仮にここで一生懸命勉強したところで、どうせ人並みの生活はできないのでないか?
まして、恋や結婚や幸せな家庭を持つことなど…。
彼女の追い詰められた心は、その想いで、自分自身の可能性さえ閉ざそうとしています。
多感な思春期に、自分のハンデと向き合わざるを得ない苦悩は想像に難くありません。
憐れみや言葉だけの慰めなど、少しの解決にもならないでしょう。
僕は、一瞬立ちすくむと同時に、今更ながら自分の驕りに気づきました。
自分が学生時代に出会った障害者の人たちは、少しも暗い表情を見せませんでした。
いろいろな不安や苦悩をきっと抱えていたはずなのに。
そんな彼らに対して、“自分はこの人たちに比べればずっと恵まれている”という誤った『優越感』や『安心感』を得ただけではなかったのか?
何と不遜なことでしょう。
むしろ、どんな境遇にあっても夢を失わない強さ、どんな時も他人への笑顔を忘れない優しさを学ばねばならなかったのに…。