「学校になんか行ってらんねーよ、あんなクダラネーとこ!」
初めて息子と激しい言い争いになった。
登校拒否をし始めてから半年近くにもなる。もう我慢の限界だ。
何を言っても埒が明かないと思い、とにかく表に連れ出した。これ以上、妻に心労をかけるのはイヤだった。
「拓郎、いいから黙って付いてきてくれ。」
私は、頼むように言いながら、文房具屋に連れて行き、一枚の色紙と筆を買った。筆など使ったことはない。でも、これでなくてはならない・・・そう思った。
家に戻って、息子の部屋に一緒に入ると、息子は訝しげにしていたが、何が始まるのかと固唾を呑んでいた。
私は、決して上手ではないが、心を込めてゆっくりと色紙の上に筆を滑らせた。
野に花。
人に心。
君に志の有りや無しや。
・・・取って置きの言葉だ。
かつて人生に挫折をし、命さえ投げ出そうかと考えた時に、私を救ってくれた言葉だ。
息子は黙って見ていた・・・。
次の朝、
そのつたない色紙は、息子の部屋の壁に飾られていた。 |