岸波通信その119「NHKの憂鬱」

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岸波通信その119
「NHKの憂鬱」

1 納得のいかない受信料制度

2 無料新聞(フリーペーパー)

3 通信と放送の融合

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  The Depression of NHK 【2018.1.28改稿】(当初配信:2005.3.27)

大規模地震や台風など緊急時をはじめとした信頼性の高いニュース、人々の心や暮らしを豊かにする質の高い番組、障害のある方や高齢者の方に向けたきめ細かな放送サービス」
  ・・・NHKの主張

 最近、NHKの受信料支払いを拒否したいと思い詰めています。

 というのも、別に一連のNHK不祥事に怒りを感じているからではなく、最近は自宅でテレビ自体を見る機会がほとんどないからです。

 新聞もまた同様で、ニュースはほとんどネットで見ていますので、職場に行ってから地方紙のトピックスや慶弔を眺める程度。

 数年来の高速インターネットの普及は、既成のメディアにや個人のライフスタイルに間違いなく大きな変化を及ぼしていると言えそうです。

NHK東京放送センター

 こうした状況は、米国でも同様のようで、先日のワシントンポストの記事によれば、インターネットのニュース配信との競争で、米国における新聞の売れ行きも下降の一途をたどっているという事です。

 1960年代の終わり頃には、18歳以上の米国人の76%が新聞を定期購読していたのに、現在では53%にまで落ち込んでしまったのです。

 さて、NHK・・・

 その営業を支える“受信料制度”は大きな曲がり角に差し掛かっているのかもしれません。

 ということで、久々の配信となる“本格”岸波通信、今回のテーマは“受信料制度”についてです。

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1 納得のいかない受信料制度

 一連の不祥事によるNHKの受信料支払い拒否は、3月末で70万件にものぼる見通しです。

 NHKでは、先に編成した平成17年度予算で受信料収入の減を72億円と見込んで編成しましたが、70万件の支払い拒否が現実のものになると、さらに40億円もの収入が不足するという非常事態が避けられません。

 これに対しNHKは、顧問・参与制度を今月31日で廃止し、菅野洋史元副会長ら現在の顧問4人は全員退任させると発表しました。

 しかし、果たしてこの程度の措置で、失った国民の信頼を取り戻し、受信料不払いに歯止めをかけることができるのでしょうか?

NHKの予算審議中の衆議院総務委員会

 ところで、この受信料・・・納得がいかないと思いませんか?

 というのも、「放送法」の規定によって、NHK放送を見ようが見まいが、テレビ受像機を持っているという理由だけでNHK受信契約の締結義務が課せられてしまうからです。

 もちろん僕は、昔から受信料を口座引き落とししている模範視聴者ですが、ある時、本気で"払いたくない"と考えたことがあります。

 なぜなら、会津に単身赴任してアパートに入った際、受像機やアンテナの状態でも悪いせいか、どうしてもNHKだけが入らなかったからです。

←(これはよくあることのようで、何人かの先輩からも同じ話を聞きました。)daddy

 NHKを見ることができないにもかかわらず受信料を支払わなくてはならない・・・こんな不合理なことがあるでしょうか?

 こうした疑問に対し、NHKはサイトで以下のように解説しています。

(NHKインターネット営業センター)

 放送法第32条第1項には「NHKの放送を受信できる受信機を設置した者は、NHKと受信契約をしなければならない」と定められています。したがって、テレビをお備えであればNHKを見る見ないにかかわらず、受信料をお支払いいただくことになります。

 では、NHKはなぜ受信料を財源としているのでしょうか。
大規模地震や台風など緊急時をはじめとした信頼性の高いニュース、人々の心や暮らしを豊かにする質の高い番組、障害のある方や高齢者の方に向けたきめ細かな放送サービスなど、テレビやラジオの放送を通じて国民の生命・財産を守り、公共の福祉、文化の向上に貢献することが、公共放送・NHKの基本的使命です。受信料は、NHKが事業を行っていくための公的負担金なのです。

 NHKが公平・公正な立場で放送の自主性を保ちながら、その基本的使命を果たすためには、政府や企業などの特定のスポンサーに頼ることのない「財政の自立」が必要です。このため放送法では、NHKがコマーシャルを行うことを禁止し、受信料で運営することを決めました。テレビをお持ちのすべての方に公平に負担していただく受信料によって、財政面での自主性が保障され、放送の自主性を保ちながら基本的使命を果たすことが可能になります。

