岸波通信その107「人類の叡智に学ぶ3」

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Present by 葉羽
「KIND」 by Music Material
 

岸波通信その107
「人類の叡智に学ぶ3」

1 虹のトリヴィア

2 灰色の脳細胞

3 ニュートン&アインシュタインの名言アラカルト

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  Learns from Intelligence of the mankind 3 【2018.3.23改稿】(当初配信:2004.5.8)

「人間の邪悪な心を変えるより、プルトニウムの性質を変えるほうがやさしい。」
  ・・・アインシュタイン
 こんにちは。「健全なる精神は健全なる肉体に宿る。」…昔、この名言を教師から聞いた時に、複雑な想いに捉われました。

 だってそうですね、障害を持って生まれたり、身体が弱い子供たちは、みな不良だっていうような言葉ですからね。

 だから、ユニバーサル・デザインの価値観が浸透してきた今の世の中、この言葉はむしろ誤った価値観の例として取り上げられることが多くなりました。

 しかし…それは“誤訳”だったのです。

国会議事堂

(ロンドン)

←今回のギャラリーはニュートンに ちなんで、
英国テイストです。

 この言葉は、ローマ時代の詩人ユウェナリウスが言ったもの。その正確な訳は・・・

「こう願うがよい。健全な身体に健全な心を宿らせてくれと。」

 …こういうものだったのです。

 誤っていたのは、ユウェナリウスではありませんでした。

 僕たちは、しばしば一つの理念や人物の振る舞いに欠陥を見つけると、あたかもそれが、もともと無価値であったかのように、その理念や人物を攻撃し、貶めてしまうことがあるのではないでしょうか?

 言葉は生き物・・・。

 その語られた時代背景や状況の中で、何故、人々の共感を得ることができたのか、その本質を見極め、理解しなければならないと思います。

 ユウェナリウスはむしろ、障害者など社会的弱者の立場に立って、健全な肉体に恵まれた人にこそ健全な精神が宿って欲しいと願ったのではないでしょうか?

 さて、“誤解”とはまた別の話ですが、世の中には、知っているようで実はよく知らないということが、まま有るのです。

 今回の「人類の叡智」は、そんな物理学の巨人…英国のニュートンに焦点を当ててみたいと思います。

 ということで、「人類の叡智に学ぶ3」は少々趣向を凝らして、トリヴィア仕立てでお届けしたいと思います。

オックスフォード


 

1 虹のトリヴィア

   虹が七色であることを発見したのは……ニュートンである。

 アイザック・ニュートンといえば、古典力学(ニュートン力学)の創始者、「万有引力」の発見者として有名ですが、彼は“虹の七色”を世に知らしめた人物でもあるのです。

 でも、もともと虹の色は連続して変化していますから、別に七色と捉える必要はなかったはずです。

 ある日ニュートンは、プリズムを使って太陽光線のスペクトル分析をしていた時に、いったい太陽光線の構成色はいくつあるのだろうという疑問が浮かびました。

 そこで彼は、鋭敏な識別感覚を持った助手に、プリズムの虹の境目に線を引かせてみたのです。

 その助手が引いた境界線は8本。

 両端もあるので、帯としては7つ。こうして、“虹は七色”と言われるようになったのです。

 しかし・・・

 そこで終わらないのがニュートンの偉いところ。

 今度は、その八本の線の幅を測ってその比を求めてみたところ、“何かに似ている”ことに気が付いたのです。

   虹の七色の波長は……ドレミの音階に対応している。

 いろいろと調査をしてみますと、どうやらその波長は、音の世界で出会ったことがある…。

 虹の7色の波長の比率は、実は、1オクターブのド、レ、ミ、ファ…を表す各音の波長とほぼ一致したのです。

 何という自然界の不思議!

 虹を七色と感じるのも、音階を美しいと感じるのも、所詮は人間の感覚の問題。

 何故かこの自然界には、人間の感覚と共鳴する様々な謎が潜んでいるようです。

daddy(そういえば、“黄金分割”を美しいと感じる感覚も不思議です。)

アイザック・ニュートン

アイザック・ニュートン

(古典力学の祖)


 ところで、雨上がりの空を彩る虹は、その美しい姿で我々の心を癒してくれます。

 でも、虹のアーチのたもと…儚げで頼りない足元の“更に先”はどうなっているのかご存知ですか?

