こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
「アンナチュラル」「MIU404」と繋がる
シェアード・ユニバース・ムービー
昨年8月に公開された監督:塚原あゆ子&脚本:野木亜紀子という当代サスペンスの黄金コンビによる『ラストマイル』をAmaプラで視聴しました。(二回も!)
この作品は同じコンビによるTBS系ヒットドラマ『アンナチュラル』や『MIU404』と世界観を共有するシェアード・ユニバース・ムービー。
したがって、両作品の主要なキャストたちもカメオ出演のような形で登場します。
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ラストマイル
(C)2024「ラストマイル」製作委員会 |
「ラストマイル」とは、物流において最終拠点からエンドユーザーへのラストワンマイルを担う配送サービルのこと。
巨大な物流センターを背景に投身自殺未遂事件から市民を巻き込む連続爆弾テロ事件へと・・その恐怖に社会が震撼。さて、その内容は?

あなたは、この“世界”を止められるか。
映画の冒頭、11月のブラックフライデーを目前に、アメリカに本社を持つ世界最大のショッピングサイト・DAILY FAST(デイリーファスト、略称:デリファス)の日本配送センターのマネージャー梨本孔(岡田将生)は気合を入れていた。
そんな時、ふと目に留まったのは、心を病んで自殺未遂を図り現在は植物人間となった前の上司、山崎 佑センター長(中村倫也)のロッカー。
そのロッカーの中には、「2.7m/s 70kg →0」という謎の落書きが残されている。
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ラストマイル
(C)2024「ラストマイル」製作委員会
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場面転換して、デリファスの配送にほぼ依存している配送業者「羊急便」のドライバーである佐野 昭(火野正平)と亘(宇野祥平)の親子ドライバーがデリファスの荷物をとあるアパートの一室に配達を完了する。
佐野親子が階段を降りてトラックへ戻ろうとしたその刹那、荷物を届けた部屋で爆発が起き、辺りは火の海に。
これを皮切りに、都内ではデリファスの配送物の爆発が相次ぎ、多くの市民が犠牲となる。
爆発するアパート
時を同じくして、新センター長の舟渡エリナ(満島ひかり)が福岡から着任。エリナと孔(岡田将生)は、莫大な損害への対応に大わらわ。
そんな時、エリナはネット上に「DAILY FAUST」という偽アカウントが「1ダースの爆弾をプレゼントする」と書かれた投稿を発見。
偽アカウントを発見
しかしエリナは、アメリカ本社の株価への影響を懸念し、しばらく情報を伏せると決断。孔は不信感を募らせる。
やがて、偽投稿の主は自殺未遂を図って植物人間となっていた前センター長山崎 佑(中村倫也)であることが判明。
前センター長(中村倫也)
警察が彼のアパートに踏み込むももぬけの殻。それもそのはず、投稿された日に山崎は植物状態のまま病院に居たからだ。
さて、山崎の名を騙る連続爆破テロの真犯人とは誰か、そして何のために? はたまた未発見の爆弾配送物の行方や如何に!?
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ラストマイル
(C)2024「ラストマイル」製作委員会
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この後のあらすじや映画の概要は以下の通り。
◆『ラストマイル』(2024年)のあらすじと概要(映画.comによる)
テレビドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の監督・塚原あゆ子と脚本家・野木亜紀子が再タッグを組み、両シリーズと同じ世界線で起きた連続爆破事件の行方を描いたサスペンス映画。
流通業界最大のイベントである11月のブラックフライデー前夜、世界規模のショッピングサイトの関東センターから配送された段ボール箱が爆発する事件が発生し、やがて日本中を恐怖に陥れる連続爆破事件へと発展する。関東センター長に着任したばかりの舟渡エレナは、チームマネージャーの梨本孔とともに事態の収拾にあたるが……。

