岸波通信その155「四つの目」

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岸波通信その155
「四つの目」

1 間違いを繰り返す人

2 近くを見る目、遠くを見る目

3 広く見る目、振り返る目

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  Four Eyes 【2017.11.19改稿】(当初配信:2008.12.16)

苦しくてどうにもならないときの経験ほど尊いものはない。
  ・・・「橋本先輩の人生ノート」より

 人は仕事をする中で、あるいは人生を生きる中で、いろいろな間違いを犯します。

 どんな優秀な人でも、必ずそういう道を通ってきたはずです。

 ところが…

イタリア北部/ミラノ

(「橋本先輩の人生ノート」より)※画像は本文と特に関係がありません。

 中には、往々にして同じ間違いを繰り返していまう人がいます。

 もちろん、そうでない人も。

 いったい、その違いはどこから生まれるのでしょう?

 ということで、今回の通信は、僕が日頃そのことについて考えていることをお話いたしましょう。

 

1 間違いを繰り返す人

 仕事で同じ間違いを繰り返す人は、そもそもその失敗が身に付いていないのです。

 「失敗は成功の元」という格言がありますが、それは過ちを糧として成長して行く人のことを言ったものでしょう。

 人間、過ちを犯せば、それに伴う恥ずかしさや自己嫌悪などによって“否な感情”が記憶に残るはずです。

 その“否な感情”が抑止力になって、「この過ちは二度と繰り返すまい」と考えることで一つ成長するのです。

 逆に言えば、自分が犯した過ちを“恥ずかしい”と感じていない人は、行動を改めることはありません。

 このタイプには三種類あると思います。

西欧の風景

(「橋本先輩の人生ノート」より)

※画像は本文と特に関係がありません。

 その一つは、自分が犯した仕事上の過ちが“たいしたこと無い”と過小評価する人です。

 このタイプの人は、誤りによって生じる周りへの迷惑に無頓着、言い換えれば“他人の痛みに無頓着な人”と言えるかもしれません。

 もう一つは、“誤りは自分のせいではない”と思っている人。

 本当は、自分にはちゃんとした能力があるのにこんなつまらない仕事を与えた誰かが悪い、あるいは、自分は精一杯努力したのに、そもそも無理な期限でやらせた上司が悪いなどと考える人。

 このタイプは、いわゆる“他罰主義”というやつで、極力自分の責任逃れをする悪い癖が付いてしまっているのです。

 そして三番目のタイプ~これが一番困るのですが、謝れば済むと思っている人です。

 例えば、仕事の誤りを詰問する上司は、本人に誤りを気づかせ、その原因を自覚させて繰り返さないように、つまり“本人の成長”を期待して言っているのです。

 でも、叱られている彼は、目の前の上司が“ただ怒っている”としか捉えていません。

 怒っている間、ひたすら頭を下げて嵐の通り過ぎるのを待っていれば(自分的には)解決すると思っているのです。

西欧の風景

(「橋本先輩の人生ノート」より)

※画像は本文と特に関係がありません。

 三つのタイプとも、自分が犯した過ちを心から“恥ずかしい”と思うことはありません。

 方法論が、“過小評価する”か“他人のせいにする”か“謝ればいい”というふうに違うだけです。

 誤りを恥ずかしいと思えないのですから、改まることはありません。

 他人に迷惑をかけながら、本人はそのことにさえ気づかずに失敗を繰り返し、いつも“同じパターン”で自分なりの決着を付けてしまいます。

 はっきり言って“向上心”がないのです。

 向上心が無い人を導くのは容易ではありません。

 福島県のとある製造業の業界団体の会長さんが、「採用する人物にはどんな能力を求めますか」という質問に、技術力でも頭の良さでもなく、「素直な人間」と答えましたが、やはりそこが職業人としての基本なのでしょう。

 

2 近くを見る目、遠くを見る目

 さて、“向上心のある素直な人間”は、過ちを糧として成長することができるので、次第に失敗しないようになります。

 ならば、未経験の事柄について失敗は避けられないのでしょうか。

 いいえ、そんなことはありません。

 人間にはイマジネーションという能力が備わっています。

 あらかじめ結果を予測することで、失敗を未然に食い止めることができるはずです。

 しかしこの場合、「いろいろな悪い結果を想像して、それが起きないように自分で考えろ」とアドバイスするだけでは、あまりにも不親切です。

 貴方は、こういう場合にどんなアドバイスができますか?

