岸波通信その216「我ら、信夫山ワンダーフォーゲル部!(後編)」

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Present by 葉羽
「SUMMER IN THE ISLAND」 by Music Material
 

岸波通信その216「我ら、信夫山ワンダーフォーゲル部!(後編)」

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◆「人生を振り返って」シリーズ#15 我ら、信夫山ワンダーフォーゲル部!(後編)

 夏休みに入り、初登山の日を迎えた我ら信夫山ワンダーフォーゲル部のパーティ5人は、磐越西線で磐梯町駅へ。山まではまだ距離があるが、ここが初登山の出発点となる。

  磐梯町駅(現在)

 ゴールドラインを北へ登り、磐梯山と猫魔ケ岳の登り口が東西に対峙するポイントへ。ここからは本当の山岳道、傾斜もきつくなる。我々はフンドシを引き締めた。(穿いて無いけど)

 300メーターほど登った時点で、上から別のパーティが降りて来る。すると間髪入れずにヒロユキ・・

「こんちわーッス!」

 向こうの先頭も同じ挨拶を返す。どうやら、この挨拶が山でのマナーらしい。

  登山道でのすれ違い

 真似して見るか・・「こんちわーッス!

 初めての山挨拶に緊張して思わず「ッス!」のところに力が入ってしまった。途端に恥ずかしくなって遠くの景色を眺める振りをする。(ブッシュの中の山道なので見えないけど:笑)

 僕らが早すぎて後ろの三人がへばって来た。三人もそれぞれ運動部には入っていたはずだが、山道となると勝手が違うらしい・・ペースを合わせながら慎重に登る。

「もうすぐ・・の筈だ」とヒロユキ。程なく猫魔ケ岳山頂に到達!!

猫魔ケ岳山頂

(彼方は会津磐梯山)

「やったー!!」

「をを~ スゲー!」

 猫魔ケ岳の山頂部はとても狭い。高校の教室一つぐらいの山頂の真ん中に大きな岩がある。おそらく明治22年の磐梯山噴火で飛んで来た噴石ではないか。

 僕らはその噴石によじ登って腰掛け、猪苗代湖の全景を見下ろす・・まさに、絶景だ。

  猪苗代湖の絶景

 するとヒロユキ・・

「そのまま首を真後ろに回してみろ」と。←(エクソシストかよ!)

「ををををを~!!!!」

 何と反対側には桧原湖など裏磐梯湖沼群が見えているではないか! コレは凄い、首をひねるだけで表磐梯・裏磐梯の絶景が同時に見られるなんて。

「オレは今、モーレツに感動している~!」

 ・・と言ったかどうか記憶にないが、まさにそう叫びたい気持ちだった。

山頂から裏磐梯方面

(北方面)

 その場で僕らは弁当を広げ、胸いっぱいになりながら腹八分目になった。(何のこっちゃ!)

 十分に絶景を堪能してから、今度は雄国沼を目指して逆側の山道を降りる。3キロほど進むと初めて見る雄国沼湿原が見えてきた。

 湿原に広がっていた黄色い花がニッコウキスゲだという事は後から分かった。花期が6月~7月ということなので、その終り頃だったろう。

  雄国沼湿原のニッコウキスゲ

 キャンプ場までたどり着くと、さっそく野営の準備だ。テントを張り終えると、そのまま潜り込んで寝る奴もいた。

 誰もが初めての山歩き、磐梯町駅から起算すると10数キロの山道を踏破しているのでやむを得ない。

  寝てしまうヤツ・・

 そして、キャンプ飯をかっ喰らった後、一つの中型テントに5人で寝ることに。こうなると一つ、問題が起こる。

「おい、オレにあんまりくっつくなよ。気持ちわりーなぁ!」

 女子ならヤブサカではないが、育ち盛りのむさくるしい高校男子ばかり。しかも風呂に入ってないので、昼間の汗がそのまま乾いている。互いに牽制しながら眠りに落ちた。

 ・・しかあしっ!!

やがて夜は更けて

(雄国沼キャンプ場)

 アクシデントはその夜にやって来た・・大寒波である。いやいやいや、夏なので寒波は来ないのだが、我々は「山の夜」というのを甘く見ていた。

 重ね着の用意もして来なかった。そして、極寒の一夜が明ける・・

「ぅお~いっ!! なんでオレに抱き着いてんだよ!」(しかも鼻水たらしながら・・)

 寒さのあまり、誰もが隣のヤツと抱き合っていたのである。(無意識だけど:笑)

「やっちまったー」

「離れろ 離れろ!」

「もうオレ・・お婿に行けないかもしんない・・」 ←(ボカ、ドカ、ガスッ!)

 いずれにしても、”他人と抱き合う”のは生まれて初めての体験だった。

 そのあと我々は、無言で朝飯の準備に取りかかるのであった・・。(大笑)

(※このエピソード・完)
 

/// end of the “その216「我ら、信夫山ワンダーフォーゲル部!(後編)」” ///

 

《追伸》

 もちろんこの後、我らは無事に福島市に帰着しました。あの時、猫魔ヶ岳山頂から見渡した景色はその後も一生忘れられない思い出となっています。

 いまはどうなんだろう? 周りのブッシュが成長して、景色が見渡せなくなってるんじゃないかと心配します。(表磐梯の「天鏡台」が実際そうなって、さらに上に展望所が作り直された。)

 また、翌年も信夫山ワンダーフォーゲル部は、会津磐梯山山頂から絶壁の崖下りをして桧原湖にキャンプしました。これはオチが一個だけだから、あまり面白くない。

 ・・というか、アテにしていた裏磐梯山麓の水場が枯れていて、暗い中を桧原湖方面へ降りざるをえなくなったのですが。(あ、ばらしちゃった!)

 今月、古希を迎えた現在ではもう無理。しかもリーダーだったヒロユキが先年、亡くなってしまったし。うむむむむ・・。

 それにしてもあの時抱き合ったのはカタヒラだったかゼンイチロウだったか・・いずれにしてもオゾましい思い出だなぁ(笑)

 

 では、また次の通信で・・・See you again !

翌年の桧原湖キャンプ場

(裏磐梯)

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To be continued⇒“217”coming soon!

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【岸波通信その216「我ら、信夫山ワンダーフォーゲル部!(後編)」】2024.9.10配信

 

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