主人公・舟渡エレナを満島ひかり、梨本孔を岡田将生が演じ、事件に巻き込まれる関係者役で阿部サダヲとディーン・フジオカ、捜査を担当する刑事役で「アンナチュラル」の大倉孝二と「MIU404」の酒向芳が出演。さらに「アンナチュラル」から三澄ミコト役の石原さとみ、中堂系役の井浦新、久部六郎役の窪田正孝ら、「MIU404」から伊吹藍役の綾野剛、志摩一未役の星野源らが再結集する。主題歌も「アンナチュラル」「MIU404」に続き米津玄師が担当した。第48回日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。 |
映画を見て驚いたのは、そのキャスティングの豪華さ。
TVドラマ『アンナチュラル』や『MIU404』と世界観を共有するシェアード・ユニバース・ムービーと銘打たれているだけあって、『アンナチュラル』からは三澄 ミコトを演じる石原さとみをはじめ井浦新、市川実日子、松重豊、窪田正孝、薬師丸ひろ子らが出演。
アンナチュラルからのメンバー
『MIU404』からは、伊吹刑事役の綾野剛、志摩刑事役の星野源ほか大倉孝二、麻生久美子らが出演。
MIU404から星野源と綾野剛
『ラストマイル』のオリジナルメンバーでも、デリファス日本支部統括本部長役でディーン・フジオカ、羊急便の関東局長八木龍平役として阿部サダヲなど錚々たるメンバーが顔を揃えています。
統括本部長のディーン・フジオカ
そして、テーマソング『がらくた』を担当したのが米津玄師と、まさに非の打ちどころのない超豪華メンバー。
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僕自身、この映画には特別な感慨を感じざるを得ませんでした。というのも、今から30年ほど前、全く新しい行政テーマであった「福島県物流基本構想」を担当して取りまとめた経緯があったからです。
これからの社会では「宅配」が急発展し、物流インフラや物流体系の整備が生命線になると考えたわけですが、あれから30年・・Amazonや楽天などに主導されたEC(電子商取引)ビジネスの目を見張るような隆盛と、ドライバーの不足による「2024年問題」などがこれほどになるとは予測さえできませんでした。

映画の中でも、寡占状態にあるECコマースが配送業者の賃料を極限まで引き下げ、現場の物流センターや配送業者がブラックな勤務を余儀なくされた挙句、心身を消耗していくという現代ならではの病根が重要なテーマになっています。
まさに「光があれば影がある」・・その告発だけでも大きな意義があると映画だと感じました。
そして非情によく練られた脚本。謎が謎を呼ぶ伏線が散りばめられ、映画公開後、ネット上に「考察サイト」が乱立しています。
映画の中で何度か繰り返される問いかけ「What do you want?」・・これは偽サイトの投稿名「DAILY FAUST」に暗示されるように、ゲーテの大長編戯曲『ファウスト』のタイトルであると同時に、15世紀末のドイツに実在したと言われるゲオルグ・ファウストという錬金術師の名でもあります。
ゲーテの『ファウスト』
ゲーテの『ファウスト』では、主人公ファウストが悪魔メフィストフェレスに魂を売り渡して欲望を叶えますが、その悪魔の問いかけがまさに(英語では)「What do you want?」でした。
「お前は何を欲する? そして、その代わりに何を差し出す?」・・飽くなき便利さを求める現代社会に対する「重い問いかけ」であるように感じました。
警察関係者の聞き込み
そして、意外過ぎる真犯人。12個の爆発物のうち一つは失敗作で「手動」でなければ起動しないという謎。
それを突き止め11個目の爆発物まで回収して厳戒態勢が解除された後で、最後の爆弾を追う土壇場のサスペンス。主題歌「がらくた」の意味・・最後まで気の抜けない作品でした。
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ラストマイル
(C)2024「ラストマイル」製作委員会
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泣き所も数多くあり、特に印象に残ったのが最後の爆弾を受け取る家族の話。
離婚して二人の小さな娘を抱えて苦労している母親が、娘が通販で何かを注文したのに気づき激怒します。
「誰にお金を持ったの・・お父さん? どうして私に相談しなかったの? 私はそんなに頼りない母親なの!?」
激怒する母親
何も言えず号泣する妹をかばって姉が言う・・「言えるわけないでしょ、誕生日だからよ・・」
ハッとする母親。小さな娘たちはお小遣いを貯めて母親の誕生日にサプライズの「枕」を注文していました。このシーンは素晴らしい。グッときました。泣きそうです。
そして、そんな家族に爆弾入りの荷物が届く。いや~凄い脚本です!
/// end of the “cinemaアラカルト490「ラストマイル」”///

(追伸)
岸波
この『ラストマイル』は、「第48回日本アカデミー賞」で最優秀脚本賞(野木亜紀子)、 優秀作品賞、優秀監督賞(塚原あゆ子)、優秀主演女優賞(満島ひかり)、優秀助演男優賞(岡田将生)のほか撮影・照明・音楽・録音・編集の各賞を受賞。
ほかにも「Filmarks Awards 2024」の国内映画部門で最優秀作品賞、「第49回報知映画賞」の監督賞など、数々の栄誉に輝きました。
Amazonの視聴者評価も「4.0/5」と飛び抜けた高評価。観てよかった。
脚本賞受賞の野木亜紀子氏
実はこの映画、「通信」オフ会幹事長のケメさんから大推薦されていたのですが、ようやくAmazonの無料配信で鑑賞し、感動した旨を報告。
すると・・「ね、良かったでしょ、岡田将生♪」
ええ~ 岡田将生推しだったんかい!(笑)
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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ラストマイル
(C)2024「ラストマイル」製作委員会
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eメールはこちらへ または habane8@yahoo.co.jp まで!
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