『楽観的な見通しで年金改革が遅れる危険』
~野口悠紀雄Online「超・整理日記」)より抜粋~
最も望ましい方策は、現在の制度はいったん清算して、「やり直す」ことである。
清算するためには、受給者に対しては、将来の受給額の現在値を一時払いする。
受給年齢に達していない人には、これまで支払った保険料の現在値を返却する。
こうした支払いを、積立金を用いて行なう。
再出発する年金制度は、基礎年金相当分だけにしてもよいし、民間の保険に依存することとしてもよい(年金については「民営化」が可能である。現在の日本で民営化の必要性が最も高いのは、年金制度である)。
問題は、こうした清算が可能かどうかだ。
この連載でもすでに述べたことがあるが、このような清算は、じつはできないのである。
現在の積立金残高では、清算には不足するのだ。不足額を一定の仮定の下で計算すると、800兆円という巨額なものになる。
これは、現在の国の長期債務残高をはるかに上回る。
このように、公的年金は、「やめられないから続けざるをえない」という恐ろしい状態にすでに陥っているのだ。 |