こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
8年前、全人類の安全を守る使命を負った
グローバルスパイ機関“シタデル”が壊滅。
その生き残りの諜報員二人が復讐に立ち上がる!
今回採り上げるのは、Amaon Primeによるオリジナル・ビデオ『CITADEL(シタデル)』。
キャッチコピーが存在しないので、勝手に作って見ました(笑)
このシリーズが話題になったのは、1シーズンの制作費が2億5000万ドル(360億円)という巨額なものであったに関らず、舞台となったアメリカで「米国で最も視聴された配信番組トップ10」にランクインできなかったこと。つまり「失敗作」として。
それにも関らず、強気のAmazonは今年(2024年)10月、11月に第二シリーズ『CITADELディアナ』と第三シリーズ『CITADEL ハニー バニー』を相次いで公開。行方が注目されているのです。
さて、このシリーズの内容は?
裏切り者は誰だ?
二人は真の敵を探し、孤立無援の闘いを始める!
2023年4月28日に第一話と第二話(全六話中)が同時配信され、あっという間に惹き込まれました。それほどにド派手で衝撃的な作品。
大作映画のクオリティに匹敵・・いや、凌駕するものを感じたし、主役の二名、特にインド女優のプリヤンカー・チョープラーの魅力に、してヤラレたのです。
ナディア(プリヤンカー・チョープラー)
対立構図は、全人類の安全を守るため秘密裡に設立されたグローバルスパイ機関「シタデル」と、これを壊滅させ世界征服を企む国際シンジケート「マンティコア」。
しかし「シタデル」の何者かが内部情報を「マンティコア」に売り渡し、世界に散らばるエージェントが一人ずつ暗殺されていく。
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主役となる二人のエージェント、メイソン・ケイン(リチャード・マッデン)とナディア・シン(プリヤンカー・チョープラー)も特命任務を遂行中、罠に嵌って列車ごと爆破され谷底へ落下する・・それが第一話のラスト。
そして8年後、ほぼ壊滅状態に陥った「シタデル」の生き残り技術者バーナード(スタンリー・トゥッチ)はメイソンとナディアが記憶を失ったまま生きていることを突き止め、彼らにアクセスする。
岸波 シタデルのエージェントは、捕虜になることを防ぐため、生死不明の信号が出ると遠隔で記憶を破壊できる装置が組み込まれている。
メイソン(リチャード・マッデン)
敵に寝返った裏切り者を突き止め「マンティコア」の野望を阻止するため、再び二人は行動を開始する。さて、その成否や如何に? はたまた許されざる裏切り者の正体とは?
このドラマが「失敗作」とされた理由を考えてみると、二つの大きな背景があるようです。
その一つは、1シーズン360億円という型破りな制作費自体を問題視したもの。これについてアメリカの情報サイトBloombergは「1シーズンに2億5000万ドル以上を投じた国際スパイスリラー『シタデル』ほど、Amazonの自由奔放な出費を物語っている番組はない」と報じました。
制作総指揮:ルッソ兄弟
しかし、制作費がここまで膨らんだのは、第二の問題が大きく関わっていたのです。
それは、制作総指揮を任されたルッソ兄弟が同時並行していた監督作『グレイマン』(2022)のために本作から距離を置いており、実際に脚本・現場指揮を執っていたのは『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のジョシュ・アッペルバウムだったこと。
『M.I./ゴースト・プロトコル』
Amazonの制作スタッフは2021年に一年をかけて撮りあがった映像の出来栄えに不安を感じてルッソ兄弟を呼び戻すと、ジョシュら現場チームとの争いになり、それぞれが別編集したバージョンを作ってAmazonスタジオの判断を仰ぐ事態に。
Amazonがルッソ兄弟を選択すると、現場チームは一斉に辞表を提出し、最終的にルッソ兄弟によって”撮り直し”されることに。(ええええ~)
これでは制作費が膨れ上がるのは当然・・何せ”二シーズン分”ブッ込んでいる訳ですから。
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それにしても、配信視聴率がとれなかったのはどういう訳か?
