岸波通信その133「女心の感性」

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Present by 葉羽
「Fly me to the moon」 by Shinji Music Website
 
岸波通信その133
「女心の感性」

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  In other Words 【2018.1.22改稿】(当初配信:2006.8.11)

人類、猿類という動物学上の区分は間違いだと思う。男類、女類、猿類と言わなくちゃいけない。全然、種類が違うんだ。」

・・・太宰治

 昔、「男と女の間には、深くて暗い河がある♪」と歌ったのは、ドミニク嬢がコンサートに行ってきた美輪明宏さんです。

 “言い得て妙”とは、まさにこの事ではないでしょうか?

 毎日更新の『天衣夢縫』の読者にはお分かりのとおり、我が家でも毎日、この河の深さに嘆いているのであります。

Fly me to the moon

Fly me to the moon

 冒頭に書いた「人類、猿類・・・」の言葉は、太宰治が、自身の小説「女類」の主人公である笠井健一郎に言わせたもの。

 うむぅ・・そうだったのか、もっと早く気がついていれば。

 女は男のどんなところに不満を覚えるか?

 鈍感、のんき、人の話を聞かない、やさしくない、話をしてくれない、愛が足りない、二人の関係を大事にしない、触れあいは二の次でセックスばかりしたがる、上げた便座を下ろさない。

 ~これは、ボディ・ランゲージの世界的権威であるアラン・ピーズとバーバラ・ピーズ夫妻が著した「話を聞かない男、地図が読めない女」に書かれていることです。

 しかし、男だって女にいらいらすることがあります。

 運転がへた、標識を見落とす、地図を上下さかさまにしないと読めない、方向音痴、むだなおしゃべりが多すぎる、セックスしたくとも自分から誘わない、用がすんだあと便座を上げない。

 かくも異なる男と女…この「岸波通信」をやっていて、そのことに気付かされたのは、投稿メンバーである大阪のpecoさんの詩を読んでからです。

さよなら (SAYONARA)  by peco

 わかっていたわ、最初から

 あなたの瞳の奥に誰の姿が映っているかなんて

 気付いていたのよ ほんとはね

 心の重さが変わっていくのが悲しくて

 なんにも言えずにいたの

 大好きだったよ

 最後の言葉伝えたらこれで終わり・・・

 今年最初の雪が

 まつげで溶けて涙に変わる

 「さよなら」へジャンプ

peco's cafe別館「さよなら」>>

 僕自身も詩を書きますし、時には友人の大和伸一の立場になりきった詩を依頼されて書いたりするわけですが、さすがにpecoさんの立場にはなりきれません。

 こういう“女心”の詩というものは、やはり女性らしい女性ならではのもの。

 男たる者、こんな事を女性から言われた日には、心が揺さぶられてしまうではありませんか。

 ということで、女性の繊細な感性には、常々憧れと敬意を抱いている僕ですが、最近、男性が書いた“女心”の詩に心を揺さぶられてしまったので、ご紹介したいと思います。

 それは、友人のMIZO画伯から借り受けた「ジャズ詩大全」という本の中にありました。

 1954年にバート・ハワードという男性ピアニストが書いた“In other Words”というジャズ曲があります。

 彼は、メイベル・マーサーというジャズ・シンガーの伴奏役を務めていたのですが、彼がマーサーのために書き下ろしたこの曲は全く注目されることがありませんでした。

 しかし、この“In other Words”は、その後大化けします。

 1962年に、ジョウ・ハーネル楽団が曲名を歌詞の一部である“Fly me to the moon”に変更し、ボサノヴァ・アレンジでレコードを出すと、これが売れに売れたのです。

バート・ハワード

 そう…もうお分かりのように、この“In other Words”こそ、現代にも歌い継がれるジャズのスタンダード“Fly me to the moon”の原曲だったのです。

 以下がその英語版の歌詞です。

   Fly me to the Moon (In other words)  by Bart Howard

 Fly me to the Moon and let me play among the stars

 Let me see what spring is like on Jupiter and Mars

 In other words hold my hand

 In other words darling kiss me

 

 Fill my heart with song and let me sing forever more

 You are all I long for, all I worship and adore

 In other words please be true

 In other words I love you

 

 甘いメロディに載せたとてもロマンチックな歌詞。

 余りにも有名な曲ですが、僕は不覚にも「ジャズ詩大全」に出会うまで、歌詞の意味に注目したことがありませんでした。

 旧題にもなっている“In other Words”…直訳すると「言い換えれば」ということになるのでしょうか。

 ここでは、原詩の“気分”を表現するために、敢えて詩人葉羽流に“超訳”して日本語版をご紹介します。

   Fly me to the Moon (In other words) (訳詩:葉羽)

 私を月まで連れてって お星様の間で遊ばせて

 木星や火星の春ってどんなふうか教えてね

 ううん・・本当はね

 この手を握ってくれればそれでいいの

 つまりは キスして欲しいのよ アナタ・・・

 

 私の心を歌で一杯にして いつまでも歌わせて

 貴方こそ私が待ち望んだ全て ずっと憧れていたのだと

 ううん・・本当はね

 いっしょに居てくれればそれでいいの

 つまりは 愛してるってことよ アナタ・・・

 

 この主人公の女性、パートナーの男性のことが大好きでたまらないのです。

 できれば、今すぐにも抱きしめてキスして欲しいのですが、いかんせん“鈍い男”はその気持ちを察してくれない。

 とりあえず女性らしい慎みをもって婉曲に気持ちを伝えようとするのですが、燃え上がる気持ちを抑えきれずに本心を吐露してしまうのですね。

 同権論者に聞かれたら眉をしかめられそうですが、はっきり言って、男の99%はこういう女性らしい女性が大好きなのです。(うん、間違いない!)

 しかし…

 この詩を書いたのが、実はバート・ハワードという男性だったことを思うと、いささか複雑な気持ちになってしまいます。

 さて、残された謎は、発表された当時、まったく評価されなかった“In other words”が、どうして1962年にブレイクしたのかという事。

 実は、この当時の米国は、人類初の月面着陸を目指したアポロ計画の成功に沸き立っていたのです。

 つまりは、月に対する人類の憧れに“Fly me to the moon”というタイトルの曲が共鳴したというのが真相なのです。

 

/// end of the “その133 「女心の感性」” ///

 

《追伸》

 前出「話を聞かない男、地図が読めない女」には、“女性のおしゃべり”について、こんな話が載っています。

「女は一日に平均6000~8000語の単語を楽々としゃべり、さらに言葉にならない声や音を2000~3000回、顔の表情や頭の動きといったボディランゲージも8000~10,000回ほど出している。全部合わせると、一日平均20,000回もコミュニケーションとしての言葉を発してメッセージを伝えているのだ。あごに障害を起こす確率は、女性のほうが4倍も高いという英国医学協会の報告もうなずける。」

 うむぅ・・確かに僕の周りの女性たちは、よくしゃべるなぁ。

 ついでに、こんな小噺を・・・

 いつだったか、妻に半年間、話しかけなかったことがあったんです。

 ええー! 夫婦はもっと思いやりを持たないとだめじゃないか?!

 いや、思い遣ってのことなんです。

 なぜなら・・・

  (三秒考えて)

 彼女のおしゃべりに口を挟みたくなかったんで。

 …うん、あれも愛、これも愛、たぶん愛、きっと愛。

 

 では、また次の通信で・・・See you again !

Fly me to the moon

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To be continued⇒“134”coming soon!

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