そんな傷心の彼が帰国し、次に訪れたのがフィリピンでした。
“往復3万8千円”・・・これなら自分でも行ける、マニラの夕陽でも見に行こうと軽い気持ちで出かけたフィリピンで、彼の人生を大きく変える出来事が起こります。
それは、ロエナスという一人の少女との出会いでした。
ロエナスは、当時9歳くらいで、マニラの全ての生ゴミが投棄されて山になっている通称“スモーキー・マウンテン”で生活している少女でした。
悪臭が鼻を突くスモーキー・マウンテンでゴミ拾いをしている汚らしい少女から「お金を頂戴」と言われ、困った彼は「お金はあげられないけど、代わりにこれをあげる」と言って差し出したのが風船でした。
お金でも食べ物でもないそんなものをあげれば、きっと嫌われると思って差し出したのですが、彼女の反応は思わぬものでした。
「サラマーッ!(ありがとう)」と大喜びで笑顔を返してきたのです。
うれしくなって話を聞いてみると、ロエナスのお父さんは戦争で死んでしまって、おばあちゃんや兄弟たち8人で物乞いをしながら暮らしていることが分りました。
最後に、ロエナスが「私のうちに来る?」というので、彼は行ってみることにしたのです。