「そこで終わりに決まっている」 だろうって?

 実は、そこで終わりではないのです。

   虹の完全形は……真円である。

 我々は地上に立って虹を見ることが殆どですから、地平線に邪魔されて残りの部分を見る機会に恵まれません。

 ところが、楠田枝理子さんの「ロマンサイエンス」によれば、“もしも人間が中空に自由に静止できるのであれば、雨上がりの太陽と反対方向に丸い虹が見えることがある”ということが述べられていました。

 真円の虹・・・究極のファンタスティック!

 そして、その“真円の虹”を、僕は見たことがあるのです!

真円の虹

真円の虹

←太陽の側に見えることもある。
中央は、太陽を隠した板。
(とても珍しい写真。)
※これのみ英国ではない。

 それは10年ほど前、飛行機でシンガポールに向かう途中。

 雨の中飛び立った飛行機が、高度を上昇させて最初の雨雲の層を突き抜けた時、上空に太陽が見え始めました。

 更に上空にも別の雨雲の層があり、飛行機の周りは霧雨状態。

 ふと下を見下ろすと、下層の雲の絨毯の表面に“真円の虹”が見えるではありませんか!

 虹の輪は飛行機が高度を増すにつれてどんどん大きさを変えていきましたが、おそらく、太陽と飛行機と雲のスクリーンの距離に関係した現象だったのでしょう。

 千載一遇のチャンスを与えてくれた神様に思わず感謝したくなるような出来事でした。

テムズ川

(ロンドン)


daddyねぇ、アレックス。僕は飛行機から丸い虹を見たことがあるんだけど、元キャビン・アテンダントのキミならそういう経験は多いんじゃない?

アレックスいいえダディ、一度も経験無くってよ。

daddyえっ、そなの? 飛行機に搭乗するのが仕事だよね?

アレックスだって、スチュワーデスが窓に顔をくっ付けて、下の方を見てたらヘンでしょ。

daddy・・・・・・! (シツレイしましたぁ。)

 

2 灰色の脳細胞

 次はニュートンの名言から。

 天体の運動はいくらでも計算できるが、人の気持ちはとても計算できない。

〔ニュートン〕

 そして、こちらがアインシュタイン。

 人間の邪悪な心を変えるより、プルトニウムの性質を変えるほうがやさしい。

〔アインシュタイン〕

 二人の天才物理学者が、期せずして同じような言葉を残しています。

 人間の脳細胞が紡ぎだす感情という名の不思議な力…ニュートンもアインシュタインも、こと人間の心ばかりは測り知れなかったようです。

 “脳細胞”と言えば、今年3月の上旬、NHKで「名探偵ポワロ」のスペシャルをやっていました。

 エルキュール・ポワロは、英国のアガサ・クリスティが生み出した幾多の名探偵の代表格…彼は“灰色の脳細胞で考える”と言われていましたね。

「名探偵ポワロ」スペシャル

「名探偵ポワロ」スペシャル

(NHK)

 ところで、この“灰色の脳細胞”・・・いくつくらいあるのかご存知ですか?

 正確には調査されていませんが、おおよそ数千億個であろうと言われています。

 まさに、人間の精神世界が“インナースペース(内なる宇宙)”と呼ばれる所以です。

 でも、話はここから。

 人間の細胞は一般に、新陳代謝によって生まれ変わりますが、この脳細胞だけは、死滅する一方なのです。

 では、どのくらいのスピードで死滅するかと言うと・・・

   ヒトの脳細胞は、毎日……約10万個が死滅している。

 どうです、少し恐ろしくなったでしょう?

 最近、物忘れが激しくなったアナタ・・・そう、そこのアナタ!

 もう、かなり死滅しているのかも知れませんよ(笑)

 さて、こんなにどんどん無くなっていく我々の脳細胞…逆に考えれば、赤ちゃんの時に一番多かったことになります。

 本当にそうなのでしょうか?

