君は、これまでの人生の中で、きっとその傷が原因で、いわれのない中傷やいじめにあったこともあるに違いない。
でも、決して、母親や兄を恨んではいけない。
君達一人ひとりの痛みや傷の責任は、僕一人が負うよ。
だけどね・・・
額の三日月傷なんて、かっこいいじゃないか。
旗本退屈男だって、愛と誠だって、それを勲章にしているんだからね。
それに、ずーっと時がたって僕くらいの歳になれば、皺と一緒になって分からなくなるんだよ。
僕の顔にも、かつて同じような傷があったことを、君だって気が付いていなかっただろう?
僕は、君と同じ年頃、顔に大ヤケドをして、右眼の腱が切れるような深い傷を負ったことがあるんだ。
ヤケドは両親や婆さんの介護と名医のおかげで跡形もなくなった。
そして、長く残っていた目じりの傷も、注意深く見なければ気が付かれないほどになった。
学校の頃は、それを隠したくて長髪にしたものだから、先生からよく注意されていたけどね。
だけど、本当の理由を言ったことはなかったよ。
僕たち二人の顔の傷は、きっと、“自分の人生を大切に生きるように”と戒めのために神様が与えてくれたんだと思う。
小さな傷を気にすることで、大きな災いに敏感になることができるからね。
だから・・・
誇りを持って生きていこう。
もしかすると、命を失っていていても不思議じゃないほどの大きな交通事故で、小さな傷を代償として命を与えられたのだから。
神様が、この世に君を生かし続けなければいけない大きな理由が、きっとあったんだよ。
そのことの意味を、君の人生をかけて考え続けて欲しいと思う。