西欧の風景

(「橋本先輩の人生ノート」より)

※画像は本文と特に関係がありません。

 僕は、自分自身の経験から、一つの方法論を持っています。

 例えば、新しい事業の企画をするとしましょう。

 その事業企画が、いろいろな角度から見て真に有意義なものであるのかどうか、“四つの目”で検証することにしています。

 その一つは、「近くを見る目」です。

 これは基本中の基本。ニーズが的確に捉えられているか、方法論はベストなのかなど、対象を詳細に検証することです。

 パートナーの選び方、関係機関の協力体制・役割分担など事業の全体スキームも最適かどうか判断する必要があります。

 事業効果の評価予測、成果目標の設定などもこれに入ります。

 普通、ここまでは誰でも考えることです。

 問題はその後。

西欧の風景

(「橋本先輩の人生ノート」より)

※画像は本文と特に関係がありません。

 その事業はいつやめるのか、やめた後はどうするのかということを考えておく必要があります。

 これが二つ目の「遠くを見る目」です。

 どんな良い事業も“賞味期限”があります。

 社会のニーズや技術革新など、前提条件が大きく変化をすれば、取り組み自体も変わって行かなければならないのです。

 役所などでは、事業の終期を一律の期間で設定し、その都度見直しをしています。

 それも一つの方法論だとは思いますが、あまりにも機械的に行われているため、本来の役割が道半ばなのに表紙を変えたりマイナーチェンジをしたりと、あまり重要でないところにエネルギーを消耗しがちです。

 やはり、どういう状況が達成されたなら事業は終了するというように、事業本来の目的に立脚した固有の終期を導入すべきでしょう。

 また“終わった後どうするのか”ということは、“成果の波及・継承”という問題です。

 “一定の成果をあげた”という決まり文句で事業を終了させた後、その間の成果が雲散霧消するようではいけません。

 だれが次の主人公となるのか、継承の担い手となるのか、事業を“やめる時”ではなく“はじめる時”に想定していなくてはなりません。

 

3 広く見る目、振り返る目

 三つ目の視点は、「広く見る目」です。

 一つの課題解決のために、他の会社ではどうのように取り組んでいるのか、他の地方では、世界では?

 あるいはもっと近く、自社の他のセクションで同じ課題に取り組んでいるかもしれません。

 多くの先行者の良いところを拾い上げ、あるいは協力体制を敷くだけで、課題解決がずっと容易になるかもしれません。

 例えば、貴方が論文を書く場合でも、そのテーマに関する社会全体の“到達点”や“知見”を知っておく必要があります。

 地平線を知らずに、その先へ行ける人はいないのです。

西欧の風景

(「橋本先輩の人生ノート」より)

※画像は本文と特に関係がありません。

 そして、最後の視点が「振り返る目」です。

 これは、「経過を知る」こと…大きな課題の場合は「歴史を知る」ことです。

 「壁が作られた理由が分かるまでは、その壁を壊すべきでない」という箴言があります。

 白紙から物事を構築するのは自由でいいようですが、あまり効率がいいとは言えません。

 なぜなら、過去にそのテーマについて多くの有意義な議論があったかもしれないのです。

 目の前の欠陥だらけに見えるシステムも、実は、他の重大なリスクに対処するために敢えてそのようにしているのかもしれません。

 新たな改革をするためには、まず過去の経過を知らなければならないのです。

イタリア北部/マッジョーレ

(「橋本先輩の人生ノート」より)※画像は本文と特に関係がありません。

 以上、「四つの目」について私見を述べましたが、何のことはありません、これらは全て、気の利いた評価者ならば誰でも当たり前に行っている検証方法です。

 昔は仕事を行う中で、特に教わらなくても自然に身に付いた考え方でした。

 ところが最近の若い人で、このことに気づけずに大変苦労をしている姿を目の当たりにしたのです。

 僕が失敗してきた経験を伝えるだけで、そんな若い人たちの“恥ずかしい思い”を救えるかもしれません。

 貴方も部下の仕事上の誤りを指摘する際に、“過ちそのもの”ではなく、「四つの目」のどの検証視点が足りなかったのか教えてあげませんか?

 

/// end of the “その155「四つの目」” ///

 

《追伸》

 “成果主義”という考え方が金科玉条のように言われた頃、日本の多くの民間企業がこの考え方を導入しました。

 しかし、成果主義による勤務評価によって個人間の競争が煽られたために、“目下の者に仕事を教えない風潮”が広がってしまいました。

 また、自分がそのポストに在任する短い期間だけの最適な目標設定しかしないために、実現に長期を要する大きなテーマは疎んじられ、誰もチャレンジしようとしない悪弊も広がりました。

 現在では、多くの企業がこの制度を見直し始めています。

 もしかすると、昔なら自然に身に付いた“ものの見方、考え方”が若い人に備わっていない原因は、この辺にも一つの理由があるのかもしれません。

 

 では、また次の通信で・・・See you again !

西欧の風景

(「橋本先輩の人生ノート」より)

※画像は本文と特に関係がありません。

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To be continued⇒“156”coming soon!

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