こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
アキ・カウリスマキ監督最新作。
これは一昨年(2023年)暮れに日本公開された、フィンランドの名匠アキ・カリウマキ監督の最新作『枯れ葉』のキャッチコピー。(そのまんまや:笑)
今週の当番は、カリスマ彰氏です。
Wikiには「コメディ映画」の分類で表記されていますが、彰の感想を読むとどうやら「笑えないコメディ映画」のようで。
さて、その内容は?

◆『枯れ葉』(2023年 アキ・カウリスマキ監督 1時間21分)
愛を、信じる
カリスマ彰 ザ・シネマではフィンランドの名監督アキ・カウリスマキ(1957年4月4日生まれ67歳)の映画を今年3月にかなり放映していた。
いわゆる「敗者三部作」と言われる「浮き雲」(1996年)、「過去のない男」(2002年)、「街のあかり」(2006年)を放映した後に、この三部作の続編と言われる最近作の「枯れ葉」(2023年 1時間21分)まで放映してくれた。
「くれた」わけではない。有料なのだが、放映映画があまりつまらないと契約を解除されるからミニシアター系の映画も私などのようなウルサ方向けに放映しているのだ。
 |
|
カウリスマキは敗者三部作のあとに、労働者三部作「パラダイスの夕暮れ」「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」を作り、2017年の「希望のかなた」を最後に映画監督を引退すると表明したが、この「枯れ葉」はその引退を撤回する最初の作品になった。
アキ・カリウマキ監督
カウリスマキの映画は、分かり易い。面倒な人間は登場しないし難しい哲学もない。政治の匂いもしない。
世界一幸福な国と言われるフィンランドにおいて、社会の底辺にいる人間をときに冷徹にときに温かく描いている監督である。

この「枯れ葉」では、中年にさしかかったスーパーで働く女とアル中の溶接工の恋愛を描いている。
女は期限切れ商品を持って帰ろうとしてスーパーをクビになり、男はアル中が原因で何度かクビになっている。
ありそうな話で、またその描き方は淡白でセリフが少ない。こんな映画は小津安二郎あたりの昔の映画、最近なら山田洋次あたりの映画にありそうである。
カウリスマキの映画では、日本の「雪の降るまちを」が「ラ・ヴィ・ド・ボエーム」(1992年)のラストで日本語で歌われてびっくりしたが、この「枯れ葉」でも最初の方で女のラジオから「竹田の子守唄」の日本語の歌が流れて驚かされる。日本の歌が好きなのだろう。
竹田の子守歌/歴史画像
カウリスマキはこの「枯れ葉」では、チャプリン、ブレッソン、小津安二郎に敬意を捧げたと言っている。
 |
|
しかし、何かが違うのである。女主人公の自宅では、ラジオからロシアとウクライナの戦況が放送される。
ロシアと国境を接するフィンランドでは当然の行為かもしれないが、TVではなくラジオというのがやはり最下層であることを感じさせる。戦争で苦しむウクライナ人に比べたら、私はまだマシという意味なのだろうか。
アンサ(アルマ・ポウスティ)
この女主人公は小柄で美人というにはちょっと地味な風貌で歩き方がまたなんとなく貧相なのだ。これは良く見つけたキャラクターだ。また演出がうまいのだろう。
男主人公のほうは渋い二枚目だが、ヘビースモーカーでただひたすら酒。酒と言ってもウォッカみたいに寿命を縮める強い酒だろう。
ホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)
あ、もう一匹いた。女が男と別れてから飼う犬だ。チャップリンと名付けられているが、この犬はカウリスマキが実際に買っている2匹の犬のうちの大きな方だという。
小津安二郎や山田洋次の映画に似ていると前述したが、全体にもっと辛い。笑わせてはくれない。余計なことも切り捨てている。
わずかに希望もあるのだが、そんな希望でどうにかなるわけじゃない、と悟っている。でもそれにすがらざるを得ない。そんな映画である。
こんな映画が作られる国が世界一幸福な国なんて冗談だろう。カウリスマキはそう言っている。こういう映画はありそうでない。
カウリスマキは、「港町三部作」改め「難民三部作」と呼ばれる三部作に取り組んでいる。
その第1作は「ル・アーブルの靴磨き」(2011年)でその第2作は「希望のかなた」(2017年)である。ここで引退宣言したのだが、引退を撤回し第3作を制作することになった。
その前にここで紹介している「枯れ葉」を監督している。「難民三部作」の舞台はドイツになるという。楽しみだ。
/// end of the “cinemaアラカルト466「フィンランドの名匠カウリスマキが
山田洋次と決定的に違う点」”///

(追伸)
岸波
なるほど、たしかにコレは「笑えないコメディ」だね。(コメディじゃないのか?)
思うんだが、作品のトーンというのは、やはり監督の人生に対する「心象風景」みたいなものが滲み出るのではないかと思う。
心から笑う習慣が乏しい人間なら、他人を笑わせるコメディは撮れないということか。
そういった、心象風景自体が生まれ育まれた国や地域、その社会的・歴史的背景から形作られるというのも真実なのだが。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
eメールはこちらへ または habane8@yahoo.co.jp まで!
Give
the author your feedback, your comments + thoughts are always greatly appreciated.
To
be continued⇒ “cinemaアラカルト467” coming
soon!
<Back | Next>
|