こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
世界に大衝動を與えた
大製作者ハワード・ホークスが放つ
戦慄の電撃作!!
なんかヘンなキャッチコピーですよね? 「與えた」とか「製作」とか「戦慄の電撃作」とか古めかしい表現がたくさん。
それもそのはずっ!!
これは本日Amazonプライムで観た『遊星よりの物体』(1951年)のキャッチコピーなのです。
|
遊星よりの物体X
(C)1951 ウィンチェスター・ピクチャーズ
|
ジョン・W・キャンベルによる1938年の短編SF小説『影が行く』を映画化したSF映画の金字塔とされる一作。
1982年にはジョン・カーペンター監督によってリメイクされ、再びセンセーションを巻き起こしました。
岸波 リメイク版の方は観た記憶があります。
うむぅ、ずいぶん古い映画だけれどどうしようか・・と思いましたが、視聴者評価が非常に高いのでポチることにしました。
さて、その内容は?
閉ざされた南極基地に
地球外生命体来襲
戦慄の一夜が始まる――
映画の冒頭、アラスカの米軍科学研究所付近に謎の物体が落下。周囲の地磁気が狂っていることに気づいて調査隊が派遣される。
そこで見つけたのは、半分氷に閉じ込められて動けなくなった円盤のような未確認飛行物体。
機体を取り出すために仕掛けた爆薬が多すぎて円盤もろとも氷床を破壊してしまう。あらららら・・。
隊員の一人が、付近の氷の中に閉じ込められた異星人の死体のような「物体」を発見。物体を氷ごと切り出して基地に持ち帰り、詳しく調査することとなる。
|
遊星よりの物体X
(C)1951 ウィンチェスター・ピクチャーズ
|
その夜、倉庫で「物体」の監視役だった伍長が謎の「影」に襲撃される。隊員たちが駆け付けると持ち帰った氷柱に「人型」の空洞を残して「物体」が消失。
基地の外で争う声が聞こえ、何者かが犬たちと格闘している様子。現場に出てみると数匹の犬が惨殺され、噛み切ったとおぼしき「人の手」のような物が残されていた。
それを調べた科学者により、その「手」は「動物」でなく知能を持った「植物」の一部であることが判明。
植物だ!
さらにそれは「種」を撒き散らし、犬の血を吸って瞬く間に成長を始める。
「こっ、これは・・我々はエサにされる!!」
銃弾も受け付けない神出鬼没の植物人間に次々と倒されていく隊員たち。
果たして彼らは、殺しても分裂する驚異の生命体に勝利することができるのか? アラスカ基地に長い一夜が訪れる。
うっ・・怖っ!! 軽い気持ちで観始めたのに、あっという間に惹き込まれ目が離せなくなりました。
閉ざされた場所でのクリーチャー襲来・・これは「エイリアン」を始めとするクリーチャーSF映画の原型そのものでしょう。
さらに「人間」の陣営も一枚岩ではなく、地球外知性体の発見に狂喜した科学者キャリントン博士(ロバート・コーンスウェイト)は、基地に保存されていた輸血用血液を用いて密かに「種」を培養している。(ある意味「裏切り者」の存在)
『エイリアン』1979年
これは、エイリアンの軍事利用を企むウェイランド・ユタニ社の命を受けたアンドロイドが、ノストロモ号の乗組員を犠牲にしても社命を優先するという構図のヒントとなった可能性があるのでないかと思う。
そしてもう一つ、ブリザードによる通信障害のせいもあるが、現場の危機感を理解しない軍本部の将軍が「自分が見に行くまで『物体』の保全を最優先しろ」と無理難題を押し付けるのがサスペンスを際立たせます。
軍本部にて
これも、スピルバーグの『ジョーズ』で、現場にいない官僚的な上司が後手後手に回る指示で事態を悪化させていく構図に繋がるものがある。
つまり『遊星よりの物体X』は、後の世のビッグ・ヒット作品に大きな影響を与えたと言えるのでないか。
『ジョーズ』1975年
映画の原題『THE THING from another world』ですが、作品の中で「another world」は「火星」と訳されていますが、日本公開時の邦題では「遊星」です。
「遊星」は「惑星」と同じ意味で、惑星(プラネット)の語源がギリシャ語の迷い星(プラテネス)なので「遊星」とも訳されていました。
『遊星少年パピイ』1965年~アニメ放映
この当時の日本SF界ではよく使われていた呼称ですが、非常に懐かしいですね。当時、大人気のTVアニメ『鉄人28号』の後継番組が『遊星少年パピイ』でした。