 実はその通りで、人間は生まれた時に、既に大人と同じくらい(本当はもっと多い!)の脳細胞を備えて誕生するのです。

 ならば僕も、ニュートンと同じように、その先を考えてみようと思い、胎児の脳細胞について調べてみました。

 すると・・・

   ヒトの胎児の脳細胞は、生まれた後より……3倍も多い。

 これは凄いことです。

 何故、胎内にいる段階で、これほど多くの脳細胞を必要としているのか、科学はまだ解明していません。

 胎児というのは、人間がプランクトンから進化してきたあらゆる形にメタモルフォーゼしながら成長すると言われますので、もしかすると、地球上に誕生して以来のあらゆる生命段階の記憶をDNA情報からスキャンしているのかも知れません。

 このことと、脳細胞の死滅を考え合わせると、胎児の脳細胞形成がいったんピークに達した後は、恐ろしいスピードで死滅を開始することになります。

 何故ならば、ヒトが一生かかっても使い切れない数千億の脳細胞の、その二倍もある部分が10月10日(本当はもっと短い!)の間に死滅することになるのですから!

daddy(計算すると、一日に約1億個のスピードで死滅していることになります。)

「名探偵ポワロ」スペシャル

「名探偵ポワロ」スペシャル

←英国の雰囲気がよく出てる!


 最後に、この灰色の脳細胞に関して、もう一つ不思議なメカニズムがあることが知られています。

 人間が幼児期の記憶を辿ると、4歳から後の記憶は思い出すことができますが、それ以前の記憶は残されていないのが普通です。

 これには、れっきとした理由があるのです。

   3歳くらいから、ヒトの脳の中には……記憶を消去する物質が生成される。

 以前、テレビで見た実験で、3歳くらいの子供に“お母さんの胎内にいた時の記憶”を尋ねると、どんな音が聞こえていたとか、暖かかったとか答えるのを見たことがあります。

 この時点では、まだ、胎児期の記憶さえ、残されているのです。

daddy(なので、“胎教”が役に立つというのは本当なのでしょう。)

 しかし、3歳を境に、乳幼児期や胎児期の記憶情報がデリートされて行く…いったい何故?

 これについても、現代の脳生理学はまだ結論を得ていません。

 もしかして・・・

 多くの忘却なくしては人生は暮らしていけない。

〔バルザック「断片」〕

 というくらいに、ツライ思い出なのかもしれませんね…原始生命体からヒトになるまでの記憶というのは。

ウィンザー城

daddyというわけさ、ジェイク。(最近、レスが少ないけど…)

ジェイクふーん、人間の機能って凄いですねぇ。

daddy最初のニュートンの虹の話は知ってた?

ジェイクいいえ、ニュートンって言えば、やはり林檎と万有引力の話くらい。でも、万有引力って・・・

daddyん?

ジェイク歳とると、だんだん引力が憎くなってきますよね!

daddyええ~! (身体重いのかよ!)

 

3 ニュートン&アインシュタインの名言アラカルト

 では、最後に、二人の物理学者の名言アラカルトを。

 最初はアインシュタインから。

 熱いストーブの上に一分間手を載せてみてください。まるで一時間ぐらいに感じられるでしょう。

 ところがかわいい女の子と一緒に一時間座っていても、一分間ぐらいにしか感じられない。

 それが相対性というものです。

〔アインシュタイン〕

 何て、分かりやすい「相対性理論解説」だろう!

 次はニュートンの言葉で最も有名な至言。

 私は、海岸で遊んでいる子供のようなもの。

 ときに、なめらかな小石を見つけたり、きれいな貝を見つけたりして、はしゃいでいる存在に過ぎない。

 まだまだ発見されることの多い大きな海を目の前にして…

〔ニュートン〕

 僕は、この言葉は、謙虚に語ったというよりは、ニュートン自身の“くやしさ”を込めた実感だったろうと想像します。

 彼の時代にはまだ、果てしない宇宙の彼方にまで人類の観測が及んでいなかったのですから。

 人は海のようなものである。あるときは穏やかで友好的。あるときはしけて、悪意に満ちている。

  ここで知っておかなければならないのは、人間もほとんどが水で構成されているということです。

〔アインシュタイン〕

 ん? アインシュタインは結構、皮肉屋の面もあったのかな?

 もし私が価値のある発見をしたとすれば、それは才能があったからというよりも、辛抱強く注意を払っていたからだ。

〔ニュートン〕

 こうして、ニュートンの言葉を並べてみると、彼は非常に生真面目な性格であったように思えます。

 ニュートンは確かに“努力の天才”と言えるでしょう。

 空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。

〔アインシュタイン「科学について」〕

 知識というのは、単なる材料にしか過ぎないのでしょう。

 確かにイマジネーションなくしては、新しいものなど創造できないのですから・・・。

 今日為し得るだけの事に全力を尽くせ、しからば明日は一段の進歩があろう。

〔ニュートン〕

 ほらね・・・生真面目でしょう?

