郷里の福島市に帰った彼は、かつてコックとして修行した経験を生かし、家業の郷土料理屋(ゆず沢の茶屋)を手伝うことになった。
夢破れて大きな挫折感の中にあった彼を、故郷は温かく迎えてくれた。
間もなく、Miekoさんと知り合って結婚をする。
Miekoさんは、伸一のよき理解者であり、現在も写真展などを催すと、資料をまとめたり受付を買って出たりと、伸一の影になって本当によく支えている奥さんだ。
一度は夢を失った伸一が、彼女の明るく前向きな性格にどれだけ救われてきたかは想像に難くない。
Miekoさんは、伸一が昔撮った写真を楽しそうに自分に見せてくれる時に、時おり淋しそうな表情を垣間見せることに気が付いた。
“この人には、やはり写真が必要だ”
伸一が、自分自身、本当に撮りたいものを撮った時、その写真が限りない優しさを感じさせてくれること、涙が出るほどに素敵であること・・・。
Miekoさんの励ましで、伸一は再びカメラを手にすることを決意する。