◆『ダイアン・キートンを名女優にした社会派映画「ミスター・グッドバーを探して」』・・・カリスマ彰
TV放映された映画「ミスター・グッドバーを探して」(1977年 リチャード・ブルックス監督 2時間15分)を録画して見た。見た記憶があったが、予告編を見て見た気になっていただけのようだ。
実際にあった事件をもとにジュディス・ロスナーが小説化してベストセラーになったものを映画化した映画で、自立した女たちのライフスタイルのダークサイドを実に見事に描いている。
聾唖学校教師をしている女性(ダイアン・キートン)が一人暮らししているアパート近隣のバーで男漁りをして自宅に引き入れSEXを楽しんでいる生態をかなり克明に描写。45年前の作品だが、結局こうしたジキル&ハイド的人間存在の二重性は永遠のテーマだということが分かる。

聾唖学校のこんなに生徒思いの立派な先生が、こんな自堕落な生活をするなんて脚本が不自然だと言っても、「実際にあった話」なんだからという反論には逆らえない。
ダイアン・キートンはウッディ・アレンのアイロニカルなコメディ作品への出演が多かったので、違和感がないでもないがやはり一種の寂寥感を漂わせた見事な演技と言えるだろう。

酒場で言いよる男役にリチャード・ギア
さらに主人公の姉(チューズデイ・ウェルド)の奔放なセックスライフは、1970年代後半のパワフルなフリーセックスの時代を表現しているが、これが1980年代のエイズの跳梁跋扈に繋がっているのではないか。

当時31歳のダイアン・キートンがヌードもいとわぬ体当たり演技を見せた
キートンは、1977年ウッディ・アレン監督の「アニー・ホール」でアカデミー賞主演女優賞を受賞、この「ミスター・グッドバーを探して」のシリアスな社会派作品の演技と合わせて完全に名女優の地位を確定した。

この映画公開の20年後の1997年、渋谷の円山町で東電OL殺人事件があった。慶大経済学部を卒業したエリートOLが夜は売春婦をしていて殺された事件だが、まさに「ミスター・グッドバーを探して」の日本版の事件でネパール人が逮捕され懲役判決を受けて刑務所に収監されたが、後に冤罪の認定を受け無罪釈放された。
いろいろな意味で、「ミスター・グッドバーを探して」は、アメリカのサブカルチャー史においては重要なマイルストーンになった作品と言えるのではないだろうか。 |