そしてこの「ラブ・ミー・テンダー」、更に深い背景がありました。
この曲の原曲は『オーラ・リー』という名前で、実際に南北戦争の時に北軍の兵士達が“故郷に残してきた恋人”を思いながら歌っていた愛の歌だったのです。
作詞はウィリアム・ホワイトマン・フォスディック、作曲はジョージ・R・プルートンで、現在ではスタンダードなアメリカ民謡として歌い継がれています。
『Aura Lee』
When the blackbird
in the spring
On the willow tree
Sat and rocked,
I Heard him sing
Singing Aura Lee
Aura Lee,Aura Lee
Maid of golden hair
Sunshine came along With thee
And swallows in the air.
吉増剛造氏は、“漆掻き”によって満身創痍の姿に傷つけられた漆の木をまのあたりにし、アーティストとしての感性を揺さぶられたのでしょう。
カメラはその深い傷跡を凝視し、それでも生命の輝きを失わない凛とした姿をゆっくりと見上げ、やがてその上空…縄文の太古から人と漆の営みを営々と見守ってきた「天」を仰観します。
縄文の日本人と漆が出会い、西欧では『第三の価値』として、宝石、貴金属に並び称される至高の価値を生み出して行く。
その奇蹟の原点と対峙し、それに相応しいメロディとして、青春の日に心揺さぶられた愛の歌「ラブ・ミー・テンダー」を重ね合わせたのでしょう。
1977年8月16日、数々の名曲を残した伝説の“キング・オブ・ロックンロール”、エルヴィス・アーロン・プレスリー永眠。(享年42歳)