 学校で学んだことを一切忘れてしまった時になお残っているもの、それこそ教育だ。

〔アインシュタイン「教育について」〕

 ところで、この二人の天才には、一つの共通点がありました。

 これは、あまりに有名な話ですが、二人とも学校に行くことが大嫌い、つまり・・・

 オチこぼれだったのです!

 そういう著名人は数多く…ちょっと思いつくだけでも、シェイクスピア、ダーウィン、ダ・ヴィンチ、エジソン、ルイス・キャロルも、そういえば英国のチャーチルもそうだったと言います。

 ニュートンについては、“数学や物理学が嫌いだったから、理学部に進まず文学部に進んだ”と言われていますが、どうもこの決め付けは正しくなかったようです。

グリニッチ旧王立天文台

グリニッチ旧王立天文台

←ニュートンは、この天文台の 監察委員長に就任。

 これは、ニュートンが文学修士(マスター・オブ・アーツ)であったことから、そういう誤解が生まれたようですが、そもそも彼の時代に「理学部」などというものは存在していなかったのです。

 何故ならば、ニュートン自身が「理学」の基礎となる古典物理学の体系を創ったその人であったからです。

 しかし、それにもかかわらず、やはりニュートンはオチこぼれでした。それは、「農夫」としてです。

 長男であった彼は、生まれる前に農夫の父親を亡くしており、母親は当然に農夫として後を継がせる考えでいました。

 ところが彼は、農場に出ては本を読んだり、林檎の木をじっと見つめて物思いに耽ったりと、畑仕事が全然手に付かなかったのです。

 しかたなく母親と叔父は、このダメな息子を上の学校に進ませ、やがて物理学の天才が誕生することになるのです。

 実に素敵な“オチこぼれ”の話ではありませんか!

「学校になんか行ってらんねーよ、あんなクダラネーとこ!」

 初めて息子と激しい言い争いになった。

 登校拒否をし始めてから半年近くにもなる。もう我慢の限界だ。

 何を言っても埒が明かないと思い、とにかく表に連れ出した。これ以上、妻に心労をかけるのはイヤだった。

「拓郎、いいから黙って付いてきてくれ。」

 私は、頼むように言いながら、文房具屋に連れて行き、一枚の色紙と筆を買った。筆など使ったことはない。でも、これでなくてはならない・・・そう思った。

 家に戻って、息子の部屋に一緒に入ると、息子は訝しげにしていたが、何が始まるのかと固唾を呑んでいた。

 私は、決して上手ではないが、心を込めてゆっくりと色紙の上に筆を滑らせた。

    野に花。

    人に心。

    君に志の有りや無しや。

 ・・・取って置きの言葉だ。

 かつて人生に挫折をし、命さえ投げ出そうかと考えた時に、私を救ってくれた言葉だ。 

 息子は黙って見ていた・・・。

 

 次の朝、

 そのつたない色紙は、息子の部屋の壁に飾られていた。

 10年前に書いた「日記」から。

 

/// end of the “その107「人類の叡智に学ぶ3」” ///

 

《追伸》

 ちょっと斬新な組み立てで、「人類の叡智」を書いてみました。

 サイエンス色が強い内容なので、始めはanother world.「ロマンサイエンス編」で書こうかとも思いましたが、香川県のfujikoさんにチャットで相談したら、fujikoさんいわく・・・

「叡智で書いた方が、エー智恵が浮かぶのでは?」

 と言われ、シャレに気がつくまで、少し間が空いてしまいました(笑)

 ちなみに、長男拓郎は心を入れ替えて勉強し、大学を出て今はとても頼りになる息子に成長しました。

 

 では、また次の通信で・・・See you again !

ニュートンの林檎の木に咲いた花

実在するニュートンの林檎の木

←英国から送られたニュートンの林檎の木を
接木して増やしたもの。
長野県大町市エネ ルギー博物館にある。

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To be continued⇒“108”coming soon!

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【岸波通信その107「人類の叡智に学ぶ3」】2018.3.24UP

 

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