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「チョコレート大作戦」(甘茶の音楽工房)
by 岸波(葉羽)【配信2024.10.19】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 また2分。

 昨年6月に公開された京都の人気劇団「ヨーロッパ企画」制作の『リバー、流れないでよ』がAmaonプライムで無料公開が始まったので鑑賞しました。

 キャッチコピーの「また2分。」は、前作『ドロステのはてで僕らは』で"2分間未来の自分"が映し出される「時間テレビ」がテーマだったのを受けたもの。

岸波 こちらも半年ほど前に視聴しました。

 それにしても彼ら「ヨーロッパ企画」の作品、高校の時に僕らが撮った『ハレンチ・コネクション』と同じ匂いがするのは何故?(笑)

リバー、流れないでよ

(C)ヨーロッパ企画/トリウッド2023

 主宰・上田誠の下、群像コメディに拘った演劇を上演し続けるこの劇団、京都にある旧上田製菓(ヨーロッパハウス)を拠点として活動していることから「ヨーロッパ企画」の名が付いた模様。

  ヨーロッパ企画主宰・上田誠

 関西では名の通った劇団でしたが、2005年に映画『タイムマシン・ブルース』(監督:本広克行)を発表してから知名度が上がる。

 そして2020年、劇団初のオリジナル長編映画『ドロステのはてで僕らは』が海外で「第39回ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭 ホワイトレイブン賞、批評家賞」を初めとする多くの賞を受賞し、メジャーな存在に。

岸波 ただし、日本国内での受賞歴は皆無(笑)

 そんな「ヨーロッパ企画」が満を持して発表した『リバー、流れないでよ』とはどんな作品なのか?

 

 2分が一生繰り返す、
 エンドレス脱出劇(エスケープ・コメディ)

 映画の冒頭、京都の奥座敷貴船神社で、真っ白なコートの女性が願い事をしている。何かよほど困った事が起きてしまったらしい。

  少女:久保史緒里(乃木坂46)

 唐突に場面が転換。京都の貴船にある老舗料理旅館「ふじや」で、仲居のミコト(藤谷理子)が休憩時間に旅館裏の貴船川に佇み、こちらも何か願い事をしている様子。

 ところが、旅館に戻って番頭と二人で客室の片づけをしていると、突然、貴船川のほとりに戻されてしまう。

リバー、流れないでよ

(C)ヨーロッパ企画/トリウッド2023

 「あれ?」と思いながら再び客室に戻ると、番頭も「デジャブだ」と言いながら合点が行かない様子。気を取り直してもう一度片づけを進めると、また貴船川に戻されてしまう。

 むむっ、これはどうやら「2分間サイクル」でタイムワープを繰り返しているようだ。(だが記憶は継続している。)

  旅館はパニック

 二人は女将や板前たち、そして客を集めて対策を練るが、何せ「2分間」で元の場所に戻されてしまう。

 しかも客がパニックに陥るなど、状況はどんどんと悪化して行く・・。

 いったいこの現象は、なぜ起こってしまったのか? 彼らは地獄のタイム・ワープから抜け出すことができるのか?

 まあ、一言で言えばSF不条理コメディ。

 現在「岸波通信(本編)」で連載していますが、高校の時、僕らが制作した映画『ハレンチ・コネクション』と同じようなテイストの作品です。

 そして驚くのは、各シーンがワン・シチュエーションの長廻し(ワープが起こる瞬間を除く)で撮られていること。

 『ドロステのはてで僕らは』

 前作『ドロステのはてで僕らは』では全編がノーカット長廻し(風?)でしたが、こんな事ができるのは、彼ら「ヨーロッパ企画」が舞台劇で経験しているからでしょう。

 そして2分ごとのタイムワープで出発点に戻されるものの「意識は継続している」というのがミソ。

 2分間で知恵を巡らし、何とかこの窮地を脱しようとあがく。

  皆で相談しよう!