岸波 僕自身は非常に面白いと評価していたのですが。
理由として、二人の主演俳優の知名度が低かったこと、8年前のシタデル壊滅の時系列と現在の時系列が交互に進行して分かりずらかったこと、さらに、登場人物の人間関係が非常に複雑であったことが上げられます。
人物相関図
ただ、『007』のショーン・コネリーや『スターウォーズ』のハリソン・フォードのように、出演当時は無名で後からブレイクして行った例は数多くあるし、「時系列」の問題から言えばクリストファー・ノーランはもっと凄い。(逆行したり:笑)
『TENET テネット』
人間関係の複雑さ・・これはあるかなぁ。
記憶を失ったメイソン・ケインは、同じように「マンティコア」に二重スパイで潜入しながら記憶を失った女性エージェントと結婚して娘をもうけているし、メイソンと喧嘩別れしたナディアは密かにメイソンとの子供を出産していたり。
さらに「マンティコア」の大幹部ダリア(在米英国大使)は、実はメイソンの母親であったり(笑)
大幹部ダリア(レスリー・マンヴィル)
スパイ映画のあらゆる要素に骨肉の争いまで加えて「混ぜ込み過ぎ」という批判は頷けるものがある。
結果、Amazonスタジオが「配信視聴率を取れなかった理由」を本社から詰問されるに至り、「ああ残念だけど、これでこのドラマは打切りだな」と思っていました。
なのに今年秋、『シタデル ディアナ』と『シタデル ハニー バニー』が連続公開されたので、さらにぶっ飛びました。
『シタデル ディアナ』
それを見て、初めてルッソ兄弟の意図が理解できたのです。
シタデル・イタリアを舞台とする『ディアナ』は登場人物が一新され、イタリアの制作会社との共同企画。インドが舞台『ハニー バニー』はインドの制作会社と組んで第一作の主人公ナディア・シンの子供時代の話(両親が主人公)でした。
『シタデル ハニー バニー』
つまり、第一作のアメリカ版は壮大なストーリーの序章に過ぎず、各国の制作会社と組んだそれぞれのシタデル・ストーリーを進める中で全体像が見えて来るという構成だったのです。(なるほど!と手を打ったのは勿論のこと。)
これは新しい。今まで誰も考えなかった。意地でも第一作で止める訳にはいかなかったのだなと。
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CITADEL ハニー バニー
(C)2024 Amazon
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ルッソ兄弟は、この構成を「スパイバース」と呼んでいるそう。なるほど「ヒーローバース」や「怪獣バース」のスパイ版を考えていたのか。
そして今後、メキシコ版を始め各地のシタデル・ワールドが展開され組み合わさって、壮大な大団円に向かうのでしょう。
そうそう「シタデル」と言うのは英語・フランス語で「城塞」と言う意味。「人は石垣、人は城」とも言いますもんね。(関係ないか:笑)
/// end of the “cinemaアラカルト450「CITADEL」”///
(追伸)
岸波
第一シリーズ『シタデル』では、記憶を失った主人公たちが自分たち出自の真実を明かされ、手探りで謎を解いていく部分が肝です。(記憶はまだ戻ってない)
終盤で、メイソン・ケインとナディアは一粒種の娘を人質に取られ、二人は海底に潜む無人潜水艦から核ミサイルの炉心を奪還するミッションを余儀なくされます。
そして最終第六話、ついにメイソン・ケインは記憶を取り戻し、マンティコアにシタデル・エージェントの極秘情報を売り渡した裏切り者(意図していなかった)が自分自身であったことに気づいて愕然とする・・ここで終りです。
ここで打ち切られたのでは、消化不良過ぎて悪評となるのは必至。
ルッソ兄弟とAmaonスタジオの制作陣が意地でも続編を作らなければならなかった気持ちはよく分かる。
ところで最後はどうなるんだろう? もしかして、メイソン・ケインと母親ダリアの一騎打ち・・まるでルークとダースベイダーみたいになるんだろうか。うむぅ・・。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
eメールはこちらへ または habane8@yahoo.co.jp まで!
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To
be continued⇒ “cinemaアラカルト451” coming
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