エロスの“恋の矢”に射抜かれたスミュルナは、たちまち父への愛の虜となりました。
しかし彼女は、もともと良識のある娘。自分自身を突き動かす人道に外れた恥ずべき情動から逃れるため、ついには自殺を試みます。
これをすんでのところで止めたのが、スミュルナを手塩にかけて育ててきた乳母でした。
乳母がワケを問いただしますが、スミュルナは号泣するのみ…。やがて重い口を開いたスミュルナから打ち明けられた話は、とうてい信じられないことでした。
しかし‥‥‥
スミュルナから苦しい胸の裡を告げられて、ついに心を動かされた乳母は、地獄に落ちる覚悟で禁断の恋を手引きする決心をするのです。
祭りの夜、乳母は酩酊して寝所に入った王に向かい…
「王様、この娘はワケあって素性は明かせませぬが、是非とも王様の情けをいただきたく参っている者。一夜だけでもその願いを叶えてやってくださいませ。」
目くるめく夜は過ぎ、二人の情恋の炎は熱く燃え上がる…。
一夜の約束が二夜、三夜を重ね、やがて十二夜を迎える頃、キニュラス王はどうしても娘の顔が見たくなりました。
(スミュルナの運命や如何に!?)