岸波 その後が『忍者部隊月光』で、こちらも懐かしい♪
|
遊星よりの物体X
(C)1951 ウィンチェスター・ピクチャーズ
|
また「物体X」のクリーチャーの正体が「植物人間」であることも斬新です。
映画の中では植物が「知性」も持つ可能性として、地球上の「竜舌蘭」がネズミやコウモリ、リスなどを捕食する例や160キロ離れていても互いに「通信」をするツル植物などが上げられています。
植物人間であることで、人間側の最強の武器である「銃」が単に穴を開けるだけで役に立たず、彼らとの「対話・交流」を目指す植物学者が仲間を裏切る動機にもなっています。
Xを培養する植物学者
そんな「人間対クリーチャー」の闘争の映画でありながら、恐怖の一本調子で話が運ぶわけではありません。
主人公であり、科学者や新聞記者の基地視察に随行して基地に立ち寄ったパトリック大尉(ケネス・トビー)と、調査隊の助手ニッキ隊員(マーガレット・シェリダン:かなりの美女)は、過去に「ワケアリ」の仲だったりするのです(笑)
岸波 かつてベッドインした際にパット大尉の毛深い足に閉口して、「その毛が嫌い」と書置きして早朝に逃げ出したら、その書置きを6人の人間に目撃されて笑いものになったエピソードなど(笑)
実はワケアリの二人
そんなリアルな笑い話があるからこそ、後段の「恐怖」が際立ってくる。つまり「緩むところはしっかり緩む」よくできた脚本、そして演出なのです。
監督としてクレジットされているのはクリスティアン・ナイビイという人物ですが、実際の演出の大部分は製作者のハワード・ホークスが行っていたというのが定説になっています。
岸波 オーソン・ウェルズが協力したという説もある。
|
遊星よりの物体X
(C)1951 ウィンチェスター・ピクチャーズ
|
このハワード・ホークスですが、アーネスト・ヘミングウェイやウィリアム・フォークナーらアメリカ文学界の重鎮たちとの交流も深く、『駅馬車』で人気が出始めたジョン・ウェインの人気を不動のものとした『赤い河』(1948年)を監督しました。
ジョン・ウェインとはその後もコンビを組み、1959年の『リオ・ブラボー』(1959年)、『ハタリ!』(1962年)、1967年の『エル・ドラド』(1967年)、遺作『リオ・ロボ』(1970年)とヒット作を連発して、1975年にアカデミー賞名誉賞を授与されます。
『リオ・ブラボー』
しかし、これほどのヒット作を世に放ちながら、現役中は世俗的な娯楽作品のB級映画監督と見做され、アカデミー賞の受賞どころかノミネートも一度のみ。
同じようにヒットを放ちながら賞に縁がなく、晩年に再評価されていくヒッチコックと合せて「ヒッチコック=ハワード主義」という言葉が生まれました。
岸波 映画界に対する皮肉を込めて。
ハワード・ホークス
時代が彼らに追いつくまでに時間がかかった・・という事でしょう。
今、こうして彼らの作品を観なおせば、その先進性・演出力に改めて感動させられます。ハワードの魂よ、永遠なれ。
/// end of the “cinemaアラカルト448「遊星よりの物体X」”///
(追伸)
岸波
この映画をリメイクした1982年の『遊星からの物体X』ですが、撮影技術の進化によって怖さ倍増でした。
しかも「緩む」ところがなく「恐怖」に振り切っている。
『遊星からの物体X』1982年
リメイク版の「遊星からの物体」は植物人間ではなく、何にでも憑依して姿を変える超生物。
おそらくそのヒントは、僕が子供の頃、夢中になって読み耽ったフレドリック・ブラウンの『73光年の妖怪』だったろうと思います。
倒しても、次々と乗り移って行くのでキリがない。うむむ・・こういう敵、『ジョジョの奇妙な冒険』にも居たような気がする。
最後はどうやって倒したんだっけ?・・もう一度、観てみようか。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
eメールはこちらへ または habane8@yahoo.co.jp まで!
Give
the author your feedback, your comments + thoughts are always greatly appreciated.
To
be continued⇒ “cinemaアラカルト449” coming
soon!
<Back | Next>
|