価格設定でも、このような暗闘を繰り広げた両社ですが、問題は中身。
どのような作家でラインナップを組めるかということは、長期的な販売競争に決定的な影響を及ぼします。
ここでも「サンデー」が先手を打ちました。
その秘策は、初代・サンデー編集長豊田亀市が号令した“漫画の神様”の囲い込み。
人気絶頂の手塚治虫から独占契約を取り付け、以後、「少年サンデー」以外には執筆させないというものでした。
当時の手塚治虫は月に7本の連載を抱え、その他に読みきりやグラビア特集の絵も描くという超・売れっ子。
何と言っても、光文社の『月刊少年』に連載している国民的人気の「鉄腕アトム」まで辞めさせて、それら全てを補償する破格の専属ギャラを提示したのです。
(提示月額は、小学館の社長の給料よりも高かった。)
そこまで覚悟を決めた小学館でしたが、この申し出はニベもなく却下されました。
手塚治虫いわく…
「僕はお金うんぬんではなくて、作品をいろんな場所で描いていきたいんだ。」
結果として、独占契約は成りませんでしたが、それでも当面の少年週刊誌バトルでは、サンデーだけに連載が決定。
構想熟慮の上、手塚治虫がスタートを決めた作品が『スリル博士』です。