 だが仲間と話し合うためには、ミコトやもう一人の仲居チノ(早織)は地階から階段を上り直さなくてはならない。

 コレ、実際にやらせたんでしょうね、回数が進むとだんだん息が上がったり表情が険しくなったりで、コチラは大笑い。

リバー、流れないでよ

(C)ヨーロッパ企画/トリウッド2023

 これ、どんどんエスカレートして行って、集合場所が三階の客間になったり、道の向こうにある別館の三階になったり、貴船神社の鳥居の上の方になったり、もう大変な事に(笑)

 ドリフのコントで、加藤茶がCM撮影のテイク2、テイク3と無限に牛乳を呑まされるネタがありますが、アレを見ている感じです(大笑)

  ドリフの牛乳コント

 そうこうするうち、三階の客室に投宿中の作家が「どうせ元に戻るなら一遍死んでみよう」と投身自殺を計ったり、猟銃を持った猟師が「これは夢だ」と思い込んで自分の頭を撃ち抜いたりと収拾がつかなくなります。

 すると、「こんな事になったのは自分のせい」とミコトが告白。

 彼女は、思いを寄せる板前見習のタク(鳥越裕貴)がフレンチ修行のためにフランス渡航を考え始めた事にショックを受け、川のほとりで貴船神社のお守りを握って「時間、流れないでよ」と祈ってしまったと言う。

  私のせいで・・

 ところが、締切りに追われた作家も同じ事を願っており、登場人物達がそれぞれの理由で「俺も、オレも・・」となっていく。

 この辺で「いったい映画のオトシマエをどう付けるんだ?」と心配になって来ました(笑)

  ミコトとタク

 まあ、勘の良い人なら、ファーストシーンで出てきた白衣の少女がキーであることは気付くはず。

 実は彼女はタイムパトロールで、タイムマシンが故障して不時着し、その周囲だけがタイムワープしていたのです。

  ←真犯人(笑)

 最終的には、その真実に辿り着き、メデタシメデタシとなるのですが、そこに至るまでのドタバタ劇がたまらない。

リバー、流れないでよ

(C)ヨーロッパ企画/トリウッド2023

 僕らの『ハレンチ・コネクション』でも、最初の「二階からの仰向け落下」から始まって、地上15メートルのクレーン上での決闘や、実際の刑務所に無断侵入しての撮影などハチャメチャかましましたが、多分彼らもそんなノリで楽しく撮影したのでしょう。

 ちなみに、ミコト役の 藤谷理子はこの作品が「ヨーロッパ企画」加入後の初主演作品で、撮影場所の老舗料理旅館「ふじや」は彼女の実家(笑)

  ミコト(藤谷理子)

 おそらく、メンバーで投宿した際、ふと思い付いたのが今回のストーリーなのだと思います。(多分ですが)

 僕らのキャスト・スタッフも、もし同じ大学に進学していたら、「ヨーロッパ企画」のような事をやっていたかもしれません。

 そんなワケで、非常に親近感を感じた作品でした。

 

/// end of the “cinemaアラカルト439「リバー、流れないでよ」”///

 

(追伸)

岸波

 主演の藤谷理子さんは現在29歳ですが、仲居さんの格好をする17~18歳くらいに見えます。(とてもかわいい子)

 小学校時代は同級生が7人しかいないという山奥の小さな学校でしたが、高校一年では京都府内の「ボイスアクト部門」で優勝したり、バレエでは国内10位(日本代表でニューヨークの本戦に出場)だったり、大学2年次には首席だったりという才女。

 ちなみに、小学校の時は竹馬か一輪車が必修でしたが、竹馬をあっという間にマスターし、一輪車にも挑戦。こちらもすぐにマスターして一輪車暴走族になったとのこと(笑)

  藤谷理子

 そうそう・・「ヨーロッパ企画」が全世界で20近くの映画賞を獲得した『ドロステのはてで僕ら』の製作費は100万円で、クラウドファンディングで出資を募って制作。

 お金をかけないで身体で稼ぐというところも、僕らの『ハレンチ・コネクション』と同じですねぇ。

 ちなみに『ハレンチ・コネクション』は、僕らが卒業してから後年の文化祭で三度もリバイバル上映された福島高校・伝説の作品となりました。(誰だよ、あのフィルムを持ってるヤツは。リマスターすっから!:笑)

 

 では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !

リバー、流れないでよ

(C)ヨーロッパ企画/トリウッド2023

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト440” coming soon!

 

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