 この受信料制度があるからこそ、NHKは視聴率や特定の勢力の影響にとらわれることなく、視聴者の要望にこたえることを唯一の指針とした番組作りができるのです。

 ふむぅ・・・一見すると当たり前に聞こえますが、「質の高い番組づくりをするための公的負担」が、なぜ利用しない(もしくはできない)場合でも課されるのか理解できません。

 たしかに、放送法ができた50年ほど前の時代ならば、放送局がNHKしか無かったのですから、テレビを所有することでイコール受信料負担ということは妥当性があったと思いますが、現在の状況は全く違うではありませんか?

 そして、もう一つの理由・・・「特定のスポンサーに頼らないことで放送の自主性を保てる」~裏返せば「広告を取ると放送の自主性が阻害される」ということになろうと思いますが、これは果たして本当でしょうか?

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2 無料新聞(フリーペーパー)

 広告収入に頼っている民放では、たしかに番組内で他社製品の名前を言っていけないなどのタブーがありますが、番組制作にまで関与するわけではないと思います。

 広告スポンサーにとって大事なのは視聴率・・・言い換えれば、いかに効率よく多数の消費者に広報できるかという一点です。

 とすれば、“放送の自主性が阻害される”ケースとはすなわち、視聴率を取れない番組は作りたくても作れないという意味に解せます。

 しかし、マーケティングは営業の基本。

 もちろん、現在のように、刺激性を安易に追及するばかりで個性の無い番組づくりをしている民放を擁護するつもりはありませんが、本当の意味で視聴者に支持される良質な番組を作れば、視聴率にも跳ね返り、スポンサーがつくはずです。

 また、この点、他のメディアではどうなのか?

 放送と並ぶ公共のメディアとして新聞がありますが、新聞は購読料を徴収しますが広告も載せています。

 しかも、その広告料のウェイトというのは思いのほか高く、財源の半分近くを占めているのです。

 欧米の場合だと更に高くなり、平均して8割程度が広告収入によって賄われています。

 さらに驚くべきことに・・・

 米国では近年、無料の新聞(フリーペーパー)まで登場しています。

 例えば、ワシントンDCで最近発行されるようになった「The Examiner」やワシントン・ポストの無料タブロイド版「EXPRESS」がそれです。

The Examinerのサイト

 そもそも販売収入が2割しかありませんから、広告の営業をちょっと頑張ることによって無料化できたのです。

 これらのフリーペーパーは、何せ無料なわけですから、どんどん配布部数を伸ばしています。

 そして、広告単価は発行部数に対応してスライドしますので、新聞を無料でどんどん配ることによって、広告収入も増えていくというわけです。

 しかし、広告収入に頼っているからといって、新聞の記事が中立性・自主性を欠いているという話は聞いたことがありません。

 たとえ記事の政治的スタンスが偏向していることがあったとしても、それは広告のせいではないでしょう。

 このように、テレビの民放でも新聞マスメディアにしても、広告と放送・報道の自主性とは、決して相容れないものではないのです。

 ましてや、NHKが主張する「大規模地震や台風など緊急時をはじめとした信頼性の高いニュース、人々の心や暮らしを豊かにする質の高い番組、障害のある方や高齢者の方に向けたきめ細かな放送サービス」に至っては、マスメディアの基本的使命であって、NHKひとりのものでないことは言うまでもありません。

 では、放送が受信料や広告以外の収入の道を探ることはできないのでしょうか?

 実は“いい方法”があるのです・・・。

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3 通信と放送の融合

 みなさん、考えてみて下さい。

 例えば、NHKの「プロジェクトX」や「その時、歴史が動いた」というような番組の場合、自分の時間があるときに自由にリクエストして見たいと思いませんか?

