。なんだコイツ!?
「ぅお~い、出てこ~い!ここを開けろ~!」(ガンガンガン)
「ケイ子、何だか隣で大変なことになってるぞ」
「聞こえてるよ、関わらない方がいいと思うわ。眠いからもう切るね、じゃ・・」
ケイ子は、あまり興味が無かったようだ。
しかし、こんな夜中に独り身の女性の部屋に来て落花狼藉とはふてぇヤツだ。
ここを開けろ!
しかもそのドアの場所は、僕が今電話している寝室の「壁一枚」挟んだ外側の廊下なのだ。おそらく2メートル向こう側に居る。
男はドアを叩き続けるが、「ハイヒール」は無視して返事もしない。こりゃきっと「痴話喧嘩」だな。
返事が無いのであきらめるかと思ったが、男はしつこく居座って「ガンガンガン」を止めない。たった2メートル向こうで。しかも、もう5分以上もやっている。