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「Glidin'」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2025.6.7】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 歌手になりたい……
 すべてを失った今
 夢を求めて旅を行く
 アリスに過去はない!

 これは1974年公開のマーティン・スコセッシ監督、エレン・バースティン主演『アリスの恋』のキャッチコピー。

 今週の当番は、カリスマ彰氏です。

アリスの恋

(C)1974ワーナー・ブラザース

 日本封切りは翌1975年で、日本で初めて公開されたスコセッシ作品であり、エレン・バースティンは'75年度アカデミー賞主演女優賞を受賞、英国アカデミー賞では作品賞と主演女優賞・助演女優賞・脚本賞を受賞している。

 さて、その内容は?

 

◆『アリスの恋』(1974年 マーティン・スコセッシ監督 1時間57分)

 映画史上初の女性のための映画!
 と全米マスコミ界が絶賛した注目の傑作!

カリスマ彰 5月の連休、大相撲5月場所が終わったというのに、クラシックコンサート&オペラ、ラーメン&B級グルメ、映画という3大趣味に、大谷翔平(大リーグ)、藤井聡太(将棋七冠)の応援というのが生活のメインになっている。その隙間を、日々のルーティンワークが占めるという感じである。

  映画(TV放映を録画して鑑賞)はスカを食らうことが多かった。

 最近だと「ロスト・フライト」(2023年 ジェラルド・バトラーが機長役で不時着した反政府ゲリラがいるフィリピンの小島での苦闘を描く)、「ブルックリンでオペラを」(2023年 潔癖症の精神科医役のアン・ハサウエイとオペラ作曲家役のピーター・ディンクレイジの夫婦のドタバタコメディ)、「ハード・ターゲット」(1993年 ジャン=クロード・ヴァン・ダムが海兵隊上がりのホームレス役のアクション映画)などが最近のスカである。

 「ロスト・フライト」

  最近の私的ヒットは「アリスの恋」(1974年 マーティン・スコセッシ監督 1時間57分)だった。原題は「ALICE DOESNT LIVE HERE ANYMORE」だ。

アリスの恋

(C)1974ワーナー・ブラザース

 1970年代のスコセッシ(1942年11月17日生まれの82歳)は1950~1960年代のウイリアム・ワイラーやビリー・ワイルダーみたいなもので、まあハズレがない。

 この映画はスコセッシの初期の長編映画だ。男運のない子連れの35歳の女(エレン・バースティン)を当時大流行のロードムービースタイルで撮った映画で、エレン・バースティンの名演技が楽しめる。

  エレン・バースティン

 エレン・バースティンは同年公開のロードムービー「ハリーとトント」(ポール・マザースキー監督)でも主役ハリー役のアート・カーニーの娘役で好演している。

 「アリスの恋」のあらすじは以下の通り(wikipediaによる)。

◆『アリスの恋』(1974年)のあらすじ

 娘時代には歌手を目指したアリス(エレン・バースティン)も、すでに35歳。粗野な夫に頼りきり、こましゃくれた小学生の息子トミーと平凡な生活を送っている。

 しかし、夫の事故死をきっかけに、アリスは再び歌手を目指すことを決心し、トミーを連れて故郷モンタレーを目指し旅立った。オンボロ車での長距離移動ではたちまち金が底をつき、途中の町で職を探すアリス。歌手と名乗ってバーを回るが働き口は見つからない。ようやく雇われたバーで言い寄る男とすぐに懇意になるアリス。だが、この男はドメスティック・バイオレンスで妻をいたぶる危険人物だった。

 

 トミーと共に町から逃げ出し、男に頼る自分の性格を反省するアリス。次に立ち寄った町ではウエイトレスの仕事しか見つからなかった。店の常連で離婚歴のある牧場主デヴィッド(クリス・クリストファーソン)はアリスに好意を抱き、息子のトミーにも優しく接してくれた。しかし、男には頼るまいと心に決めたアリスはなかなかデヴィッドと打ち解けられない。

 スコセッシ映画の常連であるハーヴェイ・カイテルやジョデイ・フォスターも脇役で登場している。巧い映画だが、引き付けられて最後まで見てしまう。

 主演のエレン・バースティンはこの映画でアカデミー主演女優賞を獲得している。

 エレン・バースティンの眼鏡をかけた12歳の息子役のアルフレッド・ルッターが実にいい味を出していた。助演男優賞ものだ。

  息子役のアルフレッド・ルッター

 ジョデイ・フォスターはその女友達という役だがやっぱり演技は上手い。「私のママは売春婦なんだよ」とジョデイ・フォスター演じる子供は打ち明けているのが印象的。

 ラストはちょっと泣ける。「いやあ、人生って辛く厳しいけど、生きるっていいもんだよな」としみじみ感じさせる。

 アメリカ映画が一番良かった時代なのではないだろうか。未見の方には大推薦したい。

アリスの恋

(C)1974ワーナー・ブラザース

 私的には、わき役陣で最も注目したのは、小さな町のレストランでのアリスの同僚フローレンス(フロ)役のダイアン・ラッドだ。店主や客に食って掛かるその言葉の汚なさたるや!映画史上最高の汚さなのだ(笑)。

 これを字幕では忠実に訳しているので大爆笑(笑)。ここではとても書けない。字幕は映倫カットなしなのか。字幕は高瀬鎮夫。

 
フローレンス(フロ)役のダイアン・ラッド(左)

 ダイアン・ラッドはこの映画で英国アカデミー賞で助演女優賞を受賞している。

 スコセッシはこの「アリスの恋」の2年後の1976年に大問題作の「タクシードライバー」を完成。

 「タクシードライバー」

 ロバート・デ・ニーロが主演だが、ジョディ・フォスターが少女売春婦として出演している。

 その4年後の1980年にはやはりデ・ニーロ主演の「レイジング・ブル」を完成させている。スコセッシは30歳代のこのあたりですでにピークに達していたのだ。

 

/// end of the “cinemaアラカルト474「スコセッシ監督の映画「アリスの恋」
(1974年)はやっぱり巧い!
」”///

 

(追伸)

岸波

 海外では、彗星のように登場して名作を生み出し、あっという間に消えていく監督って多いね。

 才能が枯渇するのか、あるいは名声に溺れて身を持ち崩すのか・・。

 彼の場合は少し特殊で、1998年にカンヌ映画祭の審査委員長を務めた後、これまでの作品とは桁違いの制作費を投じレオナルド・ディカプリオを起用した『ギャング・オブ・ニューヨーク』(2002年)が大コケしたのが痛かったね。

 しかし、2006年の『ディパーテッド』では初めてアカデミー賞作品賞と監督賞を受賞して雪辱を果たし、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013年)は自身の監督作で歴代最高の全世界興行収入を記録している。

 だから「30代でピーク」は、少し言い過ぎかもね。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !

アリスの恋

(C)1974ワーナー・ブラザース

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト475” coming soon!

 

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