 これが放送というメディアである限りは、放映時間に合わせてテレビのリモコンを点けるか、さもなければビデオに収録してから見直すしかありません。

 しかし、高速インターネットが普及した今の日本ならば、番組のバックナンバーをインターネット上のサーバにおいて置き、パソコンからアクセスして閲覧することだって可能です。

←(いわゆるビデオ・オン・デマンド方式というやつだね。)daddy

 この方法が優れているのは、利用者の利便性やニーズに合致していることばかりでなく、歌謡曲の試聴などで既に定着しているようにダウンロードを「有料化」できる可能性があることです。

 もちろん、利用料金は廉価に抑えなくてはなりませんが、人手を介さない分だけレンタルビデオよりも安く設定できるわけですし、第一、利用者にとっては、大量のビデオやDVDに部屋のスペースを占領されると言うことから解放されるという大きなメリットもあるのです。

 似たような方法に、多チャンネルの衛星放送がありますが、例えば映画専門チャンネルの場合、見ても見なくても別契約で料金を支払わなければなりませんので、必要に応じて利用できるビデオ・オン・デマンド方式の方がリーズナブルだと思います。

 ところが・・・

 現在のテレビ局のスタンスは、インターネットに番組コンテンツを開放することに消極的で、むしろ規制や囲い込みをしているのが現状です。

 その理由は単純なものです。

 民放の場合なら、ネットに放送と同じコンテンツを流せば、それだけテレビの視聴率が減ってしまうと考えているからです。

 また、NHKの場合なら、テレビを使わずにパソコンで番組を見る視聴者が増えると、「放送法」がネックとなって受信料の徴収に支障をきたす可能性があるからです。

 早い話が、放送の側からは、通信(インターネット)は“敵性メディア”なのです。

 こうした現状は、一般の利用者にとって極めて不幸なことだと思います。

 政府の“e-JAPAN戦略”がスタートしてから5年・・・わが国の高速インターネットの普及がようやく世界最先端の水準になったというのに、"放送"の世界は、意識も制度も旧態依然としたままです。

フジテレビ本社

 しかし・・・こうした壁を打ち破り、"通信と放送の融合"を民間から唱える人物がようやく現れました。

 いわずと知れたライブドアの堀江社長です。

 彼にとって、放送メディアのM&Aは単なる手段でしかなく、目標としているところは、放送と通信がお互いの長所を活用しながら番組コンテンツを共有するという“通信と放送の融合”理念です。

 それにもかかわらず、昨今のマスメディアの報道は、ライブドアによる企業乗っ取りが成功するかどうかという、極めて表面的な部分にとどまっています。

 ということで僕は、一利用者の立場から、風雲児ホリエモンに大きなエールを送りたいと考えています・・・。

(注:NHKのような公共放送でフランス、イタリア、ドイツは広告収入を得ている。イギリスは広告を取らないが、そもそも国営放送。また、米国にはNHKのような立場の公共放送はない。)

 

///end of the “その119「NHKの憂鬱」” ///

 

《追伸》

 先だっての職場の嘱託員採用面接で失敗したと思うところがあります。

 職員の採用面接では、“一般常識”として最近の時事ニュースに関心を持っているかどうかを尋ねたりします。

 そこで、今回も面接委員のYさんから「最近、興味のある時事問題」について質問をしてもらったのですが・・・。

 何と、質問をされた者全てが“ライブドアとフジテレビの諍い”ですという同じ答えで、質問をした意味がまったくありませんでした!

 考えてみれば、いま時、どこのテレビ局でもニュースショーは“金太郎飴”。

 どこのチャンネルを選んでもホリエモンしか写っていないワケで、単に“最近テレビを見ましたか?”という質問をしたのと同じですからぁ~・・・切腹っ!

 では、また次の通信で・・・See you again !

 

《追記》2018.2.12

 ネットでの受信料の件が最高裁で合法決着付きましたね。

 これまで払ってこなかったみなさん、慌てて駆け込み払いをしているのがニュースになりました。

 で、よく考えてみると、NHKの番組も悪いところばかりじゃないと。

 僕の場合、紅白は必ず見るし、朝の連ドラも見てるし、オリンピックもNHKのが安心して見れる。あとまあ・・・選挙速報なんかも。(いや、池上さんの方がいいかな?)

 それに、これまで一度たりとも滞納せず(忸怩たる思いながらも)キチンと払い続けた僕としては、今さら不払いオッケーですよと言われても、過去の支払いが返ってくるわけでもないし、「もうこのへんで勘弁してやろうか」という境地に至っております(笑)

 

 では、また次の通信で・・・See you again !

ホリエモン

ホリエモン

(虚構新聞)

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To be continued⇒“120